海外メーカーの携帯電話を1500台以上所有する筆者のコレクションから、過去の懐かしい製品を振り返る「懐かしの海外ケータイ」。今回は非タッチパネルのフィーチャーフォンで手書き入力を実現したNokia「6108」をご紹介します。
2000年台初頭のころ、携帯電話の文字入力は10キーを使う方法が世界中で一般的でした。ようやく出てきたスマートフォンの一部はスタイラスペンを使ってディスプレイに直接文字を手書き入力することができました。10キー入力も慣れれば早いものの、ペンを使って文字を書くのも簡単です。とはいえ普通のフィーチャーフォンにタッチパネルディスプレイを搭載することは、当時の技術とコストでは不可能だったのです。
そこでNokiaが開発した方法は、ディスプレイではなく手書きパッドに文字を書くというアイデアでした。問題はその手書きパッドをどこに置くか。Nokiaはなんと10キー部分をフリップ式として、開くと手書きパッドが現れる構造を実現したのです。それがNokia「6108」でした。
スタイラスペンは本体の背面に装着し、あえて見せるデザインとしました。実はこれ、兄弟モデルの「3108」と同じ構造をしています。ビジネス端末色の強い6108に対し、3108は若者をターゲットにしたカジュアル機。3108の背面スタイラスペンは中国の武将漫画に出てくる、太刀を背負った勇者をイメージしています。6108の背面もどことなく強そうに見えるのは、そんな背景があるからでしょう。
なお、当時のNokia端末は、下1桁の数字が「8」だと中国向け限定モデルでした。中国の消費者の好きな数字をつけることで販売地域を明確にしたのです。3108も中国や台湾、香港などの中華圏で発売されました。ところが6108は大人向けの本体デザインと手書き入力のしやすさから、欧州でも販売されたのでした。
6108と3108が採用した10キー部分のフリップ構造は、残念ながらこの1世代だけで終わってしまいました。Nokiaは2004年ごろから製品全体のSymbianスマートフォンシフトをさらに進め、手書き対応はフィーチャーフォンではなくスマートフォンへ搭載されていったのです。しかし結局は片手でも使える10キー入力の使い勝手を超えることはできず、Nokiaのスタイラスペン端末は数年で消えてしまったのでした。
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