「契約時の説明と違って通信速度が出ない」「最高速度と実効速度がかい離している」――。携帯電話の通信速度を巡るトラブルは尽きない。近年は、昼や夕方に急に遅くなるとして、格安スマホの問題が取り沙汰されることが多い。特に12~13時が混雑しやすく、実効速度が1Mビット/秒を下回るサービスもある。
最近では格安スマホの通信速度を独自に調査し、結果を公表するサイトが増えてきた。ただ、遅延まで細かく調べたものは少ない。こうした中、興味深い論文が電子情報通信学会で2018年4月23日に発表された。豊田中央研究所の牧戸知史氏と佐々木健吾氏、東京大学の中尾彰宏氏の3氏による「5G時代の自動車のコネクティビティ ~リアルタイムサービスの実現に向けた期待~」(資料番号:RCS2018-12)だ。
論文の内容はコネクテッドカーをはじめ、リアルタイム性が要求されるサービスにモバイル通信を使う場合の課題を指摘したもので、携帯電話大手3社と格安スマホ8社の遅延を計測した結果も公表した。これによると、午前9時前や昼12時過ぎ、夕方~夜間にかけて遅延が大きくなる傾向があり、大手3社を含め、事業者間のばらつきが大きいことが分かったという。
大手3社ではドコモの遅延が目立つ
遅延の計測にはpingを使い、「Amazon Web Services(AWS)」「Google Public DNS」「東京大学」の3つのサーバーに対するRTT(ラウンドトリップタイム)を記録した。コネクテッドカーは100ミリ秒おきにセンサーデータなどを送信すると仮定し、計測周期も100ミリ秒としてある。計測場所は名古屋で、計測対象の事業者と利用した通信機器は以下の通り。
24時間の計測結果を事業者ごとにプロットしたものが以下になる。
大手3社で遅延が目立つのはNTTドコモ。遅延が200ミリ秒程度まで広く分布している。もっとも、上記のプロットでは密度の濃さが分からないので全体的に遅延が大きいように見えてしまうが、多くは数十ミリ秒以内だったという。一方、KDDIは平均遅延が低かったものの、遅延が3階層に分かれて分布している。網内における何らかの制御による影響とみられる。ソフトバンクも同様な傾向が見られた。