それでいいのだ、テレ朝女性記者。

セクハラ男性と闘うならこのくらいのセンスと覚悟が必要

2018年4月27日(金)

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福田淳一事務次官のセクハラ疑惑騒動、遙さんの見解が知りたいです。(30代女性)

遙から

 そろそろ書き時かなぁ、と、遅まきながら官僚のセクハラ疑惑事件について書こうと思う。

 私が最も興味があったのは、“闘い方”だ。今回の被害者とされる女性記者は、大変闘い方のセンスがいいと感じている。

 録音し証拠を作ったこと。一度、上司にこの情報を上げるという既成事実を作ったこと。上司の拒絶をもってその証拠を世に放つ理屈立てができること。世に放てば、裁定は世がしてくれる。そして名前のみならず自分の音声も完全に伏せたこと。局の正社員でさえあれば、一度上司に上げているだけに、そう簡単には解雇されないこと。

 攻撃と守り。この闘い方、あっぱれ、と感じたのは私だけだろうか。

 ニュースなどを見ていると、この社会はどうも正義が必ず勝つわけではなさそうだ。被害者側が会見で悔し泣きするシーンや、「司法は被害者の味方じゃなかった」と吐く人の声をいろんな事件で聞いてきた。被害者にとっては「絶対あいつが悪い。証拠もある」と戦いを挑んでも、そこから何年も苦渋を味わう出来事を見てきた。

 つまり、証拠があってもそうはやすやすと勝てない社会に我々はいる。そういう認識が必要だ。

 まして「セクハラ」という下半身ネタで、地位も家庭もある男性が相手だ。そりゃもう、全身火を噴くレベルでこっちを潰しにくるだろうくらいは予想をせねばならない。

 男性にとっては汚名中の汚名、浮気よりタチが悪い。浮気ならまだどのお宅にもありそうな出来事なだけに妻も怒りの収めようもあるかもしれない。が、権力を利用して若い女性に「おっぱい触らせて」を接続詞のように放つ男性を父や夫に持っていたらと仮定すると娘や妻はあの音声をどう聞いただろう。社会的制裁のキツさレベルでいうと、一番カッコ悪いのが、セクハラ。そして痴漢、浮気、の順だ。この順位は私が勝手につけたものだが、浮気は見事に謝れば離婚も避ける選択を妻側がする場合もある。妻が許したのならば、世間が何か言う必要もあるまい。

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「それでいいのだ、テレ朝女性記者。」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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