「出版社は頼れない」「子供は漫画を無料で読めばいい」――4月24日にイベントスペース阿佐ヶ谷ロフトAで開催されたイベント「海賊サイトによりマンガ文化が壊される!作家が生き残る方法とは?」で、森田崇さんや鈴木みそさんが漫画家・クリエイターの立場から海賊版サイトの問題やその対策について語った。
海賊版サイトをめぐっては、政府がISPにサイトブロッキングを要請したという報道を皮切りに議論が過熱。日本国憲法で保護されている「通信の秘密」「表現の自由」を侵害する恐れがあるとして、複数の業界団体や法律関係者から反対の声が上がっている。
4月23日にはNTTグループ3社が特に「悪質」とされる3サイトのDNSブロッキングを行うと発表し、一部では「憲法違反だ」「拙速すぎる」「既に停止しているサイトをブロッキングして何の意味があるのか」と批判する声も根強い。
これまで同問題をめぐるシンポジウムはいくつか開催されたが、漫画家・クリエイターらの視点が欠けていたこともあり、出版業界と親交の深い登壇者が多かった今回はその穴埋めともいえるイベントとなった(関連記事:「ブロッキングの前にやるべきことある」 ISPや弁護士が考える「海賊版サイト対策」とは、海賊版サイトのブロッキングは“抜け穴“だらけ 実効性に疑問の声)。
出版社は政府の海賊版サイト対策を歓迎する姿勢を続々と示しているが、森田さんは「出版社は頼れない」と消極的だ。漫画家たちが直面する課題とは。
瀬尾 太一(写真家、日本写真著作権協会常務理事)
森田 崇(漫画家)
楠 正憲(国際大学GLOCOM客員研究員)
植村 八潮(専修大学教授、元出版デジタル機構会長)
仲俣 暁生(編集者、Webメディア「マガジン航」編集発行人)
稀見 理都(美少女コミック研究家)
鈴木 みそ(漫画家)
データジャーナリストA(匿名)
鷹野 凌(日本独立作家同盟理事長)
まつもと あつし(モデレーター/ジャーナリスト)
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、海賊版サイトの中でも特にユーザー数が多かった「漫画村」による流通額ベースの被害額は、2017年9月からの半年で約3000億円と推計している。
深刻な問題なのは間違いないが、漫画家たちが特に懸念するのは、読者、特に子供たちが漫画に触れる機会が減っていることだ。森田さんは「サイトブロッキングもそうだが、今は読者に漫画を読ませない方法ばかり提言されている」と嘆く。
鈴木さんも「自分たちが子供のときは、友達が買った漫画を回し読みしていた。今の子供はそもそも漫画を読む習慣がないので、20歳未満は全部無料でいいのでは。無料で読めることで悪い習慣がついてしまう可能性はあるが、大人になって還元してもらえればいい。スマホゲームもフリーミアム(基本プレイ無料)モデルがあるが、漫画もまずはたくさんの人に読んでもらい、一部の人がお金を払ってくれるシステムもありかもしれない」と話す。
出版科学研究所は今年2月、17年度の電子コミックスの推定販売金額が紙のコミックス(単行本)を初めて上回ったと発表した。漫画市場を支えるためには出版社による電子化の後押しも必要だろう。しかし、森田さんは「まだ出版社では紙の方が力が強く、電子担当者は歯がゆい思いをしている。出版社横断で便利なプラットフォームを作ってほしいが、今の状態だとしばらく無理そう」と表情は暗い。
各出版社がブロッキングを歓迎する声明を出した際、「出版社自身はやるべきことをやってきたのか」という疑問がネットで上がっていた。今回のイベントでも、出版社の腰の重さや“お粗末さ”に対して登壇者から批判が集まった。出版社は何をやってきて、何をやってこなかったのか。
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