財務省は4月25日、同日に開催した「財政制度分科会」で、2017年度の北海道新幹線(新青森~新函館北斗間148.8km)の営業損益(赤字)が100億円を突破する見込みになったことを明らかにした。財政制度分科会は、国の財政のあり方を検討する財務大臣の諮問機関で、今回の会合では、地方財政や社会資本整備、農林水産、社会保障の分野が議題とされた。このうち社会資本整備では、国土交通省が所管する整備新幹線についての事業評価(費用に見合った政策効果を得られているかどうか)が問われ、北海道新幹線や九州新幹線西九州ルート(武雄温泉~長崎間のいわゆる「長崎ルート」)に対して厳しい指摘があった。北海道新幹線については、建設中の新函館北斗~札幌間に対して、北陸新幹線金沢~敦賀間とともに事業継続の評価が出されたが、既開業区間の新青森~新函館北斗間については、赤字が開業前想定の47億円から、2016年度は54億円に。2017年度は103億円に達する見込みになったことが明らかにされた。分科会では、「北海道新幹線の赤字拡大がなければ、維持困難な線区の営業損失の解消により、経常利益の黒字化が見通せる状況であった」と指摘し、このまま赤字が続けば、JR北海道の経営状況を一層悪化させ、地域交通の維持にも影響が出かねないと憂慮している。また、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の導入が検討されている九州新幹線西九州ルートについては、3月27日に国土交通省で開催された「軌間可変技術評価委員会」で導入時期を決定できなかったこと、与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームが3月30日に開催した「九州新幹線(西九州ルート)検討委員会」で整備のあり方が引続き検討されていたことを理由に、「事業評価手続き中」とし、評価が保留される形となった。九州新幹線西九州ルートについては、当初の事業費5009億円から6200億円程度に引き上げられていることから、分科会では直近の整備新幹線事業について「適切なコスト管理が行われていない状況が認められる」と指摘。単純比較はできないとしながらも、2017年12月に原州~江陵間が開業した韓国のKTX京江線の総事業費が1kmあたり31億円程度、工期が5年半と、日本の整備新幹線事業と比べて低いコストと短い工期で建設されていることを例に出し「整備新幹線の抜本的なコスト縮減が重要」とした。財政制度分科会は経済界やマスコミ、大学教授などの有識者が委員となっており、会が提出する「予算の編成等に関する建議」は、意見書として、国の予算編成に大きな影響を与えている。5月16日開催【北京モーターショー報告と中国のEV、自動運転セミナー】