今、世界全体の音楽市場が大きな成長を見せている。そして、日本だけがそこから取り残されている。
国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によると、2017年のグローバルな音楽市場は前年に比べて8.1%増加し、約173億ドルとなった1。
2015年の3.2%増2、2016年の5.9%増3に続き、3年連続で市場が拡大。さらなる大幅増となり、過去10年で最高額を記録した。
この数字は、1999年以降落ち込みを続けてきた音楽市場が2014年を底に明らかな回復期に入ったことを示している。
各国の音楽業界の発表もそれを裏付ける。
特に活況を呈しているのが世界1位の市場規模を持つアメリカだ。RIAA(全米レコード協会)の発表によれば売り上げは前年比16.5%増の86億2000万ドル(約9064億円)4。
イギリスも好況で、BPI(英国レコード産業協会)によれば売り上げは前年比10.6%増の8億3940万ポンド(約1276億円)5。どちらもおよそ20年ぶりとなる高い成長率を示している。
ヨーロッパ主要国ではドイツが微減となっているが、その他は軒並み拡大傾向。前年比17.9%増となったブラジルなど南米各国も急激な成長を見せ、前年比35.3%増の中国、前年比47%増の韓国、前年比60.8%増のインドなどアジア諸国にもデジタル音楽市場が勃興している。
一方、日本レコード協会が発表した「日本のレコード産業2018」によれば、日本の音楽市場は前年比3%減の2893億円6となっている。
つまり、いまや日本の音楽業界は、各国で大きな成長を見せるグローバルな音楽市場の足を引っ張る存在となっているのである。
どうしてこうなったのか。
拙著『ヒットの崩壊』にも詳述したが、理由としては、レコード産業のビジネスモデルの構造的な変化に日本の音楽業界が乗り遅れたということが大きい。
グローバルな音楽市場の成長を牽引しているのは、SpotifyやApple Music、Google Play MusicやAmazon Musicなど音楽ストリーミング配信サービスの世界規模での普及だ。
前述のIFPIの発表によると、ストリーミング分野の売り上げ高は前年比41%増の66億ドル。いまや世界全体の音楽市場の38%を占めている。
この急成長がCDの売り上げ減をカバーし、全体を押し上げた形だ。
なかでもアメリカでのストリーミング配信の拡大は顕著だ。2017年のアメリカの音楽売り上げにおけるストリーミングの売り上げは57億ドルと前年比42.5%増を記録。売り上げにおけるシェアは65%に達している。