書く力

やらなくていいことをするぐらいなら寝ていた方がいいんだもの。

【TED】依存症−間違いだらけの常識【依存症の反対は繋がり】


f:id:kirin0817:20160228015447j:image

 

・元、プロ野球選手の清原容疑者の逮捕以来、薬物使用や薬物中毒に関して様々なメディアが取り上げるようになりました。

なかでも薬物依存症の治療やその後の社会復帰の仕方にも議論が及ぶようになりました。

 

www.ted.com

「今までのようなやり方では薬物の依存症からは抜け出せない。」

そう言うのはジョン・ハリさん。彼のスピーチをまとめました。

 

依存症についての間違った常識

・もし定期的にヘロインを摂取した場合、この100年間で言われてきたことが正しいとすれば摂取した人はみな薬物中毒になる。ヘロインには中毒性物質が含まれており、身体が依存してしまうから。

・医療の現場では手術の場合など大量のジアセチルモルヒネを打つことがある。

これはヘロインです。売人が売っているものとは違い混ぜモノがなく科学的には純粋なもの。しかし、摂取された患者が退院した後、薬物中毒になることがない。

 

実験によって分かったこと

バンクーバーの心理学者のブルース・アレキサンダー氏がやった実験により依存症についての理解が進みました。マウスをカゴに入れ、そして2つの水ボトルを用意します。1つは水だけを入れ、もう1つは水の中にコカインかヘロインを混ぜます。すると、ネズミは薬物入りの水を飲みつづけるようになる。これが以前から言われている薬物の常識です。

 

1つの疑問とネズミの楽園

アレキサンダー教授はその後に1つの疑問を感じます。「このオリにはドラッグをやることしかない。少し環境を変えてみてはどうだろう?」

そして教授は「ネズミの楽園」を作ります。ネズミにとっては天国のような場所で、チーズや色付きのボール、そして仲間となる他のネズミも入れました。

そして先ほどの2つの水ボトルを入れました。すると薬物入の水を飲むネズミはほぼゼロ、衝動的に飲み続けるネズミもゼロだった。独房のような状態では飲み続けるのに対し社会生活を営む中では依存症になったネズミは0%だった。

 

人間ではどうだろう?

・この結果を見て教授は「ネズミの話しだけかもしれない。そもそも人間とはかなり違うものだし」と考えていた。しかし同じ時期に人間に対してもほぼ同じようなことを行っていた。ベトナム戦争です。

ベトナム戦争では兵士の20%が戦闘の恐怖を紛らわせるために大量のヘロインを使用していた。これを知った本国では1つの不安が生まれる。「戦争が終わり、兵士が帰ってきたら、街中にジャンキーが溢れてしまう。」

やがて戦争が終わり、薬物を摂取していた兵士の追跡調査を行いました。しかし兵士には更生施設も必要なく禁断症状もありませんでした。95%の兵士が帰国後はスパっと止めました。

そしてまた1つの疑問が生まれます。人間にとっての薬物依存もネズミと同じく、環境に適応するためのものだったら?

 

依存症ではなく繋がり

・オランダのピーター・コーエン教授曰く、「依存症」と呼ぶこと自体が間違っているのではないか?と言います。人は無意識に繋がりを求める動物です。健康で幸福な人間は触れ合いを通じて繋がりを作る。しかし、それがうまくできない人間は過去のトラウマや孤独から安心感を求め、人間以外のモノと繋がりを持とうとする。薬物だったり、ポルノだったりギャンブルだったり。

 

依存症の最大の原因は毎日を生きるのが辛いということ

・お金に余裕のある人は一日中、お酒を飲み続けることができる。薬物と違い、違法でもない。しかし、そんなことする人はいない。誰かに止められているからではなく、大事にしたい人や仲間がいて、その人達と健全な関係があるからです。

そこで様々な証拠からこう思うようになりました。依存症最大の原因は毎日を生きるのが辛いからだということ

 

薬物との戦争

アリゾナであった女性囚人グループは「薬物中毒者です」というTシャツを着て墓を掘らされていた。出所した後も前歴のせい仕事にも就けず、まともな人間関係も築くことができない。これは世界のどの国でも似たような現象がある。

医師のギャボー・マテ氏は「薬物依存症の現状を更に悪くするにはこの手の仕組みを作ればいいのだ」と言ったそうです。

 

薬物の使用を非犯罪化した国、ポルトガル

・2000年のポルトガルの薬物問題は深刻なものでした。人口の約1%が薬物中毒という深刻ぶり。それに併せてアメリカ式の対策を年々強化していった。薬物使用者を蔑むようなやり方です。しかし薬物問題は年々悪化。

そこで優秀な医師や専門家達を集め、委員会を作り、新しい法律を作りました。

マリファナから覚せい剤まであらゆる薬物を非犯罪化する。しかし今まで依存症患者を社会から切り離し疎外するために費やしてきた金を患者が社会に再び迎え入れるために使うこととする」としました。

ポルトガルでの最大の対策は依存症患者への雇用の機会を与えるための巨大プログラムと、起業したい人に対する少額融資です。

目標は全ての依存患者がもれなく朝起きて、ベッドから出る理由をもつこと。

15年経った今、注射器系の薬物使用は50%減、薬物の過剰摂取は大幅減、HIVも大幅に減った。

 

人間史史上最も繋がった時代と最も孤独な時代

・現代は最も繋がっている状態ではあるが、それは本当の繋がりの類似品だと思うようになりました。人生の大変な時期に共にいてくれるのはTwitterのフォロワーではないし、立ち直らせてくれるのはフェイスブックの友達でもない。顔を合わせた付き合いで お互いを知り尽くし深い人間関係を持つ生身の友達であるはずです。

・50年代以降の研究でアメリカ人が大変な時に頼れると思える友達の数は年々、減少傾向しているのに対し、家の床面積は右肩上がり。これは人間の社会や文化が優先してきたものを象徴するかのようです床面積を増やし友人を減らし物欲のために人間関係を犠牲にし結果として人類史上で最も孤独な社会が出来上がったのです 

 

これからどうしていけばいいのか

・「君は1人じゃないよ 愛されているんだよ」依存患者には全次元においてこういう意識で対応すべきです社会的にも政治的にも個人的にもです。100年もの間、薬物と戦ってきたのは間違いだったのではないでしょうか?戦うのではなく 愛をもって 対処すべきだったのではないでしょうか だって「依存症」の対極にあるのは 「しらふ」ではないんですよ 「依存症(addiction)」の反対は 「繋がり(connection)」なのです。

 

 

Add StarCyana