プレスタ読者の皆さま、こんにちは!プレスタ突撃レポーターの小林由佳です。今日はここ、大阪・茨木市にある小林製薬株式会社の中央研究所におじゃましています。こちらでは、プレスタvol.9でお伝えしたがんに対する免疫力を高めてくれるというシイタケ菌糸体(きんしたい)に関する研究を行っています。
今回は、小林製薬中央研究所の松井保公さん(以下、松井)に、研究所のことやシイタケ菌糸体の研究について詳しくお伺いしていきます。
それでは突撃インタビュー、スタートです!
聞き手:株式会社スヴェンソン・小林由佳(以下、小林)
研究所の中では女性が活躍!?
- 松井
- 中央研究所へようこそお越しくださいました!
- 小林
- 今日はよろしくお願いします! うわ~、大きな研究所ですね。
- 松井
- この中央研究所では、数百名もの研究員が働いているんですよ。研究所は男性の職場というイメージが強いですが、約4割が女性研究員です。女性ならではの感性やアイデアを活かして研究に励んでいます。
- 小林
- えっ!? 4割も!? 女性研究員がそんなにたくさんいるんですね!
- 松井
- 実は皆さまにご愛用いただいている「熱さまシート」「ブルーレットおくだけ」なども、ここで研究して製品化されたんですよ。
- 小林
- おなじみの製品ばかりですね! 小林製薬さんの製品は、ユニークなネーミングなのですぐにイメージが浮かびますね。
- 松井
- ありがとうございます(笑)。それではさっそく研究所をご案内します。
安全のためには絶対に妥協をしない
- 小林
- フラスコやビーカー、顕微鏡など実験器具がたくさんありますね。ここは何をしている部屋ですか?
- 松井
- ここでは主に、シイタケ菌糸体の安全性に関する研究をしています。シイタケ菌糸体は、摂取するものですから、何よりもまず安全でなければいけません。私たちは安全を確保するために、たくさんの厳しいチェックを行っているんです。例えば、産地には何度も何度も足を運びます。シイタケ菌糸体の素材が栽培される土壌の状態や、水質など、実際に自分の目で確かめ検査して安全かどうかを確認しています。また、同じように素材の加工工場も視察して、工場の安全管理の体制に問題がないかもしっかりチェックするんです。
- 小林
- そこまで入念にチェックをして安全を確保しているんですね。安全面以外でも気をつけていることはありますか?
- 松井
- 衛生面をしっかりと管理することも大切です。温度や湿度を常に一定にコントロールして、実験結果に影響が出ないように管理している部屋や、バイオハザードマークで管理された部屋もあります。
20年以上も変わらないシイタケ菌糸体への思い
- 松井
- 中央研究所を見学されていかがでしたか?
- 小林
- 研究員の真剣な眼差しがとても印象的でした。でもどうして小林製薬さんはシイタケ菌糸体に着目しようと思ったのですか?
- 松井
- 当社がシイタケ菌糸体に着目したのは、いまから20年以上も前です。もともとは、がんの免疫力を高めてくれる素材を探している中で、シイタケに出会ったのがきっかけです。研究を進めていくに連れて、シイタケ菌糸体にがんの免疫力を高めてくれる効果があることが分かってきました。
- 小林
- それはすごい発見でしたね! そしていまではシイタケ菌糸体に関する国内の論文や学会発表の約8割で、小林製薬さんのシイタケ菌糸体の菌株が使われるほどだと聞きました。それだけ信頼を積み重ねてきたということですね。
医薬品レベルのエビデンスでさらなる信頼を
- 松井
- コツコツと地道に研究を積み重ねてきたことを、評価していただけてうれしいです。当社では現在でも、シイタケ菌糸体の菌株を用いたヒトでの臨床試験を行っています。やはりヒトでの臨床試験をしないと分からない部分はたくさんありますからね。ヒトでの臨床試験を通して、医薬品レベルに匹敵するエビデンス(根拠)を積み上げることで、さらなる安心や安全が実現できると思っています。(下記表)
-
シイタケ菌糸体を用いた主な臨床報告
抗がん剤併用試験
対象者 |
発表 |
乳がん術後補助化学療法を行う患者(二重盲検試験) |
乳がん学会 2015年
|
乳がん術後補助化学療法を行う患者 |
Onco Targets Ther誌 2013年 |
乳がん、胃がん、大腸がん、食道がんで抗がん剤治療を行う患者 |
APJCP誌 2011年 |
胃がん、大腸がんで抗がん剤治療中の患者 |
AJCM誌 2011年 |
ホルモン剤併用試験
対象者 |
発表 |
乳がん術後ホルモン療法を行う患者 |
APJCP誌 2013年
|
免疫細胞療法併用試験
対象者 |
発表 |
乳がん、胆管がん、胃がん、直腸がん、肺がん、膵臓がんで免疫細胞療法を行う患者 |
Altern Ther Health Med誌 2016年 |
- 小林
- そこまで試験をしてたくさんのデータを集めているんですね!
- 松井
- それらを精査して正確な情報にしていくことで、お医者さまにもっとシイタケ菌糸体のすごさが分かってもらえると思っています。その結果シイタケ菌糸体が広まり、少しでもがん患者さまのお役に立てれば嬉しいですね。
- 小林
- 本当にそうですよね。私たちもがん患者さまの笑顔が、少しでも増えて欲しいと願っています。
- 松井
- これはシイタケ菌糸体の研究だけに限りませんが、研究には多くのコストと時間がかかります。一つの研究をずっと続けていくのはとても大変です。でも、がん患者さまのお役に立ちたいという思いがあるからこそ、私たち研究員も頑張れます。
次々と発表されるシイタケ菌糸体に関する研究
- 小林
- シイタケ菌糸体に関する研究の現状はいかがですか?
- 松井
- 手術後にホルモン療法を実施中の乳がん患者さまを対象にした、「乳がん術後補助ホルモン療法との併用研究」という研究論文が発表されました。
- 小林
- それはどんな研究ですか?
- 松井
- 手術後、最初の4週間はシイタケ菌糸体を摂取せずにホルモン療法のみ、その後の8週間はホルモン療法とシイタケ菌糸体を摂取していただき、その結果を比較した研究です。結果としては、シイタケ菌糸体を摂取していない最初の4週間はQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)と免疫機能に変化はありませんでした。でもその後の8週間のホルモン療法の期間にシイタケ菌糸体を摂取することで、QOLのスコアが向上しました。中には免疫機能が回復した患者さまもいたという結果が報告されています。
- 小林
- すごい、結果の違いがしっかり現れていますね。その他にはどんな研究があるんですか?
QOLと免疫機能が低下しなかった結果も
- 松井
- 「乳がん術後補助化学療法との併用臨床研究」という研究もあります。これは先ほどと同じく、シイタケ菌糸体を8週間摂取していただいた研究です。その結果、化学療法とシイタケ菌糸体の摂取を併用する前では、QOLと免疫機能が低下していたのに対し、併用後はQOLと免疫機能が低下することなく維持されていました。つまりシイタケ菌糸体の摂取により、化学療法によるQOLと免疫機能へのダメージが軽減されたことが報告されているんです。
- 小林
- この研究でもちゃんと結果が出ているんですね!
- 松井
- 実はこの研究には続きがあって、「二重盲検(にじゅうもうけん)」という条件で試験した学会発表もあるんです。
- 小林
- 二重盲検? 何ですかそれは?
- 松井
- これはお医者さまと患者さまに、シイタケ菌糸体ということを知らせずに摂取していただくという医薬品でも行われている試験方法なんです。それにより「効いているかもしれない」という思い込みによる効果をなくすことができるんです。もちろん、この二重盲検試験(ランダム化比較試験)でもシイタケ菌糸体を併用することで、化学療法による身体へのダメージの軽減が報告されています。
- 小林
- 知れば知るほど、シイタケ菌糸体のすごさに驚かされますね!これからもシイタケ菌糸体の研究から目が離せません。
「“あったらいいな”をカタチにする」難しさ
- 松井
- 当社には「“あったらいいな”をカタチにする」というテーマがあります。でもまだ世の中にないものをカタチにするのは、とても難しいことです。新しいアイデアを生むためには、常にアンテナの感度を磨き続ける必要があると思います。家族や友人との何気ない会話の中にも、アイデアは隠されているはずです。
- 小林
- そんな松井さんの研究に対するモチベーションは何ですか?
- 松井
- それはやはり、患者さまから感謝のお言葉をいただいたときですね。そのお言葉のおかげで、困難な研究にも立ち向かうことができるんです。
プレスタと小林製薬、夢のコラボレーション!?
- 小林
- プレスタには、がん患者さまからたくさんのお声が届きます。「こんな商品をつくって欲しい」というご要望もたくさんいただきます。いつか小林製薬さんとプレスタがコラボできたらいいですね! 本日はありがとうございました。
- 松井
- 私も楽しみにしています。ありがとうございました。
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