世界で金利が上昇基調にある。米長期金利が24日に4年3カ月ぶりに節目の3%台をつけるなど新興国を含めた世界主要7カ国の2~10年の金利水準は過去2年で上昇した。世界的な景気拡大に伴う金融緩和からの脱却が進んでいるのに加え、資源高によるインフレ懸念の高まりも背景にある。
日米欧アジアの主要7カ国について、英国が欧州連合(EU)離脱を決めて米長期金利が過去最低を更新した2016年7月と24日時点を比較した。金利がマイナス圏であることを示す青色が減り、プラス圏にある赤色がじわりと増え、世界各国で「金利の温度」が上昇しているのが分かる。
米JPモルガンによると、マイナス金利で売買されている世界の国債は20日時点で総額7兆ドル(約760兆円)と16年7月から1兆ドル以上減少した。一時はマイナス0.3%近くまで低下した日本の10年債利回りも現在は0~0.1%の間で推移する。
国際通貨基金(IMF)は18年の世界の経済成長率が3.9%と7年ぶりの高さになると予想。「世界で裾野の広い景気拡大が起きている」(ブラックロック・ジャパンの番場悠チーフ・インベストメント・ストラテジスト)との見方が多い。景気拡大やそれに伴って世界の中央銀行が金融緩和政策からの脱却を進めていることが金利を押し上げている。
15年に先陣を切って利上げに動いた米国では、市場は年内にあと2~3回の追加利上げを見込む。さらに4月に入ってからは資源価格上昇によるインフレ懸念や財政悪化懸念も重なり、金利の上昇ペースが加速した。
欧州の中央銀行も金融緩和からの「出口」に向かう。昨年11月に約10年ぶりに利上げした英国は5月に追加利上げするとみられており、欧州中央銀行(ECB)は9月にも量的金融緩和を終了する見通しだ。JPモルガン証券の山脇貴史・債券為替調査部長は「19年中の利上げが視野に入れば、ドイツの10年債利回りは年内に1%まで上昇する」と予想する。
市場では「米国の金利上昇局面は少なくとも今後1~2年続く」(米債券運用大手ルーミス・セイレスで運用を担当するブライアン・ケネディ氏)との見方がある。ただ、想定するのはゆるやかな金利の上昇だ。「運用難に苦しむ世界の機関投資家による債券買いが金利上昇を抑制する。米長期金利が3.5%を上回るような大幅な上昇は見込みにくい」(アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミスト)との声も出ていた。
(松本裕子)