常に新しいテクノロジーが導入される自動車
自動車の技術は日進月歩で発達を続けています。
電気自動車、 自動運転、機械学習、飛行自動車など、より人や環境に優しく、効率的に輸送ができるモビリティに急速に舵が切られています。
現代の自動車に到るまで様々な自動車関連テクノロジーが発達してきて、その中には全く普及せずに終わった実験的なものも数多くあります。
1. 気球動力自動車
風力で動く自動車
19世紀にイギリスの教員ジョージ・コポックによって発明されたのが、「The Charvolant 」。クルマの上部に凧を設置したもので、風を捕まえると重くともかなりの速度を出すことができたそうです。
この発明はイギリスのマスコミにも取り上げられて、一部で好評を博しましたが、速度や方向が風まかせという不安定さから「行き当たりばったりの旅行には適している」が一般的な自動車には向かないということで、普及することはありませんでした。
2. ホーセイ・ホースレス
馬を怖がらせないためのデバイス
自動車が公道を走り始めたごく初期の頃、公道の主役は馬車でした。
しばらく馬車と自動車が入り混じって走るという状態が続いたのですが、馬が自動車を怖がって走るのを辞めてしまったり、恐慌状態になるケースが問題となりました。
セブンズデイ・アドベンチスト教会の熱心なメンバーであったユリア・スミスという人物は、馬が怖がらないように自動車に設置する「馬の頭部のモック」を発明しました。
中は空洞になっており、燃料タンクとしても活用できるという設計。
当初は非常に有効で、馬は自分の仲間だと勘違いしましたが、馬は頭がいいのですぐに「別の何か」だと気づかれてしまったそうです。
3. アナログ・カーナビシステム
Image from " Plus Fours Routefinder - Worlds First Navigation System" AVAX NEWS
もう迷わない。装着型のカーナビ
「Routefinder」は1920年代にイギリスで発売された初期のカーナビ。
分からない道の走行中、いちいち地図を広げて確認するのが億劫というユーザーニーズに応えて、運転中に走ったぶんだけピンをくるくる回して現在地を確認しながら運転するという新しい体験を提供しました。
Image from "A Smart Watch and SatNav - from the 1920s" Big Think
ルートごとにセットする地図を変えて使うというもので、当時としては画期的なアイデアでしたが、そもそもまだイギリスですら自動車の保有者が少なく、ほとんど売れなかったそうです。
4. 防眩メガネ
これで対向車のライトも安心!
1932年7月にアメリカで発売されたこのメガネは、「防眩メガネ」。
対向車のライトの眩しさでハンドル操作を誤ってしまわないように、2.5センチ幅のカバーの真ん中に穴が開いたメガネで運転することにより、目をつぶったり、顔を背けたりしないで済む、というのがウリでした。
確かにドライバーはこれで安全になったのでしょうが、このメガネをかけたドライバーとすれ違った対向車は、おかしくて笑ってしまい危険度が増したかもしれません。
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5. 大豆でできたクルマ
環境と国家に優しい植物性のクルマ
1941年にフォードは「Hemp Body Car」通称大豆カー(Soybean Car)なるものを開発しました。
フレームは金属製でしたが、合板が大豆や麦、亜麻、大麻などの植物性のプラスチックでできていました。現在でも通用する革新的なアイデアではありませんか。
当時は第二次世界大戦の前夜で、金属類の多くが戦争への使用に回っていたため、代替品の需要が高まっていたのに加え、当時のフォードは農業部門への参入を本格検討していたため、このプロトタイプのクルマは今後の会社の方向性を定める重要な試作品でありました。
しかし戦争が始まると全ての自家用車生産は禁止され、戦争が終わった後は安価な合板が世に溢れたため、全く普及することなく終わってしまいました。
6. トイレ付き自動車
より効率の良い運転を求めた結果
1940年代後半と1950年代に、大手自動車会社はトイレ付き自動車の開発を真剣に行なっていました。
より効率的に長く走ることを目標とすると、ドライバーが尿意・便意をもよおす時間がどうしても邪魔になると考えられたのです。
汚物を格納するスペースの問題や、お尻をどのように拭くのか、そしてニオイの処理という技術的問題が山積し、開発は難航しました。
そしてとうとう、1947年にキャデラックはトイレ付き自動車を発表。このクルマは50ガロンの水を積んでおり、キッチンやシャワー、洗濯機などの水回りから、電話、冷蔵庫、アイロン、化粧台まで生活に必要な機能をすべてコンパクトに詰め込んだクルマでした。
このクルマは当初の目的通り、アンカレッジからメキシコシティまで約12,000キロをノンストップで走るという記録を達成しましたが、ドライバーは完全にグロッキー状態だったそうです。
7. 五輪自動車
image from "1950’s Cadillac 5th wheel Parking System" NTV
縦列駐車がラクチンになる第5のタイヤ
1950年代に、アメリカのブルークス・ウォーカーという人物が発明したのが、縦列駐車が簡単にできる第5のタイヤ。
クルマの油圧ポンプ付近にセットされ、縦列駐車の際に降りてきてリアを持ち上げ、そのまま前後のクルマにぶつけることなく発車することが可能でした。
概ね好評だったものの、一介の発明家のアイデアを大手自動車会社は採用せず、その後20年に渡ってブルークス氏は改良を重ねるも、普及することはありませんでした。
これあったら便利だと思うんですけどね。
8. 原子力自動車
ガソリンも電気もいらない夢のクルマ
「Ford Nucleaon」はフォードが1958年に発表したコンセプト・カーで、実際に発売されたわけではありません。
当時は原子力が「未来のテクノロジー」ともてはやされて、様々な技術の応用が模索されていた時代。近未来は原子力が生活の身近な技術になるとされ、ガソリンをの代わりに原子力スタンドが街にあって、そこで充電してクルマを走らせるというモビリティ社会が構想されました。
このクルマは内燃機関が存在せず、小型の原子炉を後部に備え動力が供給されるというデザインで、原子炉の種類を所有者が選択できると仮定していました。
ですがその後は原子力は主流にはならず、現在は再生可能エネルギーが未来のエネルギーの主役になろうとしているのはご存知の通りです。
9. 火炎放射能機能
強盗に襲われた時も安心!
クルマのサイドから火炎放射を発射するという、ジェームス・ボンドが乗るボンド・カーのような機能は「BMW Flamethrower」という商品で、実際に南アフリカで1998年に発売されたものです。
南アフリカの深刻な治安の悪化に対応するために開発されたもので、自動車搭乗中に強盗や誘拐犯などに襲われた場合、手元のスイッチを押すと強力な火炎放射がぶち巻かれるというアグレッシブすぎる機能です。
日本ではまったく考えられませんが、南アフリカではこの商品は合法とされていて、これまでに数百台が売れたそうです。
ちなみに、この商品は1999年にイグ・ノーベル賞の「平和賞」を受賞しました。
10. ハンバーグ調理機能
Image from "Exhaust Grill Cooks Burgers with Smoke Heat" GIZMODO
通勤中にハンバーグが焼ける!
「ダイニング・イン・2015」というデザイン・コンペでイランのチームが発表し、審査員の度肝を抜いたのが「クルマにセットするハンバーグ調理器」。
クルマのマフラーの部分にセットし、中にビーフ・パティを入れるだけで、マフラーの熱でパティが焼かれて勤務先に着く頃には美味しいハンバーグができているというもの。排気ガスは適切に除去されるので、全く有毒ではないそうです。
しかし、勤務先についてすぐにハンバーグ食うかなあ?
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まとめ
残念ながら普及はしなかったけど、後の時代にも適応できるアイデアや技術があるのは興味深いですね。
人が乗り込んで運転するという行為は変わらないので、そこで発生する人間の悩みも昔も今も基本的には同じはずで、それに対するソリューションを提供できたものが普及して生き残った感じでしょうか。
ただし、今後自動運転が普及したら自動車というものの価値自体が変わるはずで、また新たな悩みやそれに対するソリューションが生み出されていくに違いありません。
参考サイト
"10 Crazy Car Inventions That Never Made It" Intelligent Car Leaning
"10 Bizarre Car Innovations That Thankfully Failed" GOLIATH
"Exhaust Grill Cooks Burgers with Smoke Heat" GIZMOD
"Glare-proof Glasses Aid Drivers (Jul, 1932)" MODERN MECHANIX
"10 Curious Automobile-Related Inventions From Bygone Days" LISTVERSE