前回の記事では、商品や容器の形状そのものを立体商標として登録するのは結構ハードルが高い(消費者に相当認知されていないと登録されない)ことについて述べました。
もうひとつのハードルが高いパターンとして2015年4月1日から出願可能になった色彩のみから成る商標があります。形状によらず特定の色だけを特定の企業が独占できるのは強力な権利ですからハードルを高く設定するのは当然です。2015年4月1日以降200件以上の色彩のみからなる商標が出願されていますが、現時点で登録されたものは4件に過ぎません。
一番乗りがトンボ鉛筆のMONO消しゴムの色使いとセブンイレブンの看板の色使いであったことは既に書きました。では、3番手と4番手はというと、今年の2月23日に登録された株式会社三井住友フィナンシャルグルーによるグリーンの色彩です(タイトル画像参照)。両登録(登録6021307、登録6021308)とも商標としては同じで指定商品が違うだけです。
確かに町を歩いていて三井住友銀行を探すときはこの色合いの看板を探しますし、もし、三井住友に関係ない企業がこの色合いの看板で商売を始めたら三井住友系と勘違いする可能性は高そうなので、高いハードルを越えて登録できたことはうなずけます。
なお、ハードルの高さをうかがわせるように、久光製薬によるサロンパスのパッケージの色彩の出願は拒絶査定となり不服審判中です。円谷プロによるウルトラマンの色合いの出願も拒絶査定となっています(おそらく確定)。
ところで、商標は先願主義なのですが、同日に類似の商標が複数出願された場合には各出願人に協議命令が出され、協議が成立しない時は「くじ」により優先する出願人を決定するルールになっています(商標法に明記されています)。
くじは特許庁にあるガラガラポン式のくじ引き器を使うのですが、通常はめったにあることではありません。しかし、色彩のみからなる商標については、当然ながら初日の2015年4月1日に出願が集中したので似た色彩が多数同日出願されるという事態になりました。
少なくとも、サカタのタネ、ニコン、NTTドコモ、第一生命、山崎製パン株式会社、ヤフーが赤系の色を出願したことでくじが行なわれたようです(赤系でも指定商品がかぶらなければくじの対象にはなりません)。なお、くじで当たっても優先権を得られるだけなので、その後に使用による識別性(消費者による高い認知度)を立証できなければ登録されないのは同じです。