★本来、衆院選の度にチェックすべきは、政権の通信簿だ。首相・安倍晋三政権5年の成績表は、いかがなものか。思えば12年、民主党政権が東日本大震災などの対応や、沖縄の基地問題などで首尾良い政権運営ができなかったことを逆手に、安倍政権は誕生した。当時の選挙スローガンは「日本を取り戻す」。民主党の「コンクリートから人へ」を皮肉り、「コンクリートは人を守る」としたこともあった。13年1月、自民党が政権に返り咲いて初の所信表明演説では、「国民とともに危機突破にまい進する」と述べ「危機突破内閣」とした。17年衆院選では「国難突破」をうたったのに、いまだに突破できていない。そして民主党批判や数字を挙げて、安倍政権を際立たせる手法は、今でも続いている。

 ★「アベノミクス3本の矢によるデフレ脱却」「女性活躍」「地方創生」「1億総活躍」「同一労働同一賃金」「働き方改革」「人づくり革命」「生産性革命」「全世代型社会保障」「この道しかない」。いずれも安倍政権が生み出したスローガンだ。「活躍」「革命」と派手な言い回しがお好みだが、何を成功とするのかの数値化が難しい。また、紛争地に赴く人たちに危険だと警告したので、その先は「自己責任」という言葉も、この政権から使われだした。新自由主義の価値観は、自己責任論をベースに格差社会が広がり、貧困につながっている。

 ★また首相は「人づくり」をせず、主要閣僚も変えず、人材育成に背を向け、「お友達優遇」だけは続けた。今ではその規模は、官僚にまでまん延。「官庁を率いての閣僚経験がなく、官房長官、幹事長と日の当たるポストしか経験していないため、官僚との付き合いが少ない分、知り合いばかり登用することになる」(自民党ベテラン議員)。安倍政権続投を期待する声が自民党から上がるなら、野党は「安倍から日本を取り戻す」と言うだろう。(K)※敬称略