自爆するアリの新種がみつかる
「近寄ったら道連れにしてやる」と迎撃体制を整える自爆アリ
Image:Alexey Kopchinskiy

自爆するアリの新種がみつかる

巣に外敵が侵入すると、自爆して体内の毒をばら撒き、群れを守る「自爆アリ」。

東南アジアに生息することは長く知られていましたが、この度その詳しい生態調査が行なわれ、まったく新しい種を含む10数種がこのグループに属することが明らかになりました。

アリは群れのために個の犠牲をいとわない生き物です。誰かの指令を受けることもなく互いの体を投げ出して群れのために生きた橋をつくり、互いにスクラムを組んで生きた救命ボートをつくり、手負いの兵隊アリがいれば戦場から巣までおんぶして帰りけがの手当てまでしてコロニーを守ります。でも切腹して群れを守るというのはなかなかできることではありませんよね。

自爆アリの機能を持つのは、大型の働きアリ(兵隊アリ)ではなく、日々の雑用をこなす小型の働きアリ(マイナーワーカー)です。お腹のタンクにねばねばした毒の液を隠し持っており、いざとなったら自らの意志でお腹の殻を破って自決し、辺り一面に毒を撒き散らし、敵もろとも道連れにできるのです。まさに、生きた化学兵器。

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自爆アリ3匹で大敵ツムギアリにタックル
Image: Alexey Kopchinskiy

この自己犠牲は科学用語で「 autothysis 」と呼ばれるもので、一部のシロアリにもみられる生態です。これらの種は個体より種の保存を優先するため、「超個体(スーパーオーガニズム)」とも呼ばれます。人間にも全体主義は存在するので、似ていると感じる人もいるかもしれませんね。

専門家の間では自爆アリの存在は何百年も前から知られており、20世紀に入って数種特定され、新しい属名「 Colobopsis cylindrica」もできたのですが、1935年以降は資料不足から種の特定はさっぱり進んでいませんでした。そこでウィーン自然史博物館とウィーン工科大学をはじめとする共同研究チームが立ち上がり、ボルネオ、タイ、マレーシアにて調査が行なわれたのです。

その結果がZooKeyに4月半ばに発表され、なんと15種の特定に成功したことがわかりました。うち1種はまったく新しい種で「 Colobopsis explodens 」と命名されました。新種は分泌物が黄色いので、研究班は「イエロー・グー(黄色のねばねば)」と呼んでいます。一番すぐ自爆するため(調査員が近づいただけで自爆したアリもいたそうです)、今後の研究ではこれが自爆アリの代表種となることが決まりました。

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この頭で巣の入り口をふさぐ門番アリ
Image: Heinz Wiesbaue

先述のように自爆するのは小型の働きアリですが、調査では、ほかのカースト(身分)のアリにも自爆の生態が確認されました。たとえば「ドアキーパー(門番)」がそれ。ご覧のように頭が大きなコルク栓みたいな形状をしており、外敵がくると、この頭をぐりぐりやって巣の入口をふさぎます(だから門番)。パッと見はダメ出しされたキャラクターデザインのようですが、穴を塞ぐ任務を突き詰めたらこのかたちになった、というところでしょうか。

また、今回の実地調査では、飛びながら交尾をするアリたちも確認されました。これも確認されたのは世界初です。ちなみに好物は藻、こけ、きのこ、虫の死骸、果物、魚類とのこと。

謎多き生命体、自爆アリ。興味は尽きませんが、研究はまだまだこれからです。論文を弾みに行動生態学、化学、微生物学、解剖学、進化生物学の各分野で解明が進むといいですね。


Image: Alexey Kopchinskiy, Heinz Wiesbauer
Source: ZooKey

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(satomi)

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