NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTTぷららは、日本政府の指定したサイトをブロッキングすることを予告しました。
今回のサイトブロッキングは日本国憲法の「通信の秘密」や「検閲の禁止」に抵触している可能性があり、NTTグループがこれを実施すれば、電気通信事業法第4条第1項に違反するものと考えられます。
これが実行に移された場合、消費者団体訴訟や刑事告発を行うと明言している団体も既にあります。この他にもNTTへの訴訟を行うとする動きが複数あるようです。
NTTグループのISPの固定回線や、NTT docomoの回線を契約しているユーザーも多く、さらに他のISPもこうした動きに続く可能性もあることから、他人事ではありません。
NTT各社が発表したブロッキングについて、監督省庁である総務省に告発する方法と文面がTwitter上で拡散されています。NTT各社はいわば通信の秘密侵害の「犯行予告」を行ったようなものなので、こうした様々な反応があるのも当然と言ったところでしょうか。
宛先は総務省公益通報受付窓口で、テンプレートの例文は以下のようになっています。
■ メール文面の例
件名:電気通信事業法違反の実施予告を行った会社の告発について—本文ここから—
総務省大臣官房政策評価広報課
公益通報受付窓口
ご担当者様【所属もしくは氏名を記入】と申します。
さて表題の件につきまして、本日、NTT 系各社より下記発表がございました。
この発表につきまして、電気通信事業法第 3 条の規定する「検閲の禁止」および
第 4 条の規定する「秘密の保護」に違反することを電気通信事業者自らが宣言しており、
それが実現する状態がまさに生じようとしているという状況にあるものと推測されます。そのため、電気通信事業者の電気通信事業法の遵守という観点から、
本件につきまして告発させて頂きたく申し上げます。■ 法令違反の疑義がある対象企業の名称
日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社
株式会社NTTドコモ
株式会社NTTぷらら
(上記 4 社)■ 法令違反の疑義が生じる根拠
http://www.ntt.co.jp/news2018/1804/180423a.html上記プレスリリースにおいては、対象となる4社において
明確に電気通信事業法第三条および第四条に違反する行為の実行を予告しており、
単なる法令違反にとどまらず、電気通信事業の公共性に著しく反し、
同種の電気通信事業者の社会的信用をも大きく毀損するものであります。なお、総務省様におかれましては、過去 平成 24 年 4 月 4 日に、
同種の法令違反事例に対し、法令に基づいた適切な処理を頂いているという
実績があるかと存じます。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000072.html本件におきましても、過去の事例と同様に、法令や憲法に沿った公正なご判断、
および適切な処分をいただけますことを、強く期待いたします。
上記、何卒よろしくお願い申し上げます。【所属もしくは氏名を記入】
【住所や連絡先となるメールアドレスもしくは電話番号を記入】—本文ここまで—
■ 本文章の著作権
告発用途において著作権を放棄しますので、ご自由にお使いください。
過去にセブンイレブンが公衆無料無線LANサービス「セブンスポット」において、一部サイトへのアクセス遮断を実施していた時、総務省は指導を行っています。本件についても適切な対応が行われることが望まれます。
我が国は法治国家です。憲法の下に法律があり、ISPも法律に従う必要があります。警察ですら犯罪捜査における盗聴には、裁判所の礼状が必要です。
通信の秘密侵害の違法性阻却事由が認められている先例として児童ポルノブロッキングがありますが、これは当時の議論として、緊急避難の要件を満たしていると考えられるため、例外的に容認されています。現在の危難・補充性に加え、被害児童への深刻な人権侵害があるので法益均衡も認められる余地があるからです。
ところが、海賊版サイトへのブロッキングはあくまで財産権の問題に過ぎず、法益均衡は認められません。他の手段が尽くされたとは到底言えないことや、当該サイトの閉鎖によって、緊急避難の3つの要件はいずれも満たせないため、NTT各社の通信の秘密侵害に違法性阻却事由は認められないと言えるでしょう。
NTT各社の法令違反予告に、総務省がどう動くのか?政府知財本部が民間に「忖度」を求め、NTTが違法なブロッキングを実施するという、法治国家としての原理を逸脱した重大案件だけに、対応が注目されます。