ka-fumの思考メモ

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名探偵コナン「ゼロの執行人」感想

 名探偵コナンの映画『ゼロの執行人』を観てきました。

 今年も、見るからに爆破用と思しき建物が爆破され、クライマックスで超アクションを披露するというお約束の展開だったのですが、今回は、毛利小五郎が逮捕されるというストーリーで、法律関係のセリフが多かったので、例年以上にツッコミながら観ていました。エンタメ映画で重要なのは、「もっともらしさ」であって、そこまで厳密にリアルに寄らなくても良いと思っているので、別に法律知識が間違っているからといって、楽しめないというものではありません。

 むしろ、リアリティよりも盛り上がりを優先し、それでいて、観客を白けさせないのは、素晴らしい職人芸だと思います。

 さて、映画を観ながら、ツッコミを入れた部分ですが、こんな感じです。

小五郎を別件逮捕するのはおかしい

 小五郎が公務執行妨害で逮捕されるシーンがありましたが、現場から指紋が出ているのだから、逮捕状は取れるはずです。わざわざ公務執行妨害で逮捕する理由はありません。

小五郎を弁護する人が見つからないのはおかしい

 著名人が被疑者だからといって、弁護を尻込みする理由はありませんし、すぐ見つかるはずです。しかも、これまでの小五郎の社会的実績からすれば、複数の弁護士による弁護団が形成されてもおかしくありません。

送検されたことで大騒ぎするのはおかしい

 小五郎が送検されたことで、蘭やコナンがショックを受けるシーンがありますが、逮捕されたら送検されるのは当然です。最初「起訴された」の間違いかと思いました。

20代で公安事件の弁護を複数やっている「ケー弁」なんかいない

 いまどき、弁護士になれるのは、法科大学院に進学すれば、最短で26歳くらいです。20代のうちに、公安事件の刑事弁護を複数やる機会なんて、普通はありません。しかも、携帯一本で仕事をしている「ケー弁」が、そんなに私選で刑事弁護をやっているのは不自然です。

修習生はあの程度で罷免されない

 司法修習生を罷免された人物が出てきますが、たぶん、あの程度の行為では罷免されません。まあ、褒められた行為ではないですし、非行には違いありませんが、司法試験に合格して、1年も修習に励んできた人を、あの程度で罷免するほど、鬼ではないと思います。

公判前整理手続は起訴後だし、1回で終わらない

 なぜか起訴前に公判前整理手続が行われているようでしたが、公判前整理手続をするのは起訴後です。しかも、公判期日の打合せの話が出ていましたが、あんな死傷者多数の重大事件で、動機も不確かで、否認しているのに、公判前整理手続が1回で終わることなどあり得ません。

 

 ところで、今年の映画は、誰向けなのか分からないものになりましたね。少なくとも、お子様にはストーリーを理解できなかったでしょうし、大人向けに傾いた内容だったのは間違いないでしょう。しかし、大人に楽しんでもらうには、穴だらけの超展開だったのも確かです。

 それなのに、コナンファンにとっては十分楽しめる内容だったのだから不思議です。コナンという世界には、あの世界独自のルールがあると思わせるだけの存在感があると思います。それが、国民的お化け漫画に成長した理由なのかもしれません。