今日の授業では一瞬しか取り上げられなかったなぁ、チャップリン。


「世界二大チョビ髭」と言えばヒトラーとチャップリンだろう。
「三大」となったら月亭可朝師匠が入るだろうが。

二人はなんと同い年、誕生日もたった4日違いだ。
何か運命的なものを感じるしかない。

僕が子供の頃は、NHKなどで盛んにチャップリンを放送していた。
最近やらないな、なんでだろ?

当時は非常に怖かった、薄気味悪かった記憶がある。
チャップリンの風貌がヒトラーを想起させたのか、いやどうも他のサイレント映画に比べても、画調が極度に暗いのだ。
彼の美意識だったのかも知れない。


だからやはりトーキー以降の作品が好きだ。
『街の灯』『独裁者』『モダン・タイムズ』『ニューヨークの王様』・・・まぁ彼の場合、厳密には「敢えてサイレントな映画」も多いのだが、やはり笑えるだけじゃなくて、泣ける作品が好きだ。

チャップリンの議論は世界中で為されているし、日本人にも専門家がいる(確か大学の先輩だったはず)ので、別にしたり顔で語るつもりはない。
でも本当に、彼の愛情というか、ペーソスが好きだ。

サイレント期にはなるが、『黄金狂時代』で我が家でパーティーを開こうと一生懸命背伸びして料理や飾りつけをして、結局騙されて誰も来ないチャーリーの悲哀。
『街の灯』で、賢明に盲目の少女を治そうと、大富豪のふりをして悪戦苦闘して、結果目が見えるようになった少女に正体がバレてしまう、放浪紳士チャーリー。

あの悲しさは、どこから来るのだろう?
「こうすればみんな泣けるんや!」という商売根性から出た演出では決してないように思う。
やはり、彼自身がとことん裏切られ続けた経験からの表現なのだろう。

人を愛し、献身的に頑張るのに、結果裏切られるチャップリン。
僕はどうしても、そこに自分を重ねてしまう。

一方、批判精神も強かったので、『モダン・タイムズ』や『独裁者』で物議を醸す。
そしてとうとう「赤狩り」で、心から愛した「自由の国」アメリカを追われるのだ。
その心中は察するに余りある。

生涯4人の女性と結婚し、つまり3回「愛」に失敗している。
愛することと裏切られること。その表裏一体のジレンマにずっと苦しんだのだと思う。

その辺を、どうしても自分を重ねてしまうんだね。
だから大好きなのだ。


『ライムライト』の最後の悲しさは、決して天下を獲って満足げな人間の表現には思えない。
純粋で生きることは、こんなにも難しいのか。