神戸市の消防団の分団で、団員の報酬が個人口座に振り込まれた後、全額が団に集められていた。「消防団はボランティア」という意識が強く、報酬の認識が薄いことが背景にあるとみられる。市内のベテラン団員の男性は報酬が支払われないことに問題意識を抱えながらも活動に従事してきた経緯を明かした。
枕元には活動服と長靴をいつも置いて寝るという男性。火災などで出動指令が携帯メールで届くと、夜中でもバイクを走らせて駆け付ける。消火支援や交通整理など5時間を要することもあり「現場から仕事場に直行ということもあった。疲れがとれない」。
男性は「手当も含めて報酬を全額召し上げられる。ボランティアの気持ちは持っているが、納得いかない」と話す。さらに報酬を提供しても団から受取証さえもらえないことにも不満を募らせる。懇親会には行っていないといい「分団の活動費として予算をしっかり立て、残額から報酬がもらえるならありがたい」。
別の団では報酬を提供する自認書を求めていた。神戸新聞が入手した書面には、報酬だけでなく出動手当も提供する旨が記載され、署名、押印して提出する書式となっていた。また、垂水区のある分団では、会計係が報酬の入金口座の通帳などを団員から預かり一括管理。預けている団員は「自分の金だから引き出したいというような団員はいない。そもそも報酬という考えがない」と話す。
市は団員確保のため報酬を増額したが、こうした状況では有効性に疑問符も。元消防審議会長で兵庫県立大大学院の室崎益輝教授は「報酬を全額集めるというのはやりすぎ。休日返上での出動なら団員の家族にも負担になっており、報酬は個人に支給すべきだ」と指摘。一方、関西大社会安全学部の永田尚三准教授(消防行政・危機管理行政)は「懇親会などの費用を確保する代替案も同時に議論しないと消防団の衰退につながりかねない」と話す。
(霍見真一郎、若林幹夫、上杉順子)