朝夕刊静岡・ちびっこ相撲 女児除外問題◆「巡業は区別なく楽しむ場に」
静岡市で今月八日にあった大相撲春巡業「富士山静岡場所」で女児が「ちびっこ相撲」に参加できなかった問題で、日本相撲協会が「女児のけがが多く、安全確保のため」とした釈明に疑問の声が上がっている。一般的に、子どものけがを男女別でみると男子の方がけがが多く、協会の釈明は根拠が薄いように見える。識者は「男女関係なく、巡業は相撲の楽しさを知るイベントにしてほしい」と提案する。 協会広報部は、本紙の取材に「芝田山広報部長(元横綱大乃国)が口頭で説明した通り。具体的な事例があったなどと補足的な説明をすることはない」と答えた。広報部長は十二日、女児のけがの多さを理由に挙げ、女人禁制との関連性を否定していた。 アマチュア相撲をまとめる日本相撲連盟によると、国内の相撲人口は約六万人で、そのうち女子は一割ほど。選手のけがの統計はないが、昨年開かれた約四十の大会で把握するけがは、軽傷の一、二件程度。担当者は「相撲がけがの多い競技と誤解されているのではないか」と心配する。 保育園や小学校であった子どものけがを男女別に調べた日本スポーツ振興センター(JSC)の統計では、二〇一六年度にあったけがは約四十万件で、うち男子は六割の二十五万件。運動場や体育館などの場所別でも、女子より男子のけがが多かった。 日本体育大スポーツ文化学部の南部さおり准教授(スポーツ危機管理学)は「男子の方が体を動かしたり外で遊んだりする身体活動の機会が多い。母数が多いからけがも多い。ちびっこ相撲も、男児の方が参加者が多いならば、女子のけがが多いとするのは根拠がない」と指摘する。 日本相撲協会の釈明に対して、「協会は近年不祥事が多かった。女人禁制という伝統や格式を改めて前面に出して引き締めないと権威失墜すると恐れたのではないか」と推測。「ちびっこ相撲は力士と触れて力の強さを知るなど、男女関係なく子どもの豊かな身体活動につながる。女児を土俵に上げない対応は極めて短期の責任逃れ。子どもの成長やファンの拡大という長い目で見るべきだ」と述べた。 スポーツニッポンで大相撲担当を長年務めた東京相撲記者クラブ会友の大隅潔さん(75)=浜松商業高卒=は「ちびっこ相撲で子どもがけがをしたり、顔に傷がついたりしたという話は聞いたことがない。地方巡業はファンサービス。力士が子どもを相手に、お客さんに楽しんでもらえるように見せている」と説明した。 “女児禁制”を巡る一連の問題に「巡業部がなぜ今になって女児を土俵に上げないと言い出したのか疑問。女児のけがが多いとする広報部の説明も説得力に欠ける。本場所の女人禁制と巡業のちびっこ相撲はまったく別の話。巡業は、男女の差別をなくして相撲の普及や発展につなげるイベントにしたい」と話した。 ◇ 土俵と女性を巡っては、四日の京都府舞鶴市での春巡業で多々見良三市長が倒れた際、救命処置をした女性に土俵から下りるよう促す場内放送が問題となった。六日には、兵庫県宝塚市の巡業で中川智子市長が土俵上でのあいさつを希望したが、断られた。 協会は、土俵と女性に関わる議論を目的とした臨時理事会を二十八日に東京・両国国技館で開くとしている。 (荒木正親) 今、あなたにオススメ Recommended by |
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