INTERVIEW:
青い果実
今年1月、唐突にYouTubeにアップされた「青い果実」なるグループのMV“mebius feat. ico!”。アーバン・ファンクなサウンドに乗せてMVでラップしているのは、逆光で顔は明らかになっていないが、どう見ても見覚えのあるラッパーたち……。
その「底が丸見えの底なし沼」状態で登場した青い果実だが、同月にリリースされたアルバム「AOKAJI」は、「正体隠す気あるのか!」というぐらいの、K○YAN、METE○R、そしてシンガーのbutaj□の世界観が丸出しになった、一応謎の3人組。しかし「AOKAJI」は、その3人が組み合うことで生まれた、果物で言えばドリアン的とでも言うべきか、お好きな人にはたまらない、個性の強すぎる一枚として完成した。
しかし、強すぎる個性は時に一点突破するように、『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』、そして後続番組である『アフター6ジャンクション』に登場し、多くのリスナーに衝撃と悶絶を与え、そのファン層は拡大している模様。この“強度”はやはり並ではない。
■(インタビュー開始時間に集まっているK○YANとbutaj□、遅れているMETE○R)。
K○YAN「すみません、僕とbutaj□は時間通りに集まるんですけどね……」
■ある程度、覚悟はしてたんで大丈夫です。
METE○R「(悪びれることなく登場するMETE○R)いや〜!すんません!」
butaj□「遅れたのに堂々としてるな〜」
METE○R「いや〜、反省してますよ。もうね、ホントに!(と、言いながら持参の缶チューハイを呑み始める)」
■全ての行動が完璧すぎるでしょ。では、とっととインタビューを始めさせて頂くと、スタジオ石のMr.麿が監督したMV“mebius feat. ico!”の映像でもそうだったように、デビューしてちょっとの間は“覆面ユニット”でしたね。
K○YAN「レーベル:VYBE MUSICとの打ち合わせのときにそういう話になったんですよね。俺やMETE○Rは、これまでやってきた(HIP HOP)畑のイメージが強いから、新しいユニットで新人としてやるなら覆面ユニットでもいいんじゃないの?っていう話になって。で、予算があればDAFT PUNK的な……」
■お面も被って。
K○YAN「やりたかったんだけど、そんな予算もないんで、せめて逆光とか遠目で隠してたんですよね」
■だから、MVの途中で「なんだ、知ってる人だったわ」という感じでした(笑)。
K○YAN「オシャレな感じで推したかったんですけど、化けの皮は剥がれるし、メッキは剥げますよ(笑)」
METE○R「MVでは俺のスーツのボタンが閉まってないし、チャックも上がってないんですよ(笑)。そこを何とか塗り潰してもらって」
■そして、いつの間にかスルッと正体がバレていったという。『TV Bros』誌でレビューしたときも「〜〜っぽい人」という表現にしてたんですが、結果、そんなに気を遣った表現する必要もなかったな、って。
METE○R「『文句言うなら書くな』ってことですよ!ガハハ!」
■「俺たちにはレビュー“されない”権利もある!」と。METE○R君の逆ギレは放っておいて、このユニットの成り立ちは?
K○YAN「制作に入ろうと思ったのは、2016年の10月にRhodes Pianoを買ったんですよ。そういうRhodesを活かしたサウンドを前に出したい、と思ってたときに……」
METE○R「俺とK○YANで遊ぶ約束をして。『遊ぶ』っていうのは俺らにとってはレコーディングだから、そこでまず一曲作ったのが“ほんとそう”だったんですよね」
K○YAN「で、“ほんとそう”が出来て、そのまま呑みに行ったんですよね」
METE○R「(缶チューハイを飲んでるMETE○R)」
K○YAN「……美味そうだね(笑)」
METE○R「それからひと月に1曲ぐらい録ってみよう、という話になったんですけど、『このユニットにはヴォーカルがいるな』ってことでbutaj□を誘ったんですよね」
K○YAN「僕は彼の存在を知らなかったんだけど、butaj□が路上ライヴをやってるYouTube動画を観せてもらったらすごく良かったんで『是非会いたい』って。それで、翌月のレコーディングのときにMETE○Rがbutaj□を連れて来てくれて、そこで出来たのが“許され許し”だったんですよね。で、それでメンバーとして加入してもらって、そのままその日も呑みに行って」
■呑みが重要な要素なんですね。
METE○R「そうなんですよ」
K○YAN「18〜19時には呑みに行けるように逆算して、13時ぐらいには集まって」
METE○R「呑みに行く時間だけは死守しよう、と。だから、自分のヴァースもパッと録って(笑)」
K○YAN「だから、レコーディングは『今日も曲が出来たね』って打ち上げするための起爆剤、ぐらいの気持ちでしたね(笑)。そうやってコンスタントに録ってたんで、去年の6月ぐらいにはこのアルバムは形になってて」
METE○R「かなり早かったよね」
■では、METE○R君とbutaj□君が知り合った経緯は?
METE○R「パリッコさんっていうテクノ/ハウス系のアーティストがいて、その人のやってるLBTっていうクルーの新年会で知り合ったんですよね」
butaj□「僕は、たまたまいただけなんですけどね」
METE○R「俺も、なんで自分がいたか分からない」
■集まりなのか?それは(笑)。
METE○R「会場のエリアの地場が歪んでて、そこに吸い寄せられたんでしょうな!謹慎中の高野政所さんもいたし、TECHNIC RUNNERもいたし、考えたら今の世の中のシーンを作ってる人が全員いたと思うんですよね。TECHNIC RUNNERはマジでヤバイんで、次にインタビューすることになると思います。まあ、不思議な一日でしたね」
■不思議なのは君の話の展開だよ。
METE○R「そこにbutaj□とその友達の不動産屋の社長がいて、『俺は音楽を諦めたけど、お前は音楽をやるしかねぇって!』って、その社長がbutaj□にギターを渡したんですよ」
butaj□「『俺は諦めたけど』……って、そんなドラマチックなこと言ってた(笑)?」
METE○R「『俺にはお前しかいねぇんだよ!お前はやるしかねぇんだよ!』って。それでbutaj□が半ば強制的に弾き語りをやってて、それに感動したんですよね。そこで知り合ってまた会う約束もして、わざわざ待ち合わせしてコンビニの前で飲んだりして(笑)」
K○YAN「いいね〜(笑)」
METE○R「秋葉原の“万世”のとこにコンビニがあるんですけど」
■「コンビニ呑みの聖地」とも言われるところですね。
METE○R「そこで呑んでたら話が合ったんですよね。それで、K○YANと『ヴォーカリストを入れよう』という話になったときに『butaj□に入ってもらおう』と。しかも、『いわゆるR&B』とは違うセンスやアプローチがbutaj□にはあるから、『コレは面白いことになりそうだ』っていう予感もあって」
K○YAN「『butaj□のこの歌の感触が曲に乗ったらどうなるんだろう?』ってワクワクしましたね。実際に、“許され許し”を作ったときにエリック・クラプトンかと思いましたもん。新しい空気感を感じたっていうか」