花澤
「一旦は合意間近、ほとんど合意したのではないかという報道もありましたが、現時点での状況はどうなっているのでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「3月下旬にそうした観測が出たのですが、なかなか実際には難しいと思います。
バチカンといっても実際には一枚岩ではなくて、法王1人の独断で何かが決められるわけではありません。
幹部の中には特に人権などの面で中国と相容れない価値観を持っているわけで、そことの合意に抵抗感を持っている方もいらっしゃるかと思います。」
花澤
「つまり、法王主導で中国との合意までいこうとしたんだけれども、反対する人たちがいて難しくなったという理解でいいでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「そういう見方でよろしいかと思います。」
花澤
「法王に対して周りが『それはやめましょう』という状況になるものなんですか?」
岡本亮輔准教授
「なかなかそれが明らかにされるわけではないのですが、実際には中でいろいろな考えを持っている方々が合議していて、その上に、ある種、総理大臣のような形でいらっしゃるのが法王という存在なのでなかなか簡単に意思決定ができるわけではないと思います。」
花澤
「これから、バチカンにとって最悪のシナリオとはどういうことになるでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「それはやはり中国政府が管理する、例えば中国カトリック教会のようなものが出来上がってしまって、地下教会が排除され、中国の信者さんにカトリックがアクセスできなくなるという状況ではないかと思います。」
花澤
「今回、そもそも合意しようとしていたのかも分からないわけですが、今後どうなっていくでしょうか?
将来的にまた合意するということになるのでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「それを模索するということはあるかもしれませんが、やはり長い時間がかかるのではないかと思います。
いずれにしても、こうしたニュースが出たということ自体が、ヨーロッパだけでカトリックが立ち行かなくなった、世俗化の傾向を大きく示す、非常に象徴的な出来事ではないかと思います。」
花澤
「ある意味、バチカンが、マーケットというか勢力を広げるために大事な部分を譲ろうとしたと受け止められましたよね。
バチカン、カトリックにとっての今回の事態の影響というのはどうなのでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「司教の任命権という、いちばんカトリックにとって重要なものを、12億ともいわれる中国の人口の新たな宗教マーケットと、ある種、てんびんにかけざるを得なくなったというところが、バチカンの大きな変化を示す兆候ではないかと思います。」
花澤
「そして今回ダメだったということは、長期的に、数か月というスパンではなくて、当分合意はないということになるのでしょうか?」
岡本亮輔准教授
「そうですね、なかなかすぐにという形ではないかと思います。」