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2018-04-14

[]基準規程条項の三類型 10:32

小布施由武「JR旅客営業制度のQ&A(第2版)」(自由国民社、2017)によると

「旅客営業取扱基準規程」など「○○規程」という名称のものは規則(約款)に対応する部内命令です。

とされているが、その条項は性格上三つに大別され、4月10日の記事で書いた基準規程の条項をあてはめると次のとおりとなる。

1旅規から委任を受けた事項113-2, 117
2旅規の規定に対する特例101-2, 109, 110, 114, 115, 149, 150, 151, 151-2, 153, 153-2, 155, 157
3係員に対する指示事項(145)

3だけが本来の内規としての条項で、1と2は約款と不可分な契約事項である。

1の委任事項は、旅規で「別に定める」などとし、基準規程はこの委任を受けて「規則○条の規定による○○は、○○のとおりとする」と規定する。113条の2の特定運賃のほか、129条の2(大人の特別急行料金の特定)、131条の3(特別車両料金(A)の特定)などがこれに該当する。旅規の細則であり、文言上も裁量の余地がない。

2はこのブログで本則緩和事項と呼んでいるもので、「規則○条の規定については(にかかわらず)○○することができる」という条文である。「することができる」とは、旅客が希望すればそのように取り扱ってもよいということだろう。しかし、少なくとも乗車券類の効力規定に関する限り実際の運用は「する」で、例えば149条(特定の分岐区間の区間外乗車)は、JR東日本の「きっぷあれこれ」の特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例では、

次の各区間をご利用になる場合は[ ]内の太線区間のキロ数は含めないで計算します。

と断言している。なお、153条の定期乗車券による他経路乗車の条文は「乗車の取扱いをする」であり、統一がとれていない。

「きっぷあれこれ」で解説されていない109条、114条、115条の運賃計算規定の「することができる」も、本則より旅客にとって有利な取り扱いである。前記事のコメントで質問があったが、なぜ114条と115条を「することができる」としているのだろうか。旅客が特例の不適用を希望することがあるだろうか。

114条については、そのような例は思い当たらない。ジパング倶楽部の割引を受けるために何かないかと考えてみたが、単に割引の対象となる駅まで乗車券を購入し、前途放棄するほうが得である。115条を含めて、不適用を希望するような例があればご教示願いたい。

114条がマルスに実装されていない例が報告されたが、周知されてない規定を知っているかによって運賃に差が出るのは、鉄道事業法の16条5項の旅客に対する差別的取り扱いの禁止に反し、問題である。本則どおりの114条不適用がマルス搭載で、114条適用の場合出札補充券で対応しているようだが、逆に114条適用をデフォールトとしてマルスに搭載し、不適用を希望する旅客がいれば出札補充券とすべきではないか。

基準規程は内規であるというタテマエから、「することができる」と断言を避けているのかもしれない。86条ただし書きの特定都区市内の単駅指定は、2008年4月基準規程115条から昇格したものだが、基準規程時代は「することができる」だった。

特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過となるときの普通旅客運賃は、実際乗車船経路が環状線一周となるとき又は折返しとなるときを除いて、その着駅が、発駅に関連する特定都区市内の中心駅から、営業キロが200kmを超えるときであつても、規則第86条を適用しないで発駅から、実際の営業キロ又は運賃計算キロによって旅客運賃を計算することができる。(後略*1

第3分類の係員に対する指示事項は、7条(つり銭の準備)、144条(途中下車印の押なつ方)や、第5章(乗車券類の発行方)などがある。「かっこ」つきで第3分類に該当するとした145条2項は、特定都区市内発着の乗車券で大阪新神戸等で下車した場合、第1項の一時出場に準じて取り扱うという係員に対する指示規定で、途中下車(一時出場)ができるという規定ではない。しかし、キップあれこれの途中下車の項の記載は、「途中出場ができます」となっている。

*1:2項:特定都区市内にある駅を着駅とする場合、3項:東京山手線駅への準用

EH500金太郎EH500金太郎 2018/04/15 17:11 規程114条の例ですが、

井原市(芸備線)→幡生(山陽本線)
1. 広島→幡生は営業キロ198.2kmにつき特定都区市内不適用
2. 井原市→幡生は運賃計算キロ243.4kmにつき運賃は4430円
3. 広島→下関なら営業キロ201.7kmにつき特定都区市内適用
4. 井原市(広島市内)→下関なら3670円
5. 幡生より下関のほうが遠いのに運賃が安いのはおかしいので、規程114条により井原市→幡生は3670円とする

というパターンが想定されているものだと思います。
まあ、このような場合は広島市内→下関で切符を買って、幡生で途中下車のうえ前途放棄すればいいだけだとは思いますが、800円近くも運賃が変わるのに駅員によってこの「裏技」を案内したりしなかったりというのは流石にまずいから内規として基準規程に盛り込んだのでしょう。

EH500金太郎EH500金太郎 2018/04/15 17:15 すみません、ブログでは「不適用を希望する例」を求めてらしたのですね。よく読んでませんでした。すみません。

みかげみかげ 2018/04/15 22:35 第114条に関連しますが、大昔の某市販月刊誌の記事に、同趣旨の規定である昭和33年以前の旅客及び荷物運送取扱細則第89条の2が、なぜ「・・・することができる。」という表現になっているのかという問いに対し、国鉄営業局旅客課は、関係駅ならばこの矛盾を発見しやすいが、乗務員や関係のない駅で他乗代乗車券を発売するときは、矛盾に気づかず実際のキロ数で運賃計算することが普通で、もし、旅客規則のほうで”・・・計算する”としてしまうと、特例を勘案した低廉な運賃との比較を係員に強制することになるとの理由(要旨)から、この特例によらない高い運賃を収受したとしても間違いではないという含みを持たせるためだそうです。まあ、今日日このような考え方は受け入れられませんが。

切符好き切符好き 2018/04/16 00:54 少し話はそれますが、次のURLのようなことができるのは、規程上の根拠があるのでしょうか?それとも、一部の通達で成り立っているのでしょうか?

http://imadegawa.typepad.jp/wota/2008/10/post-ee6f.html

グリーン車を一部区間のみ乗車できることは知らなかったので、ご教示いただけると幸いでございます。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/16 19:09 金沢・京都間の指定席特急券(新幹線乗継)と小松・京都間の特別車両券(A)を旅規の規定どおりに発売しただけだと思います。57条の3第3項の規定により、グリーン車と特急の利用区間が異なるときでも特定の特急料金(自由席特急料金と同額)が適用されます。なおブログ記事は2008年の記事で現在の料金と異なります。

切符好き切符好き 2018/04/17 00:03 >desktoptetsu様

ご教示ありがとうございます。

すなわち、57条の3を使えば、グリーン車の一部区間利用は可能なのですね。

たとえば、新潟・秋田間の特急いなほ1号に乗車する場合、新潟・村上間を指定席、村上・鶴岡間をグリーン席、鶴岡・秋田間を指定席という、組み合わせで発売できるということですかね。

この場合、必要なのは新潟・秋田間の通常期指定席特急料金から520円を低減した金額と、村上・鶴岡間のグリーン料金という理解でよろしいでしょうか。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/17 19:10 そのとおりですが、前コメントが誤解を与えたようなので。特急券とグリーン券の乗車区間が異なってもよいのは、57条の3第3項のためではありません。特急券とグリーン券とは、それぞれ別のサービスの提供を受けるために個別に購入するものであって、乗車区間が異なるのは問題ありません。乗車券と特急券の乗車区間が異なってもよいのと同じです。57条の3第3項は、乗車区間が異なっていても特定の特急料金を適用するといっているだけです。ただ、特急券とグリーン券の乗車区間が異なることを追認しているといえます。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/17 19:26 みかげさんのコメントを受けて、手持ちの昭和27(1952)年現行の細則で89条の2を調べてみましたが、ありませんでした(単駅指定条項もなし)。当時の規則51条は、東京都区内・大阪市内発着の101キロ以上の規定で、昭和32年4月151キロ以上に変更されましたが、そのとき細則89条の2が制定されたのでしょうか。

みかげみかげ 2018/04/17 22:05 >desktoptetsu様
この規定は、昭和28年5月1日から施行されたものです。

かじきかじき 2018/04/21 20:59 >不適用を希望するような例

例えば規第282条の2第1号に基づく運賃を計算するようなときは、基準規程第114条を不適用にしてくれた方が旅客にとって有利ですね。
そんなことのために適用任意になっているわけではないとは思いますが。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/22 20:09 基準規程第114条を適用しても、不適用でも、特定都区市内発着の乗車券になりませんから、規則282条の2は関係ないと思いますが…

やまやまやまやま 2018/04/23 01:30 >desktoptetsuさん
かじきさんの仰る「不適用を希望する例」は、規則第282条の2第1号本文に基づいて乗車券の払いもどしを請求する際、「旅行中止駅・着駅間」が規程第114条の対象区間だった場合に、不乗区間の運賃計算方法として、規程第114条を不適用とするほうが適用とするより高額となり(払戻額が多くなり)旅客に有利、という意味だと思います。
原券が特定都区市内発着か否かは、関係ありません。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/23 08:54 282条の2第1号ロではなく本文の話でしたか。しかし、114条不適用で高い運賃を払っていても、払い戻し額は「旅行中止駅・着駅間に対する旅客運賃」で同じだと思います。若松・佐伯間の運賃は、114条を適用すると3,990円(201-220km)、不適用だと4,320円(221-240km)。大分で旅行中止したときの払戻額は、どちらも大分・佐伯間の1,290円でしょう。

やまやまやまやま 2018/04/23 14:53 >desktoptetsuさん
違います。「原券が規程第114条不適用」(第114条不適用の高い運賃を払っている乗車券の使用開始後の旅行中止)ということではありません。
EH500金太郎さんの適用区間例(井原市・幡生間の例)を拝借して説明すると…
・「備中神代→幡生(経由:芸備・山陽)」の乗車券で旅行開始後、井原市で旅行中止となった場合、払戻額は「井原市・幡生間の運賃」となります。この運賃(=
払戻額)の算出時に、規程第114条適用だと「井原市・幡生間」の運賃を「井原市・下関間」の運賃とするので3670円、不適用なら4430円。
よって、不適用としたほうが払戻額が多くなる、ということです。

desktoptetsudesktoptetsu 2018/04/23 19:33 お二人がおっしゃっていることをまったく誤解していました。規則282条の2は、列車の運行不能・遅延による旅行中止の場合の旅客運賃・料金の払戻しですから、旅客に有利なように規程114条不適用で「旅行中止駅・着駅間」の運賃を払い戻すということなのでしょう。同じことが規程110条(列車特定区間)の「できる」についてもいえますね。大阪・鳥取間の「はまかぜ」が姫路で打ち切りになり、旅行を中止するときは、110条適用の福知山線経由の乗車券を所持していても、姫路・鳥取間の播但線経由の運賃が払い戻されるということですか。

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