暮らしの中において、スマートフォン、携帯電話、無線LAN、ワイヤレスICカードやICタグなど電波利用の拡大や多様化に伴って、電波は健康に良くないのではないかという不安を抱いたり、電波の安全性について疑問を持つ方がおられます。
このページでは、電波に不安や疑問を持つ方々に、正しい情報をわかりやすく説明しております。
電磁波のうち300万MHz(メガヘルツ)以下の周波数のものを電波といい、電波法で規定されています。
電磁波は、昔から身の周りにありました。代表的なものとしては、太陽や雷、雲の中の放電などがあります。また、人間も赤外線を放出しています。
赤外線、可視光線、紫外線やレントゲン撮影に使われるエックス線も電磁波ですが、電波ではありません。
電磁波には波のような性質があり、電界と磁界が影響しあいながら、空間を伝わっていきます。1秒間に振動する回数を周波数といい、Hz(ヘルツ)という単位が用いられます。また、1回振動する間に進む距離を波長といい、1秒間に約30万Km(キロメートル)進みます。
電波は、エックス線などと比較すると周波数がきわめて低くエネルギーも小さいため、非電離放射線(物質の原子を電離させることができない電磁波)の仲間になります。
画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。
電波は目に見えませんが、その強さは測定器を使えば知ることができます。
また、無線機の出力電力やアンテナからの距離などがわかれば、計算により知ることができます。
電波の強さは、前述“2.電磁波と電波”で説明した波の大きさに相当します。
電波の強さの物理量は、電界強度(単位は、V/m:ボルト毎メートル)、磁界強度(単位は、A/m:アンペア毎メートル)または、1平方センチメートルの空間を通過する電波の電力、電力束密度(単位は、mW/cm2:ミリワット毎平方センチメートル)で測定することができます。
電波は、エックス線などの電離放射線と違い、物質の原子をはぎとる電離作用を引き起こしません。
では、まったく影響がないかといえば、短期的な影響として、次のものがあります。
私たちの生活になくてはならないものとなった電波を、安全に安心して利用するために、国(総務省)は、過去50年にわたる国内外の研究結果に基づいて、電波防護指針を策定し、電波の強さの基準値(一般環境では、50倍の安全率をとったもの)を定め、電波法による規制をしています。
具体的には、携帯電話基地局や放送局などで、発射する電波の強さが電波防護指針の基準を超える場所には、一般の人が立ち入ることができないように柵などを設けることになっています。
また、頭の近くで使う携帯電話端末などは、あらかじめ、電波防護指針の基準(局所吸収指針)を守っていることを確認してからでないと販売できないようになっています。
自宅の周りや市街地で、携帯電話基地局の鉄塔やマンションの屋上にあるアンテナが目に付きませんか。
携帯電話端末から出た電波は、携帯電話基地局を経由して通話をする仕組みになっています。
ひとつの基地局で同時に通信できる携帯電話端末数(人数)には限界があるため、サービスエリアを多数のセルと呼ばれる小さなエリアに分割し、それぞれに基地局を設置して、ユーザーの移動にあわせて追跡接続するシステムセル方式(図7参照)を採用しています。
セル方式の利点は、周波数利用効率がよく(繰り返し同じ周波数を使用できるため、基地局の数を増やせば、同時に通信できる人数が増える。)、電波の強さも弱くて(携帯電話端末の電池も長くもつ)すむことです。
私たちの周りで携帯電話基地局のアンテナが目に付くようになった理由は、セル方式の基地局で携帯電話サービスを受けているからです。
携帯電話端末は、基地局から近い時には、強い電波を出さなくても良好な通信をすることができるため、出力電力を最大出力の10分の1以下になるように制御するような仕組みになっています。
従って、基地局が近くにあり、通信が良好にできる状態であれば(アンテナバーが最大)であれば、携帯電話端末の発射する電波の強さは非常に弱くなっています。
携帯電話端末から発射された電波のエネルギーの一部は、人体に吸収され熱になりますが、定められた基準値(局所SAR)を超えなければ人体に悪影響はありません。 また、この基準値は十分な安全率(50倍)が適用されているので、この数値を少し超えたからといって、それだけで直ちに人体に影響があるというものではありません。 電波にさらされる度合いを表す物理量として、比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)が使われます。
携帯電話端末のように人体頭部のすぐそばで使用する無線機器は局所SARが2W/kg(ワット毎キログラム)と定められています。
局所SARの定義は、人体局所の任意の生体組織10gが任意の6分間で吸収したエネルギー量の平均値で、単位はW/kg(ワット毎キログラム)です。
携帯電話端末のSAR値は、電気通信事業者のホームページから、確認することができますが、使用している携帯電話端末のSAR値に関係なく前述“6.携帯電話の仕組みと電波の強さ”で説明しましたとおり、通信が良好にできる状態(アンテナバーが最大)であれば、発射される電波の強さは、非常に弱くなっています。
健康リスクとは、人間が特定の有害性によって被害を受ける見込み、あるいは可能性をいいます。
有害性とは人の健康に害を与えうるもの、あるいは状況のことをいいます。
無線通信に使われている電波の健康への影響(有害性)で、現在はっきりしているものは熱作用に関連するものです。
熱作用については、前述“5.安全のための基準”で説明しましたように、電波防護指針により守られていますので、熱作用により健康に悪影響が生じることはありませんし、がんやその他の健康に対して悪影響を及ぼすとの根拠は見つかっていません。
電波は、1888年にヘルツ(ドイツ)が電波の存在を火花放電発生器で実証してから100年以上いろいろな研究や実験をして、その性質はよくわかっています。
また、健康への影響についても50年以上研究、実験がされ、現在も世界保健機関(WHO)の国際電磁界プロジェクトなどで多くの研究が進められています。
総務省では、電波による人体への影響を科学的に解明するため、様々な研究を行い結果を公表しています。
下記から詳しい情報をご覧ください。
インターネットで情報検索をすれば、様々な情報を知ることができます。
電磁波の生体影響についても、様々な情報を知ることができますが、その情報の信頼性や、正確なものであるかということを考えることが重要です。
できるだけ、わかりやすく説明するため、専門用語を言い換えて説明しています。(例:ばく露→浴びる、または、さらされる。)そのため、次の参考資料を、あわせてご一読いただければと思います。
次のリンク先から電波の安全性に関するパンフレットをダウンロード(PDFファイル)することができます。
総務省ホームページにおいて、生体電磁環境に関する情報を提供しています。
下記から、生体電磁環境関係の資料を参照することができます。(注)
注記
各表をクリックすると、PDFファイルが開きます。
表1-4:各国(地域)の電波防護規制(1)(PDFファイル:520KB)
表1-5:各国(地域)の電波防護規制(2)(PDFファイル:519KB)
表1-6:各国(地域)の電波防護規制(3)(PDFファイル:878KB)
表1-7:各国(地域)の電波防護規制(4)(PDFファイル:878KB)
表1-8:各国(地域)の電波防護規制(5)(PDFファイル:874KB)
表1-9:各国(地域)の電波防護規制(6)(PDFファイル:518KB)
電波の強さは、その単位により、次の表のように大きく変わってしまいます。
1mW/cm2(ミリワット毎平方センチメートル)を単位ごとに換算すると、次の表のようになります。
1ミリワット毎平方センチメートルを単位ごとに換算する。
1ミリワット毎平方センチメートル=1,000マイクロワット毎平方センチメートル=1,000,000ナノワット毎平方センチメートル=10,000,000マイクロワット毎平方メートル=61.40ボルト毎メートル=155.76デシベル・マイクロボルト毎メートル
当局のホームページは、電波の強さを原則、電界強度V/m(ボルト毎メートル)で説明していますが、電力束密度を電界強度に換算する場合は、次の式により換算することができます。
電力束密度(ミリワット毎平方センチメートル)
=電界強度(ボルト毎メートル)の二乗÷3,770
=磁界強度(アンペア毎メートル)の二乗×37.7
電界強度の単位、V/m(ボルト毎メートル)とdBμV/m(デシベル・マイクロボルト毎メートル)は、次の換算表で換算することができます。
例:電界強度1V/m(ボルト毎メートル)をdBμV/m(デシベル・マイクロボルト毎メートル)に換算すると120dBμV/m(デシベル・マイクロボルト毎メートル)
電界強度E(dBμV/m:デシベル・マイクロボルト毎メートル)と電力束密度S(mW/cm2:ミリワット毎平方センチメートル)は次の換算表で換算することができます。
図12:電界強度・電力束密度換算表(PDFファイル:154KB)
例:電力束密度1mW/cm2(ミリワット毎平方センチメートル)を電界強度に換算すると155.76dBμV/m(デシベル・マイクロボルト毎メートル)