2012年06月06日

[朝日社説] 谷垣自民党―責任野党の矜持を示せ (2012年6月6日)

「動かない政治」を前に動かす責任は、なにも民主党だけにあるわけではない。

野党第1党の自民党も、同じ責めを負っていることを忘れてもらっては困る。

まして自民党は戦後半世紀以上も政権を担ってきた。目下の財政悪化も、社会保障の行きづまりも、その原因の過半は自民党政権時代につくられた。

谷垣禎一総裁に求めたい。

社会保障と税の一体改革をめぐって、野田首相が真摯(しんし)に協力を求めているいまこそ、重要政策の実現に向けて「責任野党」の矜持(きょうじ)を示すべきだ。

一体改革関連法案の修正協議をめぐり、民主、自民、公明3党の幹事長がきのう会談した。

自民党の石原伸晃幹事長が衆院採決の日程を明示するよう求めたが、この日は折り合わなかった。

かりに修正協議に入ったとしても、自民党が賛成の条件として突きつけるハードルは高い。

衆院解散を約束する「話し合い解散」。社会保障政策の自民党案「丸のみ」。ともに、首相が受け入れた途端、民主党が分裂含みになるのは必至だ。

交渉ごとだからと吹っ掛けたい思いも分からなくはない。過去の経緯も理解はできる。

やはり「ねじれ国会」だった福田、麻生政権の時代、早期解散を求める民主党に、法案審議や国会同意人事で徹底的に足を引っ張られた。その不信と怨念は骨身にしみている。

谷垣氏は9月に党の総裁選を控える。再選を確実にするために、なんとしても早期の解散がほしい。そんな事情もあろう。

それでも、谷垣氏ら自民党の議員たちに、あらためて思い出してほしいことがある。

かつて自民党から民主党に「与野党で社会保障の議論の場をつくりたい」として、こう呼びかけたのではなかったか。

「社会保障や税の問題を政争の具にしてはならない」「政権交代のたびに、社会保障制度がくるくる変わるのはよくない」

まったくその通りである。

なのにいま、やられた分はやり返せとばかりに、こんどは自民党が首相の提案を蹴飛ばしてしまえばどうなるか。

一体改革、消費増税が振り出しに戻るだけではない。

いつか自民党が政権に返り咲いたとき、ふたたび不毛な「不信と怨念の政治」に足をとられることになるだろう。

首相は内閣改造で前に出た。次は谷垣氏が歩み寄る番だ。党内基盤の弱い党首同士、トップ会談を先行させて両党を強く引っ張ることも考えていい。
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posted by (-@∀@) at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 朝日新聞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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