紙か布か。これから育児を始める、もしくは育児始めたての親たちにとって〈おむつ〉は関心の高いトピックスでしょう。ところが、そのどちらでもない方法が存在します。それは〈おむつなし育児〉。
発言小町にもたびたび登場する物件で、「おむつなし育児の友人が泊まりに来る」なるトピでは「絨毯や布団に漏らされたらどうするんだ」「信じられません」「断ったほうがいい」といった意見が続出。ただ、実際は〈糞尿垂れ流し〉ではなく〈普段はおむつをつけていても、タイミングを見て排泄時には極力おむつの外で出させる〉というもののよう。
おむつなし育児を布教する団体のHPでは、〈早期トイレトレーニングではなく「気持ちよい自然な排泄」〉が目的であると強調されています。でも、おむつなし育児の謳う〈自然な排泄〉って?
同ホームページにも名前を連ねる〈おむつなし育児研究メンバー〉は、共著で『赤ちゃんにおむつはいらない-失われた身体技法を求めて』(勁草書房)なる書籍を出していますのでそれをウォッチしていきましょう。
中心人物は、経血コントロールでお馴染みの作家・三砂(みさご)ちづる氏(過去記事ご参照)。三砂氏を編者とし、おむつなし育児研究所の所長を務める和田智代氏(書籍では「知代」と表記)や、NPO自然育児友の会の事務局に関わったという伊藤恵美子氏など、複数のメンバーが執筆しています。同書ではおむつなし育児は〈2006年から2年間、トヨタ財団の助成で行った研究〉であり〈保育士、母子保健・育児関係者、民俗学者などが研究メンバー〉と説明。
「排泄の話なのに、小児科医や泌尿器科医はいないのねえ~」と思う方も多いかもしれません。その点については、冒頭で三砂氏がこう力説しています。
「おむつなし育児は、こうすればこのようによいことがある、という科学的因果関係を求めるものではない。以前は誰もがやっていた、人間の知恵、である。赤ちゃんをご機嫌よくすこやかに育て、関わる人間の共感能力をも上げる知恵であった。そこで育ってくる人がまた、本当の意味でのコミュニケーションの能力、すなわち共感能力の高い人になっていくことはおそらく疑いのないことであろう」
失われた身体技法! 古の知恵! そこに真の豊かさと健康が! 経血コントロールといい、三砂氏は本当にこの手の物語がお好きですね。しかし健康や社会にそれほどいいものであるなら、医学的根拠(科学的根拠)もあればなおよし、だと思うのですが。なぜそこを避けるのか、なんだか不自然。
母親が自信をつけ、赤ちゃんの機嫌よくなる!?
おむつなし育児のざっくりした概要は次の通りです。
・首の座らない赤ちゃんも、母親がタイミングを察しておまるの上にぶら下げてあげると(やり手水=やりちょうず、というそう)気持ちよく排泄できる。おむつでするよりも、うんちをたくさんする傾向がある。
・排泄のタイミングを常に気にする必要が出てくるので、お互いのコミュニケーションが取りやすい。母親の自信にも繋がる。
・おむつが汚れるという不快な感覚を味わうことが減少し、常に機嫌がよくなる。
・おむつをしていないほうが排泄の感覚が発達するようで、排泄の自立(タイミングを見て自分でトイレでできる)が早くなる。
要は、おむつの中でしない=自然な排泄と言いたいよう。おまるやトイレに出す習慣は小さな赤ちゃんでもできる自然なこと! という按配です。
一般的には、膀胱や脳がある程度発達する1歳を過ぎないとトイレを意識するのは難しいとされています。しかし、経験上そんなことはない! と主張するのです。この他、おむつなし育児を実践する保育園の「おむつをつけないほうが赤ちゃんの動きが活発」という意見や、パンツを履いていると漏らすのに、履かずにいると漏らさないなど面白いエピソードも。