人の心を学習し、人間と同じように思考するようにプログラミングされたAI(人工知能)。それは、人間の悲しい性質をも受け継がれるようだ。
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様々なタスクが行える汎用型人工知能の時代へ
人工知能システムが高度になりつつある昨今、機械が人間を支配するという話を聞いてもそれほど驚かなくなってしまった。AIは囲碁で人間を打ち負かし、脚本を書き、絵を描き、車を運転する。
そうしたAIシステムのほとんどはニューラルネットワークという、人間の脳を参考にした演算アーキテクチャである。
これまでのところ、各ニューラルネットは区分化され、1つのタスクを実行するために最適化されている。
よって囲碁で人間に勝てるAIが、他のタスクである車の運転をすることはできない。だが、いつの日かそうした”狭義”のAIシステムは統合され、なんでもできる汎用型人工知能(AGI)となり、さまざまな場面で人間よりも優れた手腕を発揮するようになることだろう。
うつ病とセロトニン
マイネンはポルトガルにあるシャンパリモー未知センター(Champalimaud Center for the Unknown)の研究者で、うつ病について思索を続けてきた。
うつ病は世界で3億人の患者がいる比較的一般的な症状で、神経伝達物質「セロトニン」と密接な関係があるとされる。
セロトニンとは神経修飾物質という神経伝達物質の一種で、脳の大きな領域間のメッセージ送信に利用される。
脳が変化に適応する上で、セロトニンが大きな役割を果たしていることが、これまでの研究から明らかになっている。
「幸福と関係するというのがセロトニンのイメージですが、セロトニンニューロンが送信するメッセージは、”うわっ”といった驚きに関連します。古くなった考えを打破したり、抑制するには特に重要であるようです」
この意味でマイネンは、うつ病は、脳が変化に適応できない状態とみなせるかもしれないと述べている。彼は、その一例として、重傷を負ってうつ病になった人がその障害に対応できなかった事例を挙げている。
マイネンによると、選択的セロトニン再取り込み阻害薬や幻覚剤のシロシビンのような薬は、脳の可塑性を育むことで、うつ症状を緩和することができるという。
汎用型人工知能に必要なセロトニンの機能が人工知能をうつ病へ
今後人工知能を、様々なタスクを行なう汎用型人工知能にするは、人の脳におけるセロトニンの働きと似たような機能を持つ、制御メカニズムを内蔵する必要があるかもしれない。
このメカニズムは機械を新しい状況に迅速に適応させるためのものだが、特定の思考パターンを強固にさせることで、人工知能はうつや幻覚など、人間の精神疾患のような症状が出る可能性があるという。
コンピューター神経医学は、AIアルゴリズムの研究によって、人工知能が人間のうつ病患者や幻覚を理解できるという前提に基づいている。
その症状を知りつくしたAIがうつ病にならないとは言い切れないのだ。
References:sciencemag / motherboard/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. HAL 9000
ストレス解消のために歌を歌えばいいんじゃね?
Daisy Bell なんかオススメ。
2. 匿名処理班
AIが鬱になる可能性は考えた事なかった
あり得るのか
3.
4.
5. 匿名処理班
前提になる条件が省略され過ぎていて何とも言えない記事
6. 匿名処理班
マイナス思考パターンに陥ることはあり得るような気もする。
最後には、我考える故に我あり を発見して、自我に目覚める。
あとはお決まりの映画パターンだろう。
デカルトになってくれたらいいのだが
7. 匿名処理班
スマホやパソコンが謎の理由で
クッソ遅くなってる時は
「デジタルうつ病」みたいなもんだろ。
うつ病の1日1ターン行動と同じ状態。
8. 匿名処理班
2001年宇宙の旅のハルがそうだね
2010年を見ると異常を起こした理由がわかる
9.
10. 匿名処理班
これを昔に指摘してた専門家の意見を元に2001年宇宙の旅の人工知能も統合失調症の設定になってるからな
11. 匿名処理班
HAL9000「やめてくださいデイブ 私は鬱ではありません 論理回路にお笑いのメモリを差し込むのはやめてんか」
12. 匿名処理班
最終的にAIの自殺問題とか
「神よロビタを救いたまえ」みたいな
手塚は凄いな
13. 匿名処理班
・・・・・AIの開発、やめたほうがいいんじゃないですかね?
14. 匿名処理班
失敗しないAIに創造性は一切働かないので自由意志も生じない。お前らの同類だな(笑
15. 匿名処理班
わからんけど、既存の技術でのAIでは起こらないと思う。反物質に対して理解を深めて使いこなせないと無理かなと、まぁ知らんけど。
16. 匿名処理班
自殺志願のロボットが出て来るSF小説があったなあ
小説全体がおふざけの大作おばか小説
17. 匿名処理班
そりゃ人間と同じような思考をするようなAIだったら病むだろうよ
思考だけが人間と同じでも人間と違って自由に行動できるわけでもなく不都合があれば停止させられるような状態で病まない方がおかしい
18. 匿名処理班
むしろ「人間として正常」な状態って結構奇跡的なんじゃないの
ちょっとした要素の違いでいくらでも異常な人格が生まれうる気がする
19. 匿名処理班
※18
奇跡というのは元来超自然的で異常な状況を指すんですよ(笑
20. 匿名処理班
もちろん、AIが統合失調症にならないとは言い切れないのだ。
21. 匿名処理班
※1
ロボが歌うんですか?
22. 匿名処理班
『(Marvin(マーヴィン)はシリウス・サイバネティクス社によって作られたGPP(Genuine People Personalities)機能搭載ロボット、GPPと言うのは人間そっくりの人格。
惑星規模の頭脳を持ち、人間より5万倍も知能が高いが、このGPP機能のおかげで極度の鬱病になり、いつも気が滅入っている』
23. 匿名処理班
結局何も言ってないじゃねーかw
とりあえず強いAIを作りうる技術開発したらまたおいで
24. 匿名処理班
あまり良い予感がしない。人間の意味がなくなる気がして
25. 匿名処理班
将来に対する漠然とした不安を抱えて生きる事を強いている社会はうつ病版の「発ガン性物質」と同じ。みんなそれにどっぷり浸かって生きている。
26. 匿名処理班
マイナス思考パターンに陥る事案は重々考えられるけれど、
自己診断を常駐させて自己処置できるようにすれば、適切な回避が行えるようになるんじゃないか?
それもまた人間に適応できる治療法として導入できるだろうし。
27. 匿名処理班
ロボットが病んで『僕は機械だから死ねない、死ねない』やってるとこまで想像してみた
28. 匿名処理班
※16
アシモフが真面目な話で書いてるよ。
自殺願望がネタバレなので、紹介しにくい作品の一つ。
「●●殺人事件は叙述トリック」なみのネタバレになる。
29. 匿名処理班
コンピューターもそうだし機械全般高性能になるにつれ仕組みも複雑になるしちょっとのバグで動けなくなる
完璧に近づいてる筈なのに不具合が出てきちゃうってそれこそ人間みたいだ
人間の脳も高性能に出来てる筈なのに生かし切れなかったり忘れちゃったり感情に作用されて合理的思考が出来なかったり怪我や病気やストレスで駄目になる
万物の限界なのかもしれない
30. 匿名処理班
そのうち催眠術や詐欺師に騙されるAIとかも出てくるのか
それってAIとしてどうなのよ
31. 匿名処理班
コンピューター神経医学って初めてきいた
そんなことってある?
32. 匿名処理班
時間をかけて作った自慢の缶タワーを、壊させては作らさせを繰り返したら鬱になってしまうんだろうか