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相次ぐ米軍機事件・事故に対し、2月、県議会の抗議決議に「沖縄は植民地ではない」との文言が盛り込まれた。画期的だと感じたが、本書を読むと、もっと踏み込んで「植民地だ」と認識した方が解決に向かうのではと考えさせられる。
金城氏によると、政府の側が沖縄は日本の植民地だと思っているし、松島氏は「植民地の問題性を明らかにして、国際社会、国連に訴えて独立への手続きを具体的に進めないと、ますます強行的に基地がつくられてしまう」と言う。
年齢も経験も異なる2人が、対談形式で琉球独立の理念や将来像、道筋について大いに語り合い、時には意気投合し、時には真っ向から意見をぶつけ合った本書。
「独立したら飯食えますか」のテーマでは、松島氏が、独立することによって日本政府の「アメとムチ」の植民地政策から抜け出せ、軍事基地を撤去させた広大な土地も活用できると主張。金城氏は、読谷村が、日本政府とではなく米軍と直接交渉することで基地を返還させ、そこでものづくりが発展した経緯を紹介している。
松島氏は、国際法上、自己決定権には、内的自己決定権(自治)と外的自己決定権(独立)があるが、自治権が認められない琉球に残された道は独立しかないと明快だ。金城氏は、地元の人間が本当に独立を望んでいるか、民衆の運動との共振がカギだとする。
ナショナリズム、「排外主義」、天皇制・天皇については、2人の見解が大きく分かれるが、辺野古新基地建設や先島への自衛隊配備への強い危機感は共通だ。
「解説」では、編者が自らをヤマトゥンチュと表現し、韓国の友人に「日本人のあなたには『日本独立は可能か』というテーマが残っていますよ」と言われたエピソードを紹介。アジアからの視点を知ることができた。今の若い世代や女性による脱植民地、独立論についてふれられていたらよかった。
とはいえ、本書は琉球人同士が琉球独立について議論することの大切さと必要性を伝えてくれる。(照屋みどり・しまんちゅスクール)
きんじょう・みのる 1939年、浜比嘉島生まれ。大阪や兵庫の中・高校で講師を務めながら彫刻活動に従事、94年から読谷村で制作に専念。
まつしま・やすかつ 1963年、石垣島生まれ。龍谷大教授、琉球民族遺骨返還研究会代表、東アジア共同体沖縄(琉球)研究会共同副代表。
かわせ・しゅんじ 1947年、三重県伊賀市生まれ。奈良新聞記者、解放出版社職員を経てフリー。