エリート官僚のスキャンダルが続出する根因
内閣人事局の「課題」と「処方箋」<前編>
最近、森友学園や加計学園問題を契機に、財務省をはじめ、文部科学省、経済産業省など中央官庁の幹部の人事・言動をめぐってメディアも国会が大荒れである。
その背景として、「内閣人事局の存在によって官邸が各省庁の幹部人事を一手に左右できるようになったことが、過剰な官邸配慮を引き起こし、行政が忖度(そんたく)だらけになったためだ」という指摘がある。他方で、そうではなくて、各省庁の行政縦割りの弊害をなくすには、内閣人事局の創設は間違いではなく、その運用が良くないという主張もある。
しかし、こうした「0か1か」タイプの議論は、往々にして間違った結論を導く。内閣人事局の仕組みを今のまま残すか、あるいは、一挙に昔に戻るかという極端な議論はまったく非生産的で、かえって混乱を助長するのではないか。
官僚時代に人事部門でキャリア官僚の人事に携わり、退職後は大小の民間企業で経営者として、人事の最終責任者でもあった経験を踏まえて、今の仕組みに問題点はあるのか、改善するとしたら、どうすれば良いのか、前後編に分けて考えていく。まず前編は「内閣人事局の問題」について考えていく。明日の後編では、「解決策」を論じたい。
内閣人事局創設の経緯と背景
内閣人事局の創設の背景や意義について詳細を記述し始めると、それだけで大論文になってしまうので、ここではエッセンスだけを述べることにしたい。
内閣人事局は、2014年5月に内閣法が改正され、正式な機関として設けられており、その歴史は長いものではない。この議論のルーツは、橋本龍太郎内閣時代に検討され、2000年に中央省庁の大再編として実現した行政改革にある。その1つの車輪が中央省庁の再編、そしてもう1つの車輪が「公務員制度改革」であったが、公務員制度改革は未完のまま「橋本退陣」という事態を受けてしばらく宙ぶらりん状態に置かれたのである。
そもそも憲法第73条第4号に「(内閣の権能は)法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること」と定められており、官僚の人事は、内閣の長である首相や官房長官の権能として定められている。では、なぜ、わざわざ「人事局」を作らなければならなかったのか。