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第3話「フランベルジュ、リンケージ!」
「ねえ。りょーちゃんって、おっきくなったら何になりたいの?」
丸眼鏡の少女―――由希子は問いかけた。
身寄りのない子供たちが過ごす場所、郊外の孤児院に拾われ、仲間の子供たちとともに過ごしていた中で、ふいに問いかけられた言葉。
大きくなったら……自分はどんな大人になるんだろうか。
問いかけられた少女……広瀬涼は、んー、と額に指を当てて考えてみた。
「……考えたこと、なかった」
当然のことである。『あの時』までは頼れる人間もおらず、幼すぎるせいで対価のひとつも与えられず、他人からただモノを奪って日々を生きることしかできなかったから。孤児院に拾われてから、そういう生き方しかできない少年少女を『ストリート・チルドレン』と呼ぶことを知った。
それはきっといけないことなのだろう。だが、他にどうすればよかったのか。
未来も見えず、ただその場を生きていくだけの為に行動を繰り返す。だからこそ、大きくなる―――成長した後の広瀬涼の姿を、思い浮かべることができなかったのだ。
「私ね、こう、おっきな会社作って、ドカーンとかっこいいの作って、みんな楽しくて便利になるようにしたいんだ!
ちゃんと勉強したら私達でも会社立てられるんだって!」
無邪気に言葉を並べたてる由希子。その笑顔は、やっぱり眩しくて。
由希子の並べた言葉と、笑顔。それに、自分のしてもらったこと。……大きくなったら、という言葉とはかけ離れるかもしれないが、少女にはやりたいことがひとつ思い浮かんだ。
「……由希子みたいになりたい」
「ふぇ? 私?」
不思議そうに首を傾げる由希子に。
「そ。由希子、私に優しくしてくれたよね。だから私も、いつか誰かに優しくできるような人間になりたいって。……何になるかは、分からないけど、困ってる人がいたら助けられるようになりたい」
しっかりと、柔らかな笑顔で自分の考えを語る。それは正しいことだと確信していたから。だから、言葉をかけられた由希子の表情も柔らかく微笑んで。
「うん、できると思う。りょーちゃんだし!」
ぐっとサムズアップ。その言葉に、希望を分けてもらった気がした。
どこまでも、太陽に顔を向ける向日葵のように、屈託なく咲き誇る少女は、広瀬涼にとってどこまでも眩しく映っていた。
「―――だからこの問題教えてっ!」
……からの、困った顔で問題集を差し出すそれに、ありがとう、の言葉が引っ込み、かくんと苦笑しながらうなだれるのであった。
Flamberge逆転凱歌 第3話 「フランベルジュ、リンケージ!」
『ああっとー! これは完全に封殺の構えだ!
開幕に大勢は決してしまうのか、経験者の二名を欠いて3対1!
広瀬、そしてファルコーポには非常に苦しい展開が続いております!』
状況は最悪だった。電磁機雷にかけられた二機は沈黙したまま。残るフランベルジュを取り囲むように、ヘカトンケイル型亜種の3機が円の機動を描く。
おそらくこうして取り囲むために選択されたであろう、脚部に仕込まれたローラーを使っての機動。
電磁加速による実弾投射、グレネードに火炎放射、熱と衝撃。
揺らめき、よろける―――こうして攻められれば、いかに機体の剛性が頑強であろうと関係ない。熱で機体とパイロットが炙られ、爆発の衝撃が大質量をも揺るがす。
傷一つつかない無敵の装甲があろうと、機体の内部構造やパイロットに影響を及ぼす攻撃ならばただ機体の形が残るだけ。どんなに性能が高くても、実況者の古ヶ谷が語る通り、ここまで手数の差がついた時点で大勢はついてしまうものだ。
『いやあ、どう見ますか解説の北村さん。
まさかこんなにあっさり決まってしまうとは……』
『そうですねェ、やはりあの初動を呼んだ機雷設置が効いたと思いますよ。
おそらく経験の浅い広瀬に無理をさせず、まずは二機で抑え込みにかかろうとしたんでしょう。
しかし、そのコースを読んだ機雷にまともに直撃してしまい、行動不能になってしまいました。
効果範囲は広くありませんので、よく気付かれずに仕掛けられたと感心するべきでしょう』
『戦力構成と未来社側の読みが完全に噛みあった形になったわけですね。
北村さん、ありがとうございました』
その言葉通り、未来社は完全にファルコーポ側の戦力を把握していたのだろう。―――フランベルジュの桁外れの剛性も。
「完ッ全に対策されてやがるな……」
顎に手をあてながらぼやく俊暁。
その攻撃は、というより装備は。通常火器で、ヘカトンケイルの出力で、全くダメージを与えられなかったことを前提で組んでいる。
ここまで敵の策が見事に嵌ってしまえば、考えられる結末は二つ。このまま15分を敵に翻弄され、手も足も出せないまま終わってしまうか―――或いはパイロットが音を上げる程のダメージを受けるか。
「あんなの不正ですよ! 機雷の投射モーションが明らかに不自然だったじゃないですか……っ!」
技術者としての観点があったのか、由希子が珍しく声を荒げる。
実際にその時気づいたのは当事者の涼くらいだが、ヘカトンケイル型は3機とも機雷投射の目立ったモーションはなかった。あの機雷は―――足元に突然現れたような。つまり、最初から仕掛けられていたような。
そうなれば、つまるところ全ては未来社がこれを想定したもの。相手の土俵で、相手のルールで戦っていることに他ならない。実況・解説の言葉を聞く限りでは、あるいはそのあたりまで伝わっていないのだろうか……完全に流す気でいるのだろう。
フランベルジュを相手とした対策といい、完全に嵌められた形になる。
だが。
「一旦始まっちまった以上、悔しいがアレを止めることは俺達にはできない。
これを打破できるのは、もう広瀬自身とフランベルジュしかいねえ。
あとは……あいつを信じてやれ」
この戦いに割り入って、止めることは許されない。
いくら非道な手段を用いようと、展開されているこの場が絶対。この場を落とせば全てがパアになってしまう。静かにこくりと頷き、きゅ、とナルミを優しく抱く由希子。しかし、否、だからこそ彼女は見えていなかった。
幼い子供にしては珍しく、静かに、神崎ナルミはその光景を、もっと言えばフランベルジュを見つめていた―――。
衝撃に揺らぐ、熱に炙られる。
揺らいだ隙に、三機同時に放たれるワイヤー。まるで絵でも描くかのような鮮やかな起動が、容易にフランベルジュを絡め取る。
「ぁぐ、ぐぅ……っ!」
放たれる電撃。熱だけなら機体で処理しきれる範囲だったが、電撃は防ぎようがない。パイロットに直接加わる苦痛、それは遂に広瀬涼に対し苦悶の声を上げさせるに至った。
それでも機体に目立った外傷がないあたり、フランベルジュの硬さが化け物染みているのは、周囲の人間も感じるだろう。だが、それでは無意味。それでは勝てない。
いくら機体が強かろうと、いくら力を持っていようと、相手と戦う土俵に立ててこそ。闘いの場にすら立てないのであれば、その力に意味はない。
都合の悪いことに、この戦いには時間制限がある。このまま翻弄され続ければ、いずれは時間が切れ、残存数の多い相手の勝利が決まってしまう。そうなれば、由希子は、ナルミは―――。
―――何のために。何のために、今この場に居るのか。
襲い掛かる理不尽から、人々を守るために、此処に居るのではないのか。
それを、こんな簡単に、覆されていいのか。
嫌だ―――そんなことは、絶対に。
「……ま、だ……!」
負けられない。意思を通し、貫くために……身体に鞭打ち、立ち上がる。何度も機体が揺れ、吹き飛ばされようと。立ち上がれなければ、大事な人を二度と救えない。
「フラン……ベルジュッッ!!」
再び電撃が浴びせられる。それが何だ。身体が軋むような痛み。それが何だ。今の広瀬涼には、それより辛い現実が立ちはだかっている。
「応えろ、フランベルジュ……! こうやって誰かが踏みにじられるのが、ぁ、ぐ、嫌、だから……! あの時、応えてくれたんじゃなかったのか……! お前に、意思があるのなら―――」
不審な動きに、取り囲む3機がそれぞれグレネードランチャーを構える。周囲の光景を、いやにゆっくりと感じる……今この瞬間しかない、そう五感が訴えかけてくるように。それを感じ、脚に力を込める。
広瀬涼にとって、訪れたであろう唯一無二の機会。
「『逆転』、させてみせろォォッ!!」
―――力強く、跳んだ。
『と……跳んだぁ!?』
その行為は、周囲を湧かせるに十分なもの。
一か所に釘付けにされ、集中攻撃を受けるばかりだった、初めて決闘審判に投入された機体が。既に大勢決し、観客も、実況解説も、企業側でさえ結末がある程度見えた、と思った矢先に。
フランベルジュは、自力で、跳んだ。
『今更足掻こうが!』
ヘカトンケイル型の一機が構えるレールガン。大型だがこの至近距離で外すことはまずない。ロックオンをし直し、構えたそれを放つ。
―――爆発。
ガギィン……!
襲い来る衝撃は、反動から来るものではなかった。数瞬遅れて気づく……己の機体は、肩口からごっそりと抉り抜かれていた。
「―――ブラスターファング……!」
フランベルジュの管制画面には、そう示されていた。
射出した右腕部付属のモジュールを引き戻す。接近戦に対応したアタッチメントと思われていたクローは、それ自体が有線式の射出兵器と化していた。
レールガンの弾丸、そしてその爆風を貫き、それでも勢いが衰えることなく、そのクローはヘカトンケイル型の一機をフレームごと引き裂いたのだ。フランベルジュの素体が頑強ならば、威力はその時点で保障されたようなもの。
「これは……」
着地した時には、まるで機体が広瀬涼を勝たせようとしているかのように、数多の情報が表示され、フランベルジュという存在を理解させようとする。
自発的な情報の開示、今までのフランベルジュの反応―――涼の漠然とした予測が、確信に変わった。
フランベルジュには意思がある。
その意志が今、広瀬涼という存在を認識し、この場を勝利で決めようとしている。
制限時間を確認。既に8分経過。既に残りは7分を切っている。
だが、それがどうした。
6分も要らない。
倒す。
やることは何も変わらない。今まで制限時間の半分、耐えてくれたフランベルジュに応える為にも―――倒す。倒して、勝つ!
「行くぞッ」
駆け出した。
加速で身体にかかる負荷など、最早意に介する必要などない。
前方の二機が一瞬面食らい、慌てて手持ちの火器を放つ。
フランベルジュは止まらない。
それでも食らいつく、二機がかりで包囲しながらの銃撃―――止まらない!
その動きに迷いはない。そもそも、広瀬涼は接近戦を仕掛けるために駆けだしたのではない。
仲間であるパーシィの機体、機能停止したそれの背後に回り込み、手を伸ばす。
トリガーを引くことで機能する、『精密機器による制御を必要としない』実体銃。ウェポンラックからひったくり構えたマシンガン、正面を旋回しようとした一機の足元を乱すかのように放つ。
広瀬涼をここまで追い込んだのは『複数機による連携』という前提。それが回避行動により、足並みが崩れた。それだけで十分。
思いきり踏みこみ、ブースター全開。立て直す前に、レーザー刃の発信器を腰から抜き放ち、展開―――斬り上げる!
ザシュ……!
切り抜け、とった背後にマシンガンの弾を惜しげもなく、バララララ、と叩き込み―――機能停止!
この間二分もない。鮮やかな攻めは、並の機体でも、常人でも達成しえない。
「おい、どういうことだ……?」
「流れ変わったな」
「何だこれ、広瀬涼って初心者じゃなかったのか!?」
今、この戦いを見ている誰もが、一つの先入観を捨てただろう。
決闘審判初心者。駆け出しの弁護士。―――その程度の言葉で広瀬涼を、フランベルジュを形容できようものか。
生半可なプロフェッショナルですら対処できない、三人がかりの数すら覆される。ここに立っている一機は、間違いない。如何なる相手にも屈しない、圧倒的な力であると。この戦いを見ている誰もが、その認識に確信を持った。
「じょ、冗談じゃねえ。こんなのどうすれば―――」
当然、未来社の代表の残った一人はその事実を認識させられ、狼狽する。
勝てるわけがない。ここまで圧倒的な力を見せつけられ、三人がかりで抑えつけることすらかなわなかった。あとは蹂躙されるだけ。打つ手は既に尽きている。
機体性能がいいだけだと思っていたあんな奴に、しかも女一人に負けるなど、絶対に許されない。
勝たなければならない。負けは許されない。弱さは罪。
―――そう歯噛みする男の前に、唐突に情報がコンソールに表示される。
「……!」
迷わず後退。それを追うように駆けだすフランベルジュ。
ばら撒くグレネード弾。あちこちで炸裂し、衝撃と爆風を場内に何度も焼き付ける。それをものともせず直進するフランベルジュ。
止まらない。分かっている。会場は勿論、対戦相手にも明白。だが、これでいい。
目論見はこの爆炎そのものにある。
周囲は爆炎と煙に包まれ、フランベルジュは真っ直ぐ直進してくる。否、そうせざるを得ない。フランベルジュは爆発と衝撃を避けて突進する。
視界の悪い中、それでもフランベルジュは残るヘカトンケイル級を捉え、剛腕が真っ直ぐ直進する……。
だが。
バヂィ―――! 弾ける電磁フィールド。
簡単な仕掛けだった。そもそも最初から、この会場には電磁機雷が仕掛けられていた。適切なタイミングで床を展開、表面に露出させれば、投射などせずとも相手を引っかけることができる。
この戦いは最初から出来レース、万に一つ失敗はない。トーマスとパーシィが一瞬で敗れたのも、涼が前半翻弄されきっていたのも、全ては予定通りだった。
「勝った……!」
口元を緩める男。炸裂する電磁フィールドの中心に追い込まれれば、最早フランベルジュといえど動ける要素はない―――
はず、だった。
「―――ぅう……!」
強烈な電磁フィールド。それは機体の強度に関係なくフランベルジュを襲う。ブースターが止まる、コンソールが滅茶苦茶になる。内部機器が次々と破壊されていく。
だが、この程度で負けられない。友を、その会社を、救うためには。
「動け……! フランッッベルジュゥゥ!!」
吼えた。
全力で吼えた。
その声に応えるように、点灯するはずのないアイカメラが、ヴン……と煌めく。
広瀬涼にとって、今のフランベルジュは、己の手も、足も同然。足に力を籠め、一歩を踏み出し、駆ける。
リンケージシステム。
それは、ただパイロットの動きと機体をシンクロさせるだけに留まらない。フランベルジュに宿る『意思』は、広瀬涼の『意思』を汲み取り、通じ合う。
精密機器が壊れようと、その『意思』は、機体の各所に伝わり、電子機器の信号がなかろうと、機体を動かす命令を各所に伝達させる。モニターが消えようと、フランベルジュの視界を感じ取ることで状況を把握することができる。
コンピュータの制御がなかろうと、『意思』があれば動く。意思を通じ合わせることで、己の身体と同様に機体を動かすことができる。それこそがリンケージシステム。精密機器を破壊する電磁フィールドなどで、止められるはずもなかった。
完全に勝利したと油断していた男。虚を突かれた今、逃れる術は残されていない。
右腕が灼熱に染まる。まるで陽光のようなオレンジの光、眩しい朝焼けのような光。集約されたエネルギー、それを拳に変えて討て……そんなフランベルジュの意思が感じられるように。
拳を振りかぶる。電子機器がなくても、『意思』で通じる必殺の一撃、その名は―――
「ファング! バイトッッ!!」
拳が牙となり、噛み砕く。
抉りこむように放たれ、フレームごと粉砕したその拳は、肩口を粉砕する余波で、衝撃に耐えられないフレームの破綻を引き起こす。おそらく、コクピットに直撃するコースならば命はなかっただろう。その腕も、脚も、本来の役割を果たせなくなり、ヘカトンケイル型は地面に倒れ伏す。
誰もが、予想しえないことだった。
見たこともない鮮やかな機体を駆った、公の戦闘すら初めての女性。開幕で仲間を失い、一方的に袋叩きにされていたにも関わらず。今、この場に立っているのは、彼女ただ一人。すぅ、と片腕を掲げ、天に向かって突き出し―――握る。
それは静まり返った場内に、たった一つの真実を悟らせる。
『き―――決まったァァァ!!
誰がこの結果を予想できようか! 絶体絶命に追い込まれた窮地から一転!
その鋼はあらゆる攻撃に耐え続け、抉りこむ一撃はまるで肉食獣の狩りのように獲物を仕留めた!
絶対者君臨! 広瀬涼、決闘審判の歴史に新たな一撃を刻もうというのか!
勝者はファルコーポレーション! 今回の訴訟を裁く権利はファルコーポレーションに与えられたァ!!』
場内が歓声に湧き上がった瞬間、実況のペラ回しが待ってましたとばかりに踊る。
この戦いにどんな手が回っていたか、どんな力がかかっていたか。そんなことは、仮に気づかれていたとしても、おそらくもう会場の人間の多くがどうでもいいと思っているだろう。
確かなことは一つだけ。その圧倒的な強さで、勝利をもぎ取ったこと。
「……!」
ベンチに居た由希子の表情が喜色に満ちる。
「……なんて出鱈目だよ」
表情を緩ませ、安堵の溜息をつく俊暁。
「お、おう勝ったのか嬢ちゃん!?」
「すげーな、ずっと終わったもんだと……ああ!?」
やや遅れてトーマスとパーシィの二人も、外部からの操作で開かれたコクピットから出て声をかける。……パーシィの方は自分の予備武器が使われていたことに驚いたようだが。
周囲の反応を見渡し、立ちこめる完全勝利の機運に。
「にひっ」
由希子の膝の上に収まっていたナルミは、屈託なく笑みを浮かべ。
―――コクピットを開いて顔を出した涼と、フランベルジュは、全くの同時にサムズアップを浮かべた。
が。
勝利者に対していの一番に待っていたモノは、与えられる余韻でも、事務的な事後処理でもなかった。
会場から格納庫に降り、床に立った彼女に待ち構えていたものは。
「広瀬さん今回の決闘審判について一言!」
「あのフランベルジュって何なんですか!?」
「未来社のヘカトンケイル型はやはり強かったですか?」
「スリーサイズ教えてください!」
「今回ご一緒だったトーマスさんとパーシィさんについて一言!」
「先日の他国の首相が先日エルヴィンで行った発言、あれは周辺国の感情を刺激するようなものだとは思いませんか?」
「そもそもあのフランベルジュをどう手に入れたんですか!?」
「ののしって下さい!」
言葉の波、フラッシュの波、マイクの波。まくしたてられるそれに圧倒され、詰め寄るそれは一体何十人集まったのか。言語すら統一されていない、各々の言語でインタビューを求める声が押し寄せる。
『決闘審判は初めて』の広瀬涼に対し、それはあまりにも強烈なうねり、大波。
対処法がないという意味では、先の決闘審判による戦いより遥かに強烈で大きな波に見えただろう。
「え、あ、あの……っ」
「あーはいはいストップストップ! 警察です!」
結局、一番近くに居た俊暁が見かねて止めにかかった時、思わず力が抜けてへたりこんでしまうくらいだった。
先の実況で肉食獣と喩えられていた凄まじき操縦者がこの始末である。
俊暁に同行していた由希子に支えられ退場する姿は、どちらかというと獲物に狙われた小動物のようだった。
……無論、インタビューは正式にする場があったのだが、我先にと言葉を貰おうとする報道陣のあまりの勢いを受けたせいで、初めての正式なインタビューの直前まで必死に気を落ち着かせようとしていた涼の姿があったとか。
Flamberge逆転凱歌 第3話 「フランベルジュ、リンケージ!」
つづく。
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