植物工場58%赤字 ノウハウ蓄積改善の鍵 施設園芸協会調査
2018年04月21日
日本施設園芸協会の調査で、全国の大規模施設園芸と植物工場の事業者の45%が経営赤字となっていることが分かった。蛍光灯などで作物を育てる植物工場だけを見ると赤字は58%に上り、経営の難しさが浮き彫りになった。ただ、稼働年数が長いほど黒字の割合が増えることから、同協会は栽培や労務管理のノウハウの蓄積が経営改善の鍵とみる。
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職場改善へ「前進」 休息の場確保、営業時間調査 「働き方プロジェクト」 JAぎふ
岐阜県のJAぎふが昨年度立ち上げた「働き方改善プロジェクト」が、働きやすい職場づくりに成果を上げ始めた。プロジェクトが職務上の問題点や改善策を検討して役員に提案し、役員がJAとして取り組むか検討して方針を示す流れを構築。職員の休息スペース確保や、店舗の営業時間の調査開始など、具体的な動きにつながっている。
JAは昨年5月、職員140人が参画する同プロジェクトを設置。支店次席管理者、窓口担当、渉外担当、営農経済担当など七つの分科会で、課題の洗い出しやその改善方法を検討した。昨年12月には、有給休暇の取得方法の改善や、残業を極力なくす職場環境づくりのための職務職制の変更、新たな担当の設置などを役員に答申した。
これを受け、役員らは実施の可否や実施に向けた詳細を検討し、改善策などを回答。担当課で整備を進める事案や、実施に向けて早期に動きだす案件などに分けて回答を示した。
プロジェクトを通じ、本店内で職員の休息の場を確保するためのレイアウト変更が行われ、金融店舗の営業時間の在り方を検討するための利用者数の調査などが動き始めている。JAの櫻井宏組合長は「仕事とプライベート、両方が充実しているJAぎふとなれるよう、改善を進めていく」と意欲を示す。
プロジェクトは今後も、実施状況の定期的な報告を求めていく他、改善策の実施により発生する課題への対処方法などを検討する。役員と意識を共有しながら、より効果の上がる方策をさらに考えていく方針だ。
2018年04月17日
日米首脳会談 2国間協定を阻止せよ
日米首脳会談が終了した。焦点の通商問題は、貿易協定を巡る両国の立場の違いが埋まらない中、トランプ大統領が重視する貿易赤字削減に向け、新たな協議の枠組みを作ることで合意した。これが実質の2国間交渉と化し、日米自由貿易協定(FTA)の呼び水となることを危惧する。農業を“身売り”してはならない。貿易収支の改善にもつながらない。
2日間の首脳会談では、北朝鮮に対し非核化への具体的な行動を求めることで一致し、拉致被害者の救出にトランプ大統領が協力を約束した。安倍晋三首相にとっては、急展開する国際情勢の中で日本は取り残されていないことを示し、やれやれという思いだろう。だが、解決への道筋がついたわけではない。日米結束の政治的な演出を優先するあまり通商問題で譲歩しなかったか、舞台裏を含めて会談結果を注視する必要がある。
通商問題では、697億ドル(約7兆5000億円、2017年)に上る対日貿易赤字の是正に執念を燃やすトランプ大統領の姿勢が目立った。11月の中間選挙を控え、早期の目に見える成果づくりへ政権が前のめりになっている。この間、対日貿易戦略は2国間協定と環太平洋連携協定(TPP)復帰の二つの選択肢で揺れ動いているかに見えたが今回、大統領の意思が明確に示された。安倍首相に対して「2国間貿易協定の方が望ましい」と、直接に表明した政治的な意味は重い。
首相は会見で「米国が2国間交渉に関心を有していることは承知しているが、わが国はTPPが日米両国にとって最善と考えている」と述べた。要求に追随しなかったものの、単に日本の立ち位置を語ったようにも見える。地の利もあろうが、政治的意思の表明という点ではトランプ大統領の迫力に及ばない。
新たな協議は、茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表が責任者になる。日米経済対話に比べ、テーマを貿易分野に絞り込んで早期の解決を目指すと見られる。TPP離脱で得られるはずの「果実」を失った米農業団体が、日本市場の開放要求を強めている。トランプ大統領の支持母体だ。農業が標的にされる恐れが強い。
しかし、農業の市場開放が巨額の貿易赤字を解消する材料にならないことは明白だ。米国も交渉に参加した上で合意したTPP協定は自由化純度が極めて高く、日本農業への重大な脅威である。政治的にも収まっていない。その水準を超える譲歩をのめば、農業者への背信行為だ。所管する農水省がこの協議に権限を持って関与できる国内体制を作らなければならない。
気掛かりなのは、安倍政権が森友・加計問題や公文書隠蔽、財務省次官のセクハラ問題などで手いっぱいとなり、対米協議への備えがおろそかにならないかという点だ。総力を挙げ、日米FTA交渉への変質を止めなければならない。
2018年04月20日
TPP以上拒否 焦点 与党冷静、野党は批判 日米新協議
日米首脳会談で、日米貿易を巡る新たな協議の開始が決まり、与党は「想定内」と比較的冷静に受け止め、環太平洋連携協定(TPP)を超える譲歩は受け入れない姿勢を改めて強調した。一方、野党は「米側の要求をのみ、事実上の2国間協定を受け入れた」と一斉に批判。国会で厳しく追及する方針だ。
今後の日米間の貿易の在り方について、日本はTPP、米国は2国間協定をそれぞれ求め、両者の意見に隔たりが出ている。「想定の範囲内だ」。自民党の議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」会長の江藤拓氏(衆・宮崎)は冷静に受け止めている。今回の新協議は日本側が提案し、その通り設置が決まった。
一方、「(2国間交渉に)一歩踏み出したとも取れる」と指摘する。「(国内で)TPPを受け入れるのにどれだけ苦労したか。TPPがギリギリの線。それ以上は絶対あり得ない。体を張って止める」と語気を強めた。
日本は米国にTPP復帰を促すため、発効を急ぎたい考え。このため今国会に提出した協定承認案と関連法案の早期成立を目指している。
公明党のTPP等総合対策本部長を務める石田祝稔政調会長は「(日本としては)国会に提案されているTPP11の審議を粛々と進めていく」と強調。「(米国が)現在のTPPの枠組みに戻ってくるのはいいが、TPPを超える2国間交渉を考えることは絶対にできない」とけん制した。
一方、立憲民主党の佐々木隆博副代表は「『米国にTPPに復帰してもらう』などと強気で言いながら、結果的には米国に押し込まれた。実質的に自由貿易協定(FTA)交渉に踏み出した」と批判。「協議の場ができた以上、米国にとっての成果を求められる。国益に反した方向になるのは明確」と国会で厳しく追及する考えを示した。
「通商分野は厳しい結果だ」。希望の党の玉木雄一郎代表は、ツイッターでそう強調した。さらに「安倍(晋三)総理は面前でトランプ大統領からTPPには戻らないと明言され、さらに事実上、2国間協定に向けた協議を約束させられ、それなのに(米国が日本に課した)鉄鋼・アルミニウムの輸入制限(からの除外)は勝ち取れなかった」と批判。米側が市場開放圧力を強めてくることを念頭に「牛肉と自動車は要注意だ」と指摘した。
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日米、貿易新協議へ 「TPP」「2国間」溝鮮明
2018年04月20日
[活写] 実りの源 放水開始
岩手県奥州市の胆沢地区にある国内最大級の円筒分水工で21日、田植え前の水田に向けた放水が始まった。
円筒分水工は、水を複数の用水路に公平に配分する農業水利施設で、同地区のものは直径31・5メートルのコンクリート製。1957年に国営事業で設けられ、水の分配を巡る争いの解消に役立った。95年に一回り大きく改修され、今も稼働する。
約10キロ上流の胆沢ダムから届く毎秒約16トンの水を中央部から勢いよくあふれさせ、2本の主要な用水路に分配。胆沢平野の水田約7400ヘクタールを潤す。
施設を管理する胆沢平野土地改良区水利整備課長の佐藤正喜さん(51)は「豊かな実りの秋が迎えられるよう、安定的に水を供給したい」と話す。放水は9月10日まで続く。(富永健太郎)
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https://www.youtube.com/watch?v=FSFBF-JR9KM
2018年04月22日
歴史は50年周期で大きく変わる
歴史は50年周期で大きく変わる。明治維新100年に当たる半世紀前、1968年という年もそうだった▼歴史が動き今につながる出来事が相次ぐ。ベトナム反戦運動が高揚し、フランスの「パリ五月革命」では学生と労働者がスクラムを組む。米国の公民権運動の中で「私には夢がある」と未来を語ったキング牧師暗殺。社会主義圏でもソ連(当時)による「プラハの春」の抑圧や中国文化大革命など、その後に禍根を残す事件も相次ぐ▼国内でも反戦・平和を掲げたべ平連の活動や大学紛争、農民たちが立ち上がった三里塚闘争、反公害の水俣病告発など、政府や大企業の在り方を問う草の根運動が広がった。以前見た国立歴史民俗博物館の特別展「1968年」から学ぶ▼週末、東京・渋谷で加藤登紀子さんのコンサート「花はどこへ行った」。「パリ五月革命」から50年の世界変化と自身の半生を歌でつづる。加藤さんは60年代当時、東大生から歌手へ。反戦・平和への声を上げた。タイトルは米国の代表的な反戦歌。〈花はどこへ行った 少女がつんだ〉〈男はどこへ行った 兵士として戦場へ〉。最後に〈いつになったらわかるのだろう〉▼特別展の副題は「無数の問いの噴出の時代」。世界を覆う無益な争いは、いつになったら終わるのか。
2018年04月19日
経済の新着記事
4年後の金“正夢”に 宮城産米、県が寄贈 フィギュア羽生結弦選手
韓国・平昌冬季五輪のフィギュアスケート男子で2連覇を達成した羽生結弦選手(ANA)は22日、出身地の仙台市で開かれた凱旋(がいせん)祝賀パレードで、宮城県産米の目録を受け取った。県の村井嘉浩知事が4年後の金メダル獲得を「正夢」にしたいとの祈りを込め、18年秋に本格デビューする水稲新品種「だて正夢」を含む4年分(約240キロ)を贈った。
2018年04月23日
植物工場58%赤字 ノウハウ蓄積改善の鍵 施設園芸協会調査
日本施設園芸協会の調査で、全国の大規模施設園芸と植物工場の事業者の45%が経営赤字となっていることが分かった。蛍光灯などで作物を育てる植物工場だけを見ると赤字は58%に上り、経営の難しさが浮き彫りになった。ただ、稼働年数が長いほど黒字の割合が増えることから、同協会は栽培や労務管理のノウハウの蓄積が経営改善の鍵とみる。
2018年04月21日
干しシイ 燃費半減、うま味増 低温乾燥新手法 鳥取の組合 特許出願
鳥取市の日本きのこセンターと菌興椎茸(しいたけ)協同組合は19日、低温乾燥による干しシイタケの新しい製造方法を開発し、特許を出願したと発表した。作業の省力化に加え、乾燥に必要な燃料費を最大で7割削減する。調理面では、だしが15分程度で取れるため、使いやすさも向上する。生産コスト低減と需要拡大を実現し、産地振興につなげる。林野庁によると干しシイタケの生産量は、1984年の1万6000トンから2016年には2700トン程度まで減少。共働き世帯の増加による食の簡便化や、輸入品の増加などが背景にある。
5月ごろにほだ木で自然乾燥することで風味が特段に優れる「木干し状態のシイタケ」の風味を目指して開発した。
従来は一つ一つ柄を下に向けて重ならないよう並べ、45度から55度まで徐々に温度を上げて、25時間ほどで乾燥させる。新しい製造方法は、シイタケを山なりに重ね、指定した空気循環操作で22~28度で15~25時間乾燥後に、55度まで上げてさらに10時間乾燥させて仕上げる。乾燥時間は延びるが、重ならないように並べる作業時間が短縮されるほか、低温乾燥により灯油の使用量は従来より5~7割減らせた。
調理面では、沸騰寸前の湯に干しシイタケを入れて弱火で10~15分煮ることでだしが取れる。従来品では水戻しに5時間以上かかる。苦味や雑味が少なく、うま味成分のグアニル酸は従来の1・5倍になることも確認した。
同組合の下田秀一組合長は「今後を占う革新的技術だ。業界の魅力を高め、生産者の意欲向上や新規就農者の増加に加え、消費量も増やしていきたい」と意気込む。
2018年04月20日
毎月19日 「いいきゅうりの日」 主産4県がPR
キュウリ主産県のJAグループは19日、首都圏に展開するスーパー、澤光青果の23店舗で一斉に行う試食宣伝をスタートさせた。毎月19日と定めた「いいきゅうりの日」に、主産地が仕掛ける販促活動の第1弾。潤沢な入荷で相場が落ち込む中、産地関係者が店頭でみずみずしさや食感の良さをアピールし、消費拡大を呼び掛けた。
この日は群馬、埼玉、千葉、宮崎の4県のJAグループがキュウリを売り込んだ。
神奈川県川崎市の澤光青果川崎店は、群馬県のJA邑楽館林のキュウリを4本99円(税別)で特売した。ご当地アイドル「Menkoi(めんこい)ガールズ」のメンバーも駆け付け、塩昆布あえの試食を振る舞った。
キュウリを買い求めた横浜市の金子禎子さん(72)は「暑くなり、食べたくなった。ぬか漬けやサラダなど、いろんな食べ方ができるのが便利」と笑顔を見せた。
4月中旬の日農平均価格(19日まで、大手7卸のデータを集計)は1キロ182円で、前年を3割下回る。好天続きで生育が前進し、JA全農ぐんまの1日当たり出荷量は200トンと例年より1割多い。担当者は「イベントを通じて消費を盛り上げたい」と意気込む。
「いいきゅうりの日」は、4月19日の「良いキュウリの日」にちなむ。卸最大手の東京青果が事務局となり、毎月19日に主産JAが首都圏で販促活動を行う予定だ。
2018年04月20日
静岡茶初取引 平均単価3715円
静岡茶の2018年産の初取引が18日、静岡市の静岡茶市場で行われた。前年の約6倍に上る1万1900キロが上場された。品質は良好だったものの、上場数量増や新茶商戦がまだ高まっていないことなどから、1キロ平均単価は3715円と前年を3548円下回った。
最高値は、JA富士宮が出品した「さえみどり」の手もみ茶で、史上最高値が付いた昨年をさらに1万円上回る1キロ109万円で落札された。
今年は春先の天候が良く生育が前進。1957年に同市場で始まった初取引の中で4番目に早い開催となった。同日は210口の取引が成立した。
同市場の内田行俊社長は「今年は質量共に期待できる。生産者は安心・安全で良質な茶の生産を、茶商は品質に応じた価格での購入をお願いしたい」と呼び掛けた。
2018年04月19日
ブランド保護 JA率先 団体商標 本物の証し偽物に待った
農産物の差別化や知的財産の保護につなげようと、JAグループで地域団体商標登録をする動きが広がっている。福島県JA会津よつばは、アスパラガスを登録し、ブランド化を推進。北海道JA今金町は、粗悪品が同JAブランドとして出回るのを防ぐためにジャガイモを登録。類似品と差別化し権利を守るだけでなく、産地に誇りが生まれ、市場の信頼度が上がるなどの相乗効果も生まれている。(齋藤花)
箱の悪用防ぐ アスパラガス 福島・JA会津よつば
福島県のJA会津よつばは会津地方南部の3町で生産する「会津田島アスパラ」の差別化を図ろうと、地域団体商標に2017年2月に出願し、7月に登録が実現した。
従来の紫、緑、白色のアスパラガスに加え、同JAが開発し紫アスパラを遮光生産して薄付きピンク色に仕立てる「桜アスパラ」も加え、「会津田島アスパラ」として春限定で直売所や町内の飲食店でPRする。
「会津田島アスパラ」の登録は、同JAのブランド「南郷トマト」がきっかけだ。同JAの合併前、旧JA会津みなみは07年に南郷トマトを地域商標登録した。他産地が出荷箱を再利用し、「南郷トマト」として出荷することが数回起きたことがきっかけだ。
商標登録は偽物商品の発生防止に成果を上げ、ブランドの認知度も向上。トマトの年間売り上げは10億円を超える産地に成長した。
同JA田島営農経済センターの佐藤公生センター次長は「ブランド保護と顧客へのPR効果をトマトで経験しており、登録にちゅうちょはなかった」と強調する。
登録には3年を掛けて特許庁や県の知財アドバイザーとやりとりをし、周知度合いを実績として証明するため、メディアに取り上げられた件数や内容を明示した。会津田島アスパラガス部会長を務める湯田重利さん(70)は「ブランド化で、部会にプライドと責任が芽生えた」と胸を張る。
周知に力入れ ジャガイモ 北海道・JA今金町
北海道のJA今金町も、ジャガイモの「今金男しゃく」を今年3月末に登録した。今金町で栽培するでんぷん含有量13・5%の高糖度のジャガイモだ。
同JAは05年に今金男しゃくのロゴを段ボール箱や商品包装に使ってきたが、同じ名称を使った規格外品が市場やインターネットで出回り、消費者から「欠陥品を得た」などと苦情が寄せられた。
そこで、偽物を排除するために地域団体商標に出願。登録の要件を満たすために物産展への出品や車両広告などで周知性を高める工夫もした。
同JAは「今後は、ポテトチップスなどの加工品にも地域団体商標マークを付け、ブランド化のために有効活用する」と計画する。
全部で639件 JAグループで 3割超を登録
特許庁によると地域団体商標登録件数は3月30日現在で639件。JA全中によると、JAグループの登録件数は183件で全体の3割以上を占める。JAグループは第27回JA全国大会で、農業者の所得増大に向けた対策の一つとして、地域団体商標制度の活用に取り組むことを決議している。
JA全中はメリットについて「価格の上昇や売り上げの増加、品質管理の徹底、地域の知名度向上が期待できる。各JAに取得を進めてほしい」(輸出・知財農業推進室)と強調する。
特許庁地域ブランド推進室は「農産物や加工品は、商標登録することで市場での信用や競争力が上がる」と指摘。生産者の組織力も向上し、品質向上や安定につながると利点を強調している。
<ことば> 地域団体商標
地域名と商品名を組み合わせた地域ブランドを保護することを目的とした商標制度で、2006年に施行された。出願はJAなど地域に根差した団体に限る。権利を侵害した場合は10年以下の懲役か1000万円以下の罰金となる。損害賠償請求も可能だ。地理的表示(GI)保護制度は国が監視、取り締まるのに対し、地域団体商標では、自己で監視、権利を行使する。両者を組み合わせて利用することもできる。
2018年04月19日
[活写] 咲かせてみせましょもう “一花”
熊本県宇城市の宮川洋蘭が作る、規格外のランの花を使ったボトルフラワーが人気だ。デンファレやカトレアを乾かしてガラス容器に密封し5年以上、色が保たれるという。
同社は約300種類のランを栽培し、年間およそ20万鉢を出荷する。形が出荷に向かず廃棄していた花を生かそうと、水分が多いランの花を1週間ほどかけて乾かす方法を考案。「森のグラスブーケ」と名付け2013年に売り出した。製作担当の小田美佐登さん(37)は「乾かした花は破けやすく、丁寧に作業している」と話す。
贈り物向けに人気を集め、インターネットなどを通して年間約3万個を販売。1個1500円(税別)から。専務の宮川将人さん(39)は「生花を持ち込めない病院の場合でもお見舞いに役立っている。多くの人に華やぐ気持ちを味わってほしい」と話す。(木村泰之)
2018年04月18日
米国向け牛肉輸出200トン超 低関税枠 早くも突破 4月上旬
2018年の米国向け牛肉輸出量が、4月上旬時点で、日本に設定された低関税枠の200トンを超えたことが17日、米国税関国境保護局のまとめで分かった。今後は12月末まで高関税が課せられる。6月中旬に達成した昨年を上回る異例の早さだ。輸出業者は「今後ペースは若干鈍るが依然引き合いが強く、通年で販売が拡大する」とみる。
2018年04月18日
食品ロス推計646万トン 15年度外食など事業系増える
農水省と環境省は17日、食べられるにもかかわらず捨てられている「食品ロス」が2015年度で646万トンに上るとの推計値を発表した。飢餓に苦しむ人に向けた世界の食糧援助量をはるかに上回る量だ。推計値を公表し始めた12年度以降で最も多く、14年度に比べて25万トン増えた。農水省は「外食産業の市場規模が拡大し、それに伴ってロスも増えている。外食での食べ残しなどの対策が重要になっている」と分析する。
646万トンのうち、外食産業や食品製造業など事業系の食品ロスは推計357万トンと55%を占めた。残り45%は家庭系。事業系の食品ロス量は、14年度に比べて推計18万トン増えた。内訳は、食品製造業が39%、外食産業37%、食品小売業19%、食品卸売業5%だった。
同省は、食品製造業での食品ロス対策は一定の成果を上げているとしており、今後は“川下”である外食産業やスーパーなど小売店で食品ロスを減らすことが課題となる。外食店では食べ切りを促すとともに、食べ残した料理は自己責任で持ち帰ってもらうなどの対策を広げていく考え。小売店では手前から商品を取る、見切り品を買うなどを消費者に推奨する。
農水省は「消費者を巻き込んで、いかに対策に取り組むことができるか。それが食品ロスを減らす鍵になる」とみる。
同日は、食品ロス削減に向けた新たな啓発資材も発表した。
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食品ロス646万トン もったいない どう共有?
2018年04月18日
食品ロス646万トン もったいない どう共有?
食品ロス対策か、食品衛生を巡るトラブル回避か──。飲食店で食べ残した料理を客が持ち帰る運動が、少しずつ広がってきた。ただ、食中毒の恐れから「リスクが大きい」と敬遠する店も多い。農水省の17日の発表では、食品ロスは年間646万トンにも上る。政府や自治体は、持ち帰りに対し、自己責任を前提に進めていくことを呼び掛ける。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
専用容器を普及 残したらお持ち帰り
横浜市のイタリア料理店「Pizzeria Passo(ピッツェリアパッソ)」。歓迎会で同店を訪れた近隣の会社員、吉村浩志さん(27)が笑顔で店から渡された「シェアバッグ」にピザを詰めて持ち帰った。同店はシェアバッグを紹介し、食べ残した料理を持って帰ってもらうよう客に呼び掛ける。
山口征二マネジャーによると特に団体客から好評で、食べ残しは半分に激減した。「パッケージもかわいく、喜んで持ち帰ってもらっている」と手応えを話す。
同市では、「食べ残しをする人が多く、作ったのにもったいない」という飲食店の声を受け、市と飲食店予約・グルメ情報サイトの「ホットペッパーグルメ」が協力。約100店舗の飲食店が中心となって、シェアバッグの普及を進める。持ち帰り用の紙箱と紙袋を配るキャンペーンを4月末まで開く。同店はキャンペーン終了後も続ける意向だ。
長野県は食品ロスの削減を目指し、飲食店や宿泊事業者の協力を得て食べ残しを減らす運動を展開する。
運動に呼応し、JA佐久浅間の多目的ホール「べルウィンこもろ」は2年前から、宴会時などに料理を持ち帰ることができる容器を準備している。当初、従業員が詰めていたが保健所の指導で、現在は客自身が詰めるように変更した。生ものは避けるなどの注意点も説明する。
「お客さんは、当たり前のように喜んで持ち帰ってくれるようになった。注意点をしっかり伝えれば、問題はない」と、宮下富雄支配人は実感する。容器代は店側の負担だが、大量発注しており大きな負担ではないという。
怖い食中毒 飲食店も客も… 広がらぬ“賛同”
客が、食べ残した料理を詰めて持ち帰るための袋や容器は「ドギーバッグ」と定義される。海外で広がり、客が恥ずかしくないよう「犬に食べさせる」名目で持ち帰るのが語源という。
ドギーバッグは、日本でも普及の機運が芽生える。消費者庁、農水省、環境省、厚生労働省は昨年5月、食べ残し対策への留意事項を発表。食べ切りを進めるとともに、料理の持ち帰りは自己責任の範囲で行うよう呼び掛けた。大津市など、積極的に取り組む自治体も出ており、外食チェーンにも広がる。
しかし、「リスクが大きい」と持ち帰り推奨をちゅうちょする飲食店も少なくない。中国地方で農家レストランを経営する女性は「自己判断といっても、万が一、食中毒になればイメージが悪くなる。農家が小規模零細でやっている店でトラブルが起きれば、経営できなくなる」と悩む。食品ロスは減らしたいが、持ち帰りを推奨する考えはないという。
JA宮崎中央会は全国のJAに先駆け2010年ごろ、宴会などで発生する大量の食べ残しを見かねた職員が呼び掛けて、持ち帰り運動を始めた。宮崎市内の飲食店にも賛同の輪を広げたものの、衛生面に不安を訴える飲食店も多いことに加え消費者の理解も進まず、なかなか広がらなかったという。
機運醸成こそ
研究者や飲食店などでつくるドギーバッグ普及委員会の小林富雄理事長(愛知工業大学教授)は「持ち帰りは環境対策だけでなく、売り手と買い手のコミュニケーションを育み、食文化の発展につながる」と意義を強調する。
ただトラブルが起きた場合の対処や、冷めた料理で味の評判を落とすなど懸念も多い。小林理事長は「食べるかの判断は自己責任。“もったいない”を皆で共有し、社会的な機運を高めていくことが大切だ」と指摘する。
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食品ロス推計646万トン 15年度外食など事業系増える
2018年04月18日