日本人の3人に1人が花粉症と言われています。
その内108人にアンケートを取ったところ、花粉症の時期に「口臭」が悪化すると答えた人が72%に至ったとのデータがあります(厚生労働省/平成22年)。
なぜ花粉症の時期に「口臭」が強くなるのでしょうか?
花粉口臭という言葉があります。
おそらく、以下の5つの原因が関係していると思われます。
花粉症の場合、鼻詰まりや鼻水で、鼻で呼吸ができなくなり、口で呼吸することが多くなります。
口呼吸では唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥します。
唾液には抗菌・洗浄・円滑作用などがあり、分泌量が減ると口腔内が乾燥し、細菌が繁殖しやすい状態になります。
それが虫歯、歯周病、口臭の原因となります。
抗ヒスタミン薬には「口渇」、つまり口が乾くという副作用が出ます。
特に第1世代抗ヒスタミン薬ではその副作用が顕著です。
第1世代抗ヒスタミン薬を使っていて口の中が乾くという方は、第2世代抗ヒスタミン薬に切り替えると口渇が治まるかもしれません。
実際、第2世代抗ヒスタミン薬は口渇をはじめ、眠気など、第1世代抗ヒスタミン薬の副作用の多くが軽減されています。
自律神経というものがあります。
自律神経とは、意思に関わらず常に自動的に働いている神経で、覚醒・緊張時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」があります。
口呼吸をすると交感神経が優位になり、唾液の分泌が減少します。
これももとをただせば花粉症が原因と言えます。
鼻水が多く出て、鼻の外に流れるだけでなく、喉に流れ出ることを「後鼻漏(こうびろう)」といいます。
これが口臭の原因になります。
後鼻漏になると鼻が詰まるので、睡眠障害を起こしたり、胃が気持ち悪くなる、味覚の異常、なども現れます。
気管に入ると咳も出、ひどくなると痰がでます。
痰は細菌を多量に含むため、口臭につながります。
後鼻漏に咳止め薬は効果がなく、むしろ痰が溜まることも多いので、安易に咳止め薬で治そうというのは少し待ってください。
副鼻腔炎(ふくびこうえん)とは蓄膿症(ちくのうしょう)ともいわれ、鼻の付け根の両脇にある副鼻腔に膿が溜まる病気です。
副鼻腔炎になると鼻の付け根両脇が痛くなります。副鼻腔炎かどうか判断する方法としては、指で鼻の付け根部分を押えて痛みがあるかどうかです。
痛みがあれば、副鼻腔炎の可能性があります。
副鼻腔炎になると、膿の臭いが息に混ざって、口臭が強く出ます。
口臭は自分ではわからないことが多いです。
簡易口臭計測器が販売されているので、それを利用するのもいいでしょう。
タニタのブレスチェッカーが安価で、6段階の口臭の度合いを調べられる製品となっています。
口臭が強い場合は、歯周病と虫歯を疑わなければなりません。
歯周病菌の作るガスが最も強い臭いを放つと言われています。
口臭のレベルが強いなら、歯科・口腔外科で検査をしてみてください。
歯周病ではプラーク(歯垢。歯周病や虫歯の原因となる細菌)が、食べ物の残りかすや、糖分などを栄養源として急速に増え、放置しておくと歯石となり、歯槽膿漏や歯肉炎など歯周病の原因にもなります。
プラークが蓄積すると「歯周ポケット」を形成します。
プラークを除去するには、毎日の歯磨きを丁寧にすることが重要です。
特に歯と歯茎の境目の部分をよく磨いてください。
舌苔(ぜったい)とは舌のコケのことです。
舌苔ケア用の器具で1日1度舌苔を掃除しましょう。
ただし、舌はデリケートなものなので、歯磨き粉を使ったり、過度に磨いたりすると逆効果になるので注意してください。
一日で絶対すべてをそぎ落とそうとは考えずに、毎日少しずつ落としていくつもりでケアすることが重要です。
舌の表面を傷つけないように、柔らかいナイロン繊維でできた舌ブラシが良いようです。
Amazonなどで300円台から販売されています。
口臭の最大の原因が、唾液が十分出ないことです。
口呼吸をしてしまうことは唾液減少につながります。
そして、口呼吸の原因は鼻詰まりなどの花粉症の症状であることがあります。
花粉症の鼻詰まりの場合、まず「抗アレルギー薬」「抗ヒスタミン薬」「抗ロイコトリエン薬」の服用です。
「抗アレルギー薬」は「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」ともいい、肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギー物質が放出されるのを抑制する薬です。
「抗ヒスタミン薬」は、放出されてしまったヒスタミンが受容体に結合するのを阻害するお薬です。
「抗ロイコトリエン薬」は、鼻詰まりに最も効果のあるお薬です。
抗ヒスタミン薬はアレルギー症状全般を押えますが、鼻詰まり解消作用は比較的弱いです。
抗ロイコトリエン薬は鼻詰まり解消を最も得意としています。
抗ヒスタミン薬と併用できますので、相互に苦手分野を相互補完するよう服薬するとよいでしょう。
抗ロイコトリエン薬には「モンテルカスト(キプレス/シングレア)」「プランルカスト(オノン)」というものがあり治療成績もよいのですが、処方薬のみで市販薬はありません。
また、鼻腔スプレーも有効ですが、血管収縮剤系のスプレーは使用し続けると効果が落ち、リバウンドもあるため、短期間の使用にとどめておく必要があります。
ステロイドの点鼻薬は手軽で安全に使用できますのでオススメです。
レーザー照射で鼻粘膜を焼く治療法です。
物理的に鼻腔を広げることによって鼻詰まりを解消させます。
また、鼻粘膜を硬く変性させることによって花粉を浸透しにくくさせ、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりを軽減する効果もあります。
痛みはほとんどありません。(麻酔もスプレーなどで、注射は使いません)。
費用も手術代のみなら9,000円~10,000円程度、アレルギー検査や術後の投薬等を入れても15,000円から20,000円弱で行えます。
効果の持続は1~3年くらいですが、効果がなくなったら再度レーザー照射を受けることができます。
だだし、4回を超えるほど回数を重ねると問題が起こってくることもあります。
医師と状態を見ながら追加手術するかどうか決めていくことになります。
口臭予防には緑茶や烏龍茶を飲むとよいとされています。
お茶に含まれるカテキン・フラボノイドには消臭効果があります。
また、食後に飲んだ場合、うがいをするのに近い効果が得られます。
しかし、日常的にドライマウスになっている人は、かえって口腔乾燥を増す場合がありますので注意してください。
お茶を飲んだ後、ガムをかむなどして唾液が出やすい状態にするのも良いです。
ガムを噛むことにより、唾液の分泌が促されます。
また、臭いを消す効果もあります。
ただ、シュガー入りのガムは口腔内を酸性化し、口臭菌が活性化しますので、噛むならノンシュガーのガムにしてください。
キシリトールガムは、歯の再石灰化を促す効果もありお勧めです。
口の渇きを感じたらこまめに水分補給し、口腔内の潤いを保つようにしましょう。
保湿成分配合のマウススプレーなども効果的です。
舌を口の中でぐるぐる動かす。
これだけですが頻繁にやっていると常に唾液が出ている状態になります。
花粉症で口臭がでるのは、鼻詰まりによるところが大きいです。
鼻詰まりは口呼吸につながり、口呼吸をすると唾液分泌が減り、唾液分泌が減ると口内の雑菌が繁殖します。
また、鼻水の後鼻漏も口臭を産む原因です。
いろいろな口臭予防テクニックはありますが、花粉症の場合、「抗ヒスタミン薬」と「抗ロイコトリエン薬」が鼻水・鼻詰まりを緩和するのに有効です。
その上で、口腔エチケットを守り、快適な生活を送りたいものです。