最近「会社がリモートワークOKになった!」という話を、ニュースで少しずつ聞くようになりました。
今まで4社に勤め、内3社はリモートワークOKでした。しかし、私の仕事内容がUX設計、かつ遠隔で仕事をすると非常にやりにくい部分の設計をしていたので、基本的には会社に出社していました。(同僚と話すのが好きということもありましたが)
前職は日本以外の3か国ほどの同僚たちと仕事をする環境でした。リモートワークもOKです。ただし
- 「家庭の事情で家で仕事をする」
- 「家族が病気になったので、看病しながら仕事する」
- 「電車が遅延していて、落ち着くまで家で仕事する」
- 「ストライキで出勤できないので家で仕事します」(国外では時々デモやストライキがあります)
などの理由で家で自宅作業することはあっても、「週○回自宅勤務の日を作ります」という仕事の仕方はしていませんでした。
現在の会社では、メンバーがそれぞれ日本、中国、ニュージーランド、ドイツ(私)に住んでいる都合上、オフィスはありますが基本全員がリモートワークです。
前職でリモートワークで成功した部分、失敗した部分があったので、それを踏まえて現在のメンバーに色々教えていただいています。
リモートワークは本当に効率的なのか?
4年ほど前、有名なリモートワークを導入するための本「強いチームはオフィスを捨てる」を読みました。
まだリモートワークを導入している会社が少なかったので新鮮な気持ちで読見ました。ですが、実際にリモートワークを体験した後で考え直すと、「本当にそうなのか?」と、以前と比べてリモートワークに対しての考え方が少し変わりました。
リモートワークOKの会社で働くのは3社目なのですが、「果たしてリモートワークが本当に効率的なのか?」ということを、時々考えるようになりました。
遠隔になればなるほど、高密度なコミュニケーションが必要
遠隔で各国の人と仕事をするとき、いつも思っている事があります。遠隔で仕事すればするほど、密なコミュニケーションが必要です。
これは、上記で紹介した「強いチームはオフィスを捨てる」と言う本にも書かれています。
現在の会社に入る前に「リモートワークがうまく回るようなアイディアはありますか?」と聞いて色々教えていただいたので、以下に記載します。
感情を大げさに表現する
特に褒めたり、チームで良い事があった時は、大げさに表現するのが良いと聞きました。遠隔で常に一緒にいるわけでは無いので、そのコミュニケーションコストを考慮し、相手がどう思ってるのかを大げさに表現するぐらいが遠隔だとちょうど良いのだそうです。
個人のチャットルームを使う
最近これがうまいこと行ってる!と思っているのは、仕事で使っているslack上に個人のチャンネルを持つことです。私はmeyco’s roomという名前でチャンネルを持っています:) ここは、ひたすら私のメモや思ったことを呟いている場所で、同僚が自由にそれに対してコメントできます。また、急ぎの用事がある場合、どのチャンネルに書けば良いかわからないけど、とりあえず私に聞きたいことがある場合も、私のチャンネルに書き込みができます。
このチャンネルのよいところは、以下になります
- 個人が何を考えて仕事してるのか知ることができる
- 何に悩んでいる、時間がかかっているのかわかる
- 他の開発用チャンネルに雑音が混ざりにくい
- とりあえず書き込める場所ということで重宝している
少人数かつリモートワークだと力を発揮する仕組みだと思うので、ぜひトライしてみてください。
ビデオチャットで顔を出す
私もビデオチャットする時は、無意識にビデオは切って音声のみにしていたのですが、これはよく無いと聞いたのでやめました。 理由は、ただでさえ遠隔で感情の情報が少なく、さらに表情も読めないとなると、知らないうちにコミュニケーションに対してだんだんストレスが溜まってくるからだそうです。
確かに、以前の会社で遠隔(ビデオフ状態)の人と相談するときに、あまり表情などが読み取れなくてストレスだったなと思い出しました。
怒る時や注意は文字で残さない
これは私も経験があるのですが、リモートワーク状態で、かつトラブルがあった時にはなるべく文字で怒らない方がよいです。
理由は明確で、「表情がわからない状態で他人に怒られると、尋常じゃ無いストレス」「その人がどのぐらいの温度感で、何を言わんとしているのかを読み取るのが困難」だからです。また、チャット形式の場合は相手が入力するまで待たなきゃいけないなど時間的拘束が多い事もあります。
次に、テキストでそう行った文章が送られてきた場合、履歴が残っているため次からチャットを開く事自体がストレスになります。こう行ったストレスが脳の思考範囲を蝕み、どんどん仕事に対して無気力になり負のスパイラルに入っていきます。かつ、リモートワークだとなかなかこういった他人の変化に気づきません。気づいたときには、手遅れになってる事もちらほら聞きます。
トラブルがあった時は正さなければなりませんが、殆どの場合はコミュニケーション不足、特に必要な情報が足りない場合に起こっている事が多いと思っています。 大体の会社は「話し合えばわかる、理解する人」を採用してると思うので、文字ではなく顔をちゃんと見て話した方がその後のパフォーマンスも圧倒的に上がると思いました。
情報の交通整理をする人が必要
リモートワークがうまくいっていない。情報が溢れてしまい、作業が進まない。という事が、過去に頻繁に起こっていた時期があります。
今までずっと何故なのか考えていたのですが、最近うっすらと答えがわかってきました。それは全てのメンバーが知らなくて良い事まで共有されてしまう事 です。 これにより「で、結局何をやればいいの?」->「全部」ということが起こり、どんどん組織や人が疲弊してゆくのを見ました。
とはいえやらなくて良い仕事を決めるという決断は、誰がどこまで責任を持っているのか?を明確にする必要があります。
おそらく、小さなチームだとこの決断はCTOになるのかな?と思っているのですが、他の会社の例をぜひ聞いて見たいです。
ちなみに、国外のちょっと大きな会社だと、タスクマネージャー(名前違うかもしれません)なるポジションが存在し、その人がそれぞれのタスク状況を見て、過密タスクにならないように仕事を振り分けているんだそうです。
母国語で「コト」の説明をするコストとストレスは、思ってるより高い
これは、同じオフィスにいても思うことなのですが、リモートワークになるとさらにコストが跳ね上がると思っています。
エンジニアであれば、これが「コードを読む&意図を聞く」という行為で簡略化されてるように思います。しかし、デザイナーはどうなのでしょうか?
IT業界というのもあり、今までの職場はエンジニアがデザイナーより多いことが普通でした。彼らは非常に先進的なチームワークを発揮出来るツールを使い、自分がどの部分を作り、担当し、どういった意図でこのコードを書いたのか全て記録できるという状態で仕事をしています。
一方その頃、デザインの設計部分を作る仕事では、まだ個人依存の場所が多い印象です。誰がどこをどのように作り、それがなんの意図を持って設計(もしくはグラフィックデザイン)されているのか、事細かに記録するツールはまだないと思います。invisionなどのチームでデザインできるものなどが最近やっと一般的になり嬉しい限りです。
一つのオフィスにチーム全員がいる場合なら、「ああ、それね」という言葉の文脈が形成されているので、ある程度齟齬があっても修正できる場合が多いです。しかし、リモートになった途端に「何をしたい」という説明が2段階ほど難しくなります。これが、英語だったらちゃんと伝わるのでしょうか?さらにこれがリモートで伝えなければならなかったら?
そうなった時に、一体何を準備しなければならないでしょうか。完璧なフローチャートが必要かもしれませんし、具体的な動くアプリケーションが必要かもしれません。
リモートワークに憧れを持っている人は多いですが、その分用意しなければならない情報、準備しなければならないルールやフローが多くなります。
職務内容によって向き不向きがあることは否めない
また、リモートワークで出来ることというのはモバイルのUX/UIデザイナーだと限られているのではないかなと思っています。具体的には
など、手元で集中して作る作業が多いように思います。逆にリモートワークだと苦手な作業は以下と考えます。(他にあれば教えて欲しいです。)
- 新機能設計や提案(機能説明や最初の設計までの負荷が高い)
- 流動的に作るサービス
- 会社や業務全体の方向性の情報収集(なので作業を細分化、分野外の余分な情報は必要がないなどルールを決める必要がある)
エンジニアに数多く質問をしたりしなければならないような初期段階の設計は、デザイナーの負荷が高いと思いました。 新アプリ設計や大きな新機能開発だと、ある程度手元で「これはいけるか?いけないか?」を確認しつつ、現実性のあるものに落とし込んで行く作業が必ず必要です。
このときに、どうしてもエンジニアに多数の質問をしなければなりません。一緒のオフィス環境だと、パッと人に見せて「これはできそう。」「これは今はできなさそうだけど、APIが変わったと思うから今調べて見ます。」「この機能は必要ないと思う」「そういえば別画面のあそこも一緒に変えたい」など、一瞬で様々なフィードバックがくるので、これはオフィス勤務の強みだと思っています。
リモートワーク状態の解決方法としては、エンジニアに1時間ほど時間をとってもらって、オンラインでガッツリ話し合う事ぐらいしか思いつきません:(
国をまたいだリモートワークは「時差4時間以内」か「4時間以上勤務時間が被る」事が必須条件
上記で出ていた本の中から抜粋をします。
僕らの経験上、毎日4時間はみんな同じ時間に働いたほうがいい。そうすればコミュニケーションもうまくいくし、チームの一体感が出てくるからだ。
これはその通りだなと思っています。経験上、他の国の同僚と一緒に働く時間が4時間以下になると、殆ど会話できない、話が進まないと思った方が良いです。また、実際に同僚に会う、表情を見て話すのもコミュニケーションを円滑にするにあたり効果的です。前職では4半期に1回、各国のオフィスを繋いでキックオフをしていったのですが、年に数回全員で会う(前職は”見る”でしたが)は良いイベントだったなと思っています。
リモートワークで大事なのは、悩む時間がいかに少ない環境を作れるか
時々、「リモートワークだとサボってるか不安」という話を聞きますが、これは重要な話ではありません。そもそもリモートでサボる人はオフィスにいてもサボると思います。
「連絡がなくて何をしているのかわからない」という悩みも、相手が悩んでいたり困っていたりして連絡がない事もあります。(少なくとも私はそのタイプ) これは、上記の個人用チャットルームを作ったり、常に誰でも入れるビデオチャットルームを作ったりすれば解決できるものでは?と考えています。現在の会社では雑談ビデオチャットルームをテスト運用していますが、上記の問題については良い効果がありました。
それよりもリモートワークをする上で最も重要なことは「悩む時間がいかに少ないか」という事です。
慣れてしまうと忘れがちなのですが、リモートワークの最大の弱点は気軽に助けられない、助けに気づかない事だと思います。
作業が細分化されているか、ドキュメントが整備されているか、フローは整備しているか、作業目的などのテキストはテンプレート化されているかなどが重要となります。
色々書きましたが、私もまだまだリモートワークを勉強中なので、良い方法などがあればぜひご意見を聞いて見たいです。