AIが進化すると人間の仕事を奪っていく…というSFのようなストーリーが、ほぼ確実な未来予想図として認識されるようになってきた。
井上智洋氏による書籍『人工知能と経済の未来』(文藝春秋)では、人工知能に仕事を奪われ、職に就けるのはたった1割で、汎用AIが普及する2030年には雇用が大崩壊すると予測している。一般的な事務職はもちろん、医者も弁護士も失業の危機。経営などのマネジメントやクリエイティブな職種、それに対人のサービス業以外はAIが担ってしまうというのだ。そこで井上氏は、代替できる労働はAIに任せて、市民の生活を保障するベーシックインカムを整えれば、ユートピア的な社会が生まれると提唱している。
AIというと、どうしても「取って代わられる」「奪われる」といったディストピアなイメージを持ってしまうが、本来は膨大なデータを処理するなど、人間にとって面倒くさいことをやってもらえる「便利な道具」、うまく付き合っていけば、よりよい未来が待っているというのは健全な思想といえるかもしれない。
AI技術を活かして実利を得るサンプルとして、いま注目を集めているのが株式やFXなどのトレーディングの分野だ。高性能AIがビッグデータをディープラーニングして市場動向を予測し、自動で株を売買。人間は何もしなくても好成績を叩き出す…。そんな世界がすでに現実のものになっているのだろうか。
AIを活用したトレーディングに積極的なマネックス証券に話を聞いた。
「マネックス証券では、お客様に最先端のテクノロジーを活かして取引をしていただくことを目標としています。株式やFXなど金融商品の多くは、ほとんどの証券会社で取引いただけるもの。そこで自動売買やAI分析など独自のサービスを提供することが、他社との重要な差別化になると考えています。こうしたツールを活用して、お客様の取引成績を向上させていくことが証券会社としての当社の役割だと考えています」(マーケティング部 山田真一郎さん)
あくまでも顧客の利益が最優先で、そのために最先端の武器を提供しているというスタンスだ。具体的なサービスについても話を聞くと、
「投資の世界では、あらかじめ設定しておいた売買ルールに従って機械的に売買を行うシステムトレードという手法があります。システムトレードは手動でもできますが、現在ではコンピュータを使って自動的に売買する方法が普及しています。」(マーケティング部 田中空見子さん)
簡単に説明すると、システムトレードとは、「こういうときに買う」「こういうときに売る」という指示を先に設定しておけば、あとはコンピュータが自動で売買してくれるというものだ。
「当社が提供している『トレードステーション』では、主要ネット証券会社で唯一株式のシステムトレードに対応しているトレーディングツールです(2018年4月10日現在)。その他にも銘柄ボードやチャート分析、各種取引機能など、このツール上で高度なトレードをリアルタイムで行うことができます。難しそうに見えますが、システムトレードはトレード初心者の方にもオススメです。というのも、トレード初心者がよく陥ってしまうのが、損切りが出来なくてずっと株式を持ち続けてしまうことなんです。でも、システムトレードなら条件に達したら機械的に売ってしまうので、その点が潔いんですね。」(同 田中さん)
システムトレードなら、自身の投資戦略にあわせた設定をしておけば、あとはすべてコンピュータまかせ。ただし、そのプログラムは人間が考える必要があり、AIを取り入れた領域にまでは至っていない。ではAIを使った投資はどのようなものがあるのだろうか?