生駒は乃木坂46の1期生として2011年にグループのメンバーとなり、2012年リリースの1stシングル「ぐるぐるカーテン」から5thシングル「君の名は希望」まで、初代センターを務めあげた。また2014年4月からはおよそ1年間にわたり、AKB48チームBとの兼任メンバーとして、AKB48でも活動。乃木坂46の顔として、これまでグループを牽引してきた。彼女の乃木坂46メンバーとしてのラストステージを見届けるべく、会場には満員1万2000人のファンが集結。また全国の128の映画館ではライブビューイングが行われ、こちらには約6万人のファンが来場。各地から彼女に声援が送られた。
コンサートの1曲目を飾ったのは「乃木坂の詩」。ステージの両サイドに並んだメンバーが冒頭のパートを歌いステージの中央を向くと、そこに生駒のシルエットが浮かび上がる。生駒はゆっくりと歩みを進めると「僕らの詩」と1人で歌い、紫色のペンライトを胸の前で光らせた。
この曲を終えると生駒は「ついに始まりました、卒業ライブ。楽しんでいくぞ!」と叫ぶ。続く「おいでシャンプー」では、彼女の「生駒ちゃんのことがー?」という呼びかけに、ファンが大きな声で「大好き!」と答えた。ソロ曲「水玉模様」をまっすぐに歌い上げると、生駒1人でこの日最初のMCへ。彼女は「『最後の最後まで私こんな感じかあ!』と思いながら歌いました! 」と豪快に笑うと「みんなは私の歌を『味がある』って言うけど、そう言ってくださるのはここにいる人だけだからね!(笑) そんなことも含めて、歌っていて楽しかったです」と優しい表情で客席へ語りかけた。
3期生による「トキトキメキメキ」、2期生による「スカウトマン」を経て始まったのは生駒のソロダンスパフォーマンス。彼女はビジョンに映し出されるグラフィックを自身の手で操りながらダイナミックなダンスを見せてファンの視線を釘付けにする。後ろを向いた生駒が腕を大きく振り下ろすと、光の中に浮かび上がったのはメンバーの姿。彼女たちはそのまま、最新シングル「シンクロニシティ」に収録される生駒の最後のセンター曲「Against」をエネルギッシュに歌い踊った。
メンバーがそろってのMCでは、それぞれが生駒とのこれまでの思い出を振り返っていく。「私は大分出身だから、地方同士の結び付きがあって」と切り出した衛藤美彩は「どこかに泊まると一緒に温泉に入ったり、何度もサウナに入ったりして。そういう関係になれたのがうれしかった」と語る。また高山一実は「去年のレコード大賞が隣の席で、2人で手をつなぎながらステージに立ったのが思い出」と言うと「なんて言ったらいいのかわからないけど……長生きしてほしいなと思います!」と突然生駒の長寿を願い、メンバーとファンの笑顔を誘っていた。
乃木坂46に関わるスタッフたちが生駒に寄せたメッセージが次々と映し出されるビジョンに元AKB48・渡辺麻友から送られた言葉が映し出されると、生駒のAKB48兼任時代を振り返るパートがスタートした。生駒は3期生とともに「初日」、同じ秋田出身の鈴木絢音と一緒に「てもでもの涙」、2期生とともに「心のプラカード」を歌い、この日限りのスペシャルな演出で観客を楽しませる。「心のプラカード」を披露する際には「(選抜総選挙)14位という数字がなければ、この曲は歌えませんでした。あのときに、私は『ああ、兼任してよかった』と心から思いました」と当時の心境を明かしながらファンに感謝を伝えた。
ライブ中盤には“生生星”こと生田絵梨花、生駒、星野みなみによるまったりとしたトークパートも。生田は今の生駒について「猫背も治ったし滑舌もよくなって、原始人から人間に成長したね」と言って生駒を「ひどい! 原始人って言われた!(笑)」と怒らせ、星野は「食の好みや行きたい場所はバラバラだけど、違うところですごく合う」を3人の関係性を表現した。このあとに3人は「ここじゃないどこか」を披露。お互いに目を合わせながら、優しいユニゾンを響かせていた。
デビュー当時から乃木坂46の公式お兄さんとしていつも近くで生駒をサポートしてきたバナナマンの2人からの温かいメッセージが映し出されると、ライブは後半戦へ。「指望遠鏡」で「もっと!」とオーディエンスの声を求めた生駒は、続く「月の大きさ」でアニメ「NARUTO -ナルト-」の映像をバックにナルトのポーズを決めてみせる。するとここで、ナルトからのメッセージと「NARUTO -ナルト-」の作者・岸本斉史が生駒に贈るイラスト色紙がビジョンに映し出されるサプライズが。この演出を見た生駒の目にはみるみる涙があふれ、彼女は「ありがとうございます……一生がんばれます!」と号泣。彼女らしいタイミングでの涙に会場が大きく盛り上がると、生駒は「ここで泣くつもりなかったんだけど、『NARUTO』は泣いちゃうよー……」と目頭を押さえ、「オタクの生駒から乃木坂46の生駒に戻るので、次の曲をかけてください(笑)」と呼びかけた。
生田がグランドピアノの前に座り「君の名は希望」のイントロを奏でると、メンバーは彼女の伴奏に合わせて歌声を響かせる。続く「悲しみの忘れ方」ではキャプテン・桜井玲香の合図でビジョンに生駒の両親からの「これからも支えていくからね」というメッセージが浮かび上がり、涙を浮かべた生駒は「ナルトとお父さんたちはダメだよ」とつぶやいた。
最後の曲を前にメンバーも次々に彼女へ言葉を送り、白石麻衣は「『ぐるぐるカーテン』のときから一緒に泣いて、何かあると肩を組む、今でも変わらないその関係性が好きだったよ。寂しいけど生駒ちゃんの未来を応援しているから、そのままの姿でいてください。生駒ちゃんのファーストキスを奪ったこと、忘れないよ」と生駒へ声をかける。西野七瀬は「乃木坂46の顔として走り続けてくれて、その背中を見て私は『自分もこうしなきゃ』と思えた。生駒ちゃんがいなかったら私は成長できなかった」と続き、最後にマイクを持った生田はあふれる涙を我慢しながら「もしかしたらお互いに壁を感じたり、強がっていた時期もあったかもしれないけれど、7年も一緒にいれば大人になって。いいところをいっぱい見つけられたし、生駒ちゃんの姿を見て自分もがんばれる、なんていい仲間を持ったんだろうと思いました。きっと私は今まで十分に支えてあげることができなかったと思う。だからこれから、何かあったり帰りたくなったらいつでも声をかけてほしい。もっと関係を深めていけたらいいなと思います」と未来へ向けての約束をした。
メンバー1人ひとりの思いを受け止めると、生駒は「この人たちじゃなかったら私は今ここにいない。集団行動が苦手な私のような人間が7年間アイドルグループの中ですごく楽しくやってこれたのは、この人たちとの出会いがあったからこそで。本当に私はこの人たちがいてよかった、この人たちだったから最高だったって誓います。純粋に大好きだし、乃木坂46が今後活躍するために私は活躍したいって思っちゃうんですよ。そんな仲間を持てたことが、本当にうれしいです。そんな人生でよかったなって、今言っちゃう(笑)。本当にみんなありがとう」とメンバーへの愛情を吐露した。「死ぬまで私の代名詞になるでしょう。そう言わせてください」という生駒の言葉とともに届けられた本編最後のナンバーは「制服のマネキン」。センターに立つ生駒は自信に満ちた笑みをたたえながら、メンバーを牽引する力強いパフォーマンスを見せてステージの奥へと姿を消した。
アンコールは「走れ!Bicycle」で元気にスタート。続く「シャキイズム」では生駒がトロッコに乗り込み、ファンの近くでその笑顔を届けた。ここで彼女は改めて1人でファンの前に立ち、自身の今の思いを伝える。「振り返ると私はすごく変な子だったなって思います」と笑った彼女は「最初は猫背でガニ股でした。今もちょっとO脚だけど、ビシッと立ってるつもりです。最初はスカートを着るのも恥ずかしかったです。スースーするななんて思いました。今はこんなに見てる人がいるのに、ターンすることもできます。変化したんです。この7年間で、こんなに人間って変わることができるんだってことも、乃木坂46で教えてもらったことだなと思います」と胸を張る。そして、改めてメンバー、両親、スタッフ、ファンへの思いと感謝を口にし「周りに尊敬できる方がたくさんいて、たくさんのことをもらったけれど、でもそれより何よりも私は、もっともっと険しい道を上りたいと思ってしまった。こんなに充実しているのに、すごくワガママなことだと思います。この世界に夢を持ってしまった。この先に続く夢をつかみたいと思ってしまった。だからこそメンバーには自分もいつかそうなったときに胸張って1人で仕事できるっていうところを見せてあげたい。お父さんお母さんにはこれからも迷惑をかけると思うけど、東京に家を建てるから待っててください。ファンの皆さんには生駒ちゃんを観たときに現実を忘れて、心の底から楽しんでもらえるようなエンターテイナーになります」と誓った。
アンコールを終えてもファンの大きな「生駒!」コールは止まず、コンサートはダブルアンコールへ。ここでは、秋元康が生駒の姿を思って詞を書いたという「君の名は希望」が再び届けられた。メンバーは1人ずつ生駒に花を手渡し、笑顔を交わしたり涙で抱き合ったりしながらそれぞれに別れを告げる。すると、最後に花を渡した生田が生駒に後ろを振り向くように促した。メンバーが最後に生駒に贈ったサプライズは、Tシャツの背中に1人1文字で刻んだメッセージで、そこには「生駒ちゃんとの沢山の思い出忘れない!大好きだよ▽そして本当にありがとう。(▽はハートマーク)」という言葉が。大好きな仲間からのメッセージに生駒の頬には涙が伝い、彼女は「うれしいね。本当に素敵な人たちに出会えてよかったです。乃木坂46が大好きだから、入ってよかった。みんなに出会えてよかった。それしかないです」と言葉を噛みしめた。
桜井が「最後の終わり方、どうする?いこちゃんの好きな方法にしよう」と声をかけると、生駒は「『楽しかったー!』って感じで終わらせたい」とリクエスト。彼女が「お疲れ様でした!」と大きな声で叫ぶと、メンバーとファンは「イエーイ!」と声を上げて生駒を送り出す。笑顔のあふれるラストシーンに、生駒は「楽しかったです!」と言って最後のステージを締めくくった。
生駒里奈 コメント
ここ1週間くらい、今日のことを考えれば考えるほど眠れなくて頭に激痛が走って、「人って何かを変える瞬間ってこんなにパワーが要るんだな」って思いました。そんなときにふと思ったことがあるんです。それは、「卒業できるってすごいな」ってことで。寂しいことだけど、私は気付いたんです。15歳で何もできない素人が乃木坂46を7年もやることができて、たくさんの経験をして。その中で卒業までさせてくれた。たった7年しかやっていないのに卒業というという機会をいただけた。なかなかできることじゃないと思います。こんなに素敵なメンバーに囲まれて卒業できること、この先ないと思います。振り返ると私はすごく変な子だったなって思います。最初は猫背でガニ股でした。今もちょっとO脚だけど、ビシッと立ってるつもりです。最初はスカートを着るのも恥ずかしかったです。スースーするななんて思いました。今はこんなに見てる人がいるのに、ターンすることもできます。変化したんです。この7年間で、こんなに人間って変わることができるんだってことも、乃木坂46で教えてもらったことだなと思います。
オーディションのチラシをくれたのはお父さんでした。お父さんが大きなきっかけになりました。オーディションに受かって、真ん中になりました。秋元康さんってすごいんだなって思いました。だってこんな子を真ん中に置いて、大事なデビューシングルをやらせるんです。まさかこんなふうになるなんて、自分でも思っていないですもん。見出してもらったんだなって思います。心の底から信頼できる仲間と、こんなにたくさん時間が過ごせたこと、私はすごくうれしいです。最初は握手会、すごく怖かったです。はじめましての人と握手するって、私からしたらビックリです。でも違いました。こんな自分をこんなにほめてくれる人たちなんていない。うれしかった。だからがんばろうって思えた。ありがとうございます。
周りに尊敬できる方がたくさんいて、たくさんのことをもらったけれど、でもそれより何よりも私はうまくなりたいと思ってしまった。もっともっと険しい道を上りたいと思った。こんなに充実しているのに、すごくワガママなことだと思います。でもそれよりも私は、この世界に夢を持ってしまった。この先に続く夢をつかみたいと思ってしまった。だからこそメンバーには自分もいつかそうなったときに胸張って1人で仕事できるっていうところを見せてあげたい。お父さんお母さんにはこれからも迷惑をかけると思うけど、東京に家を建てるから待っててください。ファンの皆さんには生駒ちゃんを観たときに現実を忘れて、心の底から楽しんでもらえるようなエンターテイナーになります。