「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」 声優の竹達彩奈さんに対し7000件以上の脅迫メールを送り続けた男

声優アイドルのイメージイラスト

　横山英彦(裁判当時32歳)が声優の竹達彩奈さんの所属事務所に7000件以上の迷惑メールと、竹達さんに危害を加えることをほのめかす内容の脅迫メールを送って逮捕された事件が報道されて以来、同居していた彼の家族の生活も壊れました。

　彼の母親は近所の人から挨拶をされなくなりました。家の近くの駐車場に『息子が犯罪者なのは親の責任だ』と書かれた貼り紙が貼られていました。

「息子のせいで、私たちの人間関係もおかしくなりました。家族も被害に遭ったような、そんな気持ちになりました」

　証人として出廷した彼の母親はこう語っていました。犯行に至った原因に彼女は彼が事件の前から抱えていたうつ病等の精神疾患を挙げます。

「うつになってからは責めることも『頑張れ』と励ますこともできなくて...本人の意思を尊重して何も言わず見守っていましたが、それがよくなかったと思います」

「見守る」、要するにあまり関わろうとしなかったようです。犯行に関しても母親は全く気づいていませんでした。

病気の治療中に出会った声優さん

　横山がうつ病を発症したのは彼が26歳になった春でした。就職活動の失敗、当時交際していた女性と別れたことがきっかけでした。母親によると
「発症した当時は身体もガリガリに痩せて、不眠にもなってて...大好きだったゲームも読書も出来なくなってしまいました」という状態でした。

　病気を治療していく中で出会ったのが声優の竹達彩菜さんでした。

「病気が少しよくなった段階で、竹達さんのコンサートやイベントに出かけるようになりました。それまで笑うことがなかった息子が少し笑うようになりました」

　彼はファンクラブにも入会し、その応援の熱心さからファンの中で有名な存在になっていきました。しかし、それはやがて悪目立ちをするようになり、彼がツイッターで何かを発信するたびにファンから非難されるようになりました。

　彼は竹達さんの所属事務所に対して、ファンから迷惑行為を受けている、と改善を要求しました。しかし会社が個人間のツイッターのやり取りの問題を解決することなど出来ません。そう返答しましたが彼は納得できませんでした。

「自分の要求が受け入れられなくて腹が立った。何とか謝らせてやろうと思った」

　彼はもう歯止めが効かなくなっていました。会社に謝らせたい、その一心で

「竹達のツイッターで迷惑行為を受けた」
「竹達のせいで多大な精神損害を受けている」

　といった虚偽の内容や誹謗中傷のメールを匿名で会社に送るようになりました。彼女の会社が出していた求人にまで応募し、不採用にもなってからはさらにメールの件数も内容もエスカレートしていきました。

数年経って、やっと警察が動き出した

　そして平成29年7月14日、決定的なメールが送られてきました。

「ぶっ殺す」
「お前ら、俺をなめるなよ」
「俺が何もしないと思ってるのがさらにムカつくわ」
「あやち(竹達さんの愛称)は絶対に許さない」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

　以前から警察は彼のことをマークしていて、一度は家宅捜索もしましたが決定的な証拠を掴めず逮捕は見送られました。しかしこのメールが警察が捜査依頼を出していた漫画喫茶から送られていたことからようやく逮捕に至りました。
　彼が迷惑メールを送るようになって4年以上が経っていました。

　彼がうつ病になったきっかけは誰もが一度は経験し乗り越えるような出来事です。しかし彼はつまずきました。もう一度立ち上がろうともがいている時に出会ったのが竹達さんでした。
　イベントから帰ってくると、楽しかった時間が終わってしまい、またしばらく彼女に会えないと、落ち込んで布団にくるまって出てこれなくなってしまうこともあったそうです。
　彼は本当に竹達さんが好きで、彼にとって彼女の存在はとても大きな支えになっていたのだと思います。

　しかし彼は支えになってくれる家族も竹達さんも、そして自分をも壊してしまいました。
　今後、彼は再び立ち上がることが出来るのでしょうか？ 彼自身の弱さで、また全てを壊してしまうような気がします。（取材・文◎鈴木孔明）