チェコ共和国ルコヴァー村には、世にも恐ろしい教会がある。
その教会内部には、薄汚れた白いフードですっぽり顔を覆った幽霊のようなものが、祈りを捧げるかのように居座っているのだ。
凝視しようが二度見しようがそれらはピクリとも動かない。実はこれ、本物の霊ではなくすべて彫像なのだ。
聖ジョージ教会は、600年以上も前に建てられたが、不吉な教会として長らく忌避されていた。だが、このまま廃墟化していくのは忍びないと、地元のアーティストらにより「ゴーストチャーチ」として新たな名所になったという。
スポンサードリンク
霊にとりつかれて人を拒む不吉な教会
ルコヴァー村の聖ジョージ教会は住民に恐れられていた教会だった。
1352年に完成したが、その後およそ300年の間にたびたび火災に見舞わた。その中には放火もあったのだが、人々はこの教会を不吉の象徴と思うようになった。
image credit:lostateminor
そして1968年、葬儀中に屋根の一部が崩落した。この日を境に「教会にとりついた霊が人を拒否している」という噂が広まった。
以来、人々は教会の中に入らず、外で礼拝を行った。その習慣は、地元の西ボヘミア大学で彫刻を専攻するヤコブ・ハドラヴァが現れるまで続いていた。
古びた教会の保存のために「幽霊」を配置
古くて不吉ではあるものの、チェコの文化的価値を持つ教会を残したほうがいい、という意見は以前からあった。だが住民がその修復費用をまかなうのは到底無理だった。
image credit:lostateminor
彼らは、教会が大勢の人を魅了すれば寄付で修理ができるかもしれない、何か良い方法はないだろうか?とアーティストのハドラヴァにも良案を求めた。
実はハドラヴァは、廃墟の教会に幽霊の彫像を置くことを前から考えていた。
そこでためしに教会で友人にレインコートをすっぽりかぶせてみたところ、古びた風景にぴったりのゴーストが現れた。これはつかえる!ということでさっそく実行に移した。
image credit:lostateminor
ゴーストの彫刻を設置した不気味な「ゴーストチャーチ」は一気に話題になり、見学者の寄付で修復ができるようになったという。
ゴーストは、かつて教会に通っていたドイツの人々の幽霊
教会にたたずむ幽霊についてハドラヴァは以下のように語っている。
「この彫像は第二次世界大戦前にルコヴァー村に住んでいたドイツ系住民の幽霊を表しています。彼らは毎週日曜にこの教会で祈りを捧げていました」
image credit:lostateminor
ルコヴァー村は、古くはオーストリア=ハンガリー帝国の一部だったが、第一次世界大戦でチェコスロバキアの一部になった。
その後、1938年にナチスによってドイツに支配されたその地域は、ドイツ語を話すドイツ人のものと宣言された。
しかし、第二次世界大戦が終わりチェコスロバキアが復活すると今度はドイツ語圏の人々が全員追放された。
ハドラヴァはこうした複雑な歴史と幽霊の言い伝えをこの空間に表したのだ。
恐れられた過去から一転、世界の注目を集める教会に
「この教会の過去の風景を具現化しながら、たくさんの人々に大きな影響をおよぼした時代を示したかったんです」と語るハドラヴァ。
image credit:lostateminor
以来、住民は教会を恐れなくなるどころか喜んで中に入り、積極的に「幽霊」の隣に座るようになった。ここには石膏でできたおよそ30体の幽霊が設置されている。
image credit:Europics / Moala Richard (Sulko)
幽霊彫刻のおかげで忌まわしい伝承から逃れた聖ジョージ教会は、今やチェコだけでなく世界中の人々から注目を集めている。
References:lostateminor / designyoutrust / neatorama / didyouknowfactsなど /written by D/ edited by parumo
あわせて読みたい
今、あなたにオススメ
Recommended by
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
- 2019年3月、埼玉県にグランドオープン!ムーミンのテーマパーク「ムーミンバレーパーク」が今から楽しみな件
- キッチンにオレンジ色、寝室にはグリーン。色彩心理学を利用して家を幸せな場所にする8つの色
- 政治に詳しくない人ほど「自分は政治を良くわかっている」と思い込んでいるという研究結果(米研究)
- 科学者が猫の為に作った、猫を心地よくする完璧な音楽
- 鳥の耳ってどうなってるの?カラスに耳を見せてもらったら、想像を超えるレベルの耳だった。
- 決めては水分!フライパンでアメリカンスタイルのカリカリベーコンを作る方法【ネトメシ】
- カジノに設置されている水槽の温度計を利用して顧客データを盗み出したハッカーたち
- 臨死体験者が見た死後の世界。「地獄に行く途中だった」と語る女性、今もその恐怖の中に生きている。
「自然・廃墟・宇宙」カテゴリの最新記事
- 第2の地球を探し出せ!宇宙望遠鏡「TESS」が打ち上げられる(NASA)
- 驚くほどディープ。想像を絶する海の深さを実感することができるイラスト図
- 現実世界にある錯視。思わず二度見したくなる現実の中の不思議な光景
- まもなく国際宇宙ステーションに大量の人間の精子が到着。無重力空間での能力が試される(NASA研究)
- 最盛期の姿をGIFアニメーションで振り返る、世界7つの古代遺跡
- 4年後に実現予定。宇宙初の豪華ホテルが予約受付を開始、すでに4か月先まで完売
- 幻の島「アトランティス」か? グーグルアースによってアゾレス諸島付近の海底に600キロの陸塊を発見
- 金星にある暗いシミ。それが生命体である可能性を示唆(米研究)
この記事をシェア : 74 8 3
人気記事
最新週間ランキング
1位 2390 points | 幻の島「アトランティス」か? グーグルアースによってアゾレス諸島付近の海底に600キロの陸塊を発見 | |
2位 1406 points | 学校や塾の先生が提唱する学習方法、科学的にはまったく意味がないことが判明 | |
3位 1342 points | 切なくて震える。あの感動のゾンビショートフィルム「Cargo」がついに長編映画化!ネットフリックスでも配信決定! | |
4位 1052 points | メカメカしいぞ!巨人気分を味わえる、世界初の人体機能拡張ギア「スケルトニクス」の一般販売がスタート! | |
5位 1049 points | 狼に育てられた男、人間としての暮らしに失望している(スペイン) |
スポンサードリンク
コメント