もう10年くらい前だったかなぁ?
当時、ある30代の女性患者がいらっしゃるようになりまして…。
その方、なんと霊感があると仰るのです。
まだ駆け出しだった当時の自分にとっては、もちろん生きている人間を相手するだけで精一杯だった訳で。
目に見えない実体のない物についてまで、当然考えが及ぶ余裕があるはずもありませんでした。
まあ整体の世界では、いわゆる「もらってしまう」という類の話は有名。
要するに、首の悪い患者さんを良くしてあげたら、今度は自分の首が悪くなってしまったというヤツ。
でも、カイロプラクティックって西洋医学ベースなので、そもそも、あんまりスピリチュアルな考え方ってしないんですよね。
でも、そんなカイロプラクティックに従事する人間のなかにも、東洋的思想に染まっていってしまう人間も少なくないわけで。
僕的には、そういう人間が「もらってしまう」ように感じてしまうのではないかと考えるのです。
だから、僕は「もらってしまった」ことは一度もありません。
ところで、話をさっきの女性患者さんに戻します。
症状はごく一般的なもの。
育児をしながらも時短で働いてらっしゃってて、肩こり腰痛が辛いと。
そのあたりの症状の緩和が目的でした。
何回か通われて頂くうちに、その女性患者さんが以前に通われていた整体院についての話に…。
自分「そういえばウチに通われる前って、どちらか別の整体に行かれてたんですか?」
女性患者さん「え、ええ…。まあ、いろいろと実は通っています」
やや、答えにくそうな感じ。
どうやら、これまで多くの整体に通われて来た模様。
そこで、話を止めれば良かったのですが。
まだ空気を読めない未熟な施術者だったんですね、自分。
ここは、いろいろ迷われた結果、ぜひ自分のリピーターになってもらおうと、野心が出てきてしまったというのが本音。
何をもってすれば彼女の心を掴めるのか?
余計に詮索してしまったのです。
自分「どうして以前の整体には、行かなくなってしまったんですか?」
女性患者さん「憑いてしまったんです」
自分「え?」
女性患者さん
「やっぱり、そこも先生に憑いてしまったんです」
「私、見えるんですよ」
自分「見える?」
女性患者さん
「先生から、もらってしまうとややこしいことになってしまうんで」
「だから、憑いてしまわれたら、もう、そこには行かないんです」
要するに、憑かれてしまった先生の施術は、受けられないということ?
いったい、どこから憑くのか、よく分からないけど。
自分「あ、自分、霊感なんてないし、霊が憑くほど器量のある人間じゃないんで、そちらの心配はもちろんご無用ですよ!」
我ながら、勢いだけの意味不明な珍回答…(笑)。
でも、どうにかして駆け出しの自分にとっては、固定客になって欲しかったんですね。
そして、平穏な日がそう長く続くはずもありませんでした。
とうとう、審判の日がやって来たのです。
いらっしゃるようになって数か月くらい経ったある日。
女性患者さんから何の前触れもなく、とつぜん予約キャンセルの電話が掛かってきたのです…。
それは、あっけない幕引きでした。
でも大丈夫です!
僕は、問題なく大きなケガや病気もすることなく生きていますから(笑)。
2018.4.22