「相撲は国技」の看板を信じてはいけない理由

もめ事こそ、相撲界の「伝統行事」である

なぜ、相撲は日本の国技とされたのだろうか(写真:denkei / PIXTA)

暴行事件や賭博事件など数年前から、大相撲の世界でさまざまな不祥事が世間を騒がせている。つい先日も、土俵上は女人禁制という「伝統」をめぐって複数の事件がおきた。

それぞれの問題については、各個人の考えがあるだろう。だが批判派も擁護派も、多くの方が「日本の国技なのに……」「国技だから……」という発言をする。

いや、ちょっと待ってほしい。そもそも相撲は日本の国技なのか? まず断っておくが、日本には法令で「国技」と定められた競技はない。なのになぜ、相撲は日本の国技とされ、みんながそれを受け入れているのか?

いつ「国技」に?

1909(明治42)年、両国に初の相撲の常設館ができた。相撲はそれまで寺社境内で催される小屋掛け興行だったから、「屋根のある専用の建物」ができるのは画期的なことだ。当初の名前はたんに「常設館」。ほかに「尚武館」「相撲館」などの名前も候補だった。

開館に先立って、当時の文士・江見水蔭(えみ・すいいん)があいさつ文を起草した。その文中に「角力は日本の国技」という表現があったのだ。当時の角界幹部である尾車文五郎(おぐるま・ぶんごろう)が、それをえらく気に入り、「国技館」という名前を提案した。これが旧両国国技館だ。

はじめに建物ありき。国技だから国技館でやっているのではなく、国技館でやっているからたぶん国技なんだろう……というモヤっとした認識で「相撲は国技」が始まり、約110年になる。

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  • NO NAME2b5ec70c5e22
    結論おかしくない?記者が言うところの歴史からすると「女相撲を復活せよ」って結論も同時に出ないと。
    up14
    down10
    2018/4/22 08:36
  • NO NAME99e7bdfddc2e
    日本に現存するスポーツで最も古い起源を持ち、その始まりが日本独自のものである点を背景に、平安時代以降、天皇、将軍らが好んだ事実を踏まえれば独特の地位にあることは間違いない。昭和に入り天皇陛下が大いに好まれたことでその位置づけが継承された。
    途中、神社仏閣が普請費用捻出のために興行を行い、俗化したが、同時にすそ野が広がった。女相撲などは行き過ぎた興行でしかなくこれをもって相撲を貶めることは誤りだ。もともと當麻蹶速と野見宿禰の天覧相撲が伝説とはいえ始まりでありその結末は蹶速の落命である。荒事なのだ。
    相撲で批判されるべきは土俵上なら八百長、その他なら興行の不手際。前者はまさに土俵を汚すものだが、後者はビジネスの問題だ。暴行隠ぺいはコンプライアンス、貴乃花問題はガバナンスの問題と言って良い。司直の手に委ねるべきは委ね、その前段階で弁護士と調整するのがあたりまえだ。
    国技か否かの議論は不要だ。
    up27
    down27
    2018/4/22 07:29
  • NO NAME8d019b7ece94
    公益財団法人は認可がなくなれば法人そのものを解散しないといけない。
    それもあるから一旦認可した以上は本人達が返上しないと、OKを出した方の責任問題になるから取り消しは相当なことがないと出せない。
    それに甘んじて好き放題なことをしている組織だからな。
    それは今の執行部に限らず、反執行部はの連中も同じ穴の狢。
    ただこの半年ほどの事件は内閣府の責任問題を超えた事件ばかりだろう。
    殺人未遂といえる暴行事件の件にしても、死にかけの市長を看護士に”土俵を降りろ”と事実上見殺しにしようとしている状態は異常だろう。
    国技だ伝統だ以前の話。
    up0
    down1
    2018/4/22 10:04
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