学童クラブ指導員(放課後支援員)の配置基準など質低下を国が地方へ求める動きが注目されている。武蔵野市の場合はどうか?
■従うべき基準から参酌基準へ
「地方分権で質低下? 学童クラブ」(2017年07月13日)の記事でも書いたが、指導員の配置基準について、国が一度定めた基準を下げようとの動きが明らかになってきた。平成29年12月26日に内閣府の地方分権改革推進本部が方針を示したためだ。(※)
現在の学童クラブの基準は、厚生労働省が平成26年4月に「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(平成26年厚生労働省令第63号)を策定し、公布したことで学童クラブの支援の単位(40人)ごとに保育士や教師、社会福祉士などの資格と都道府県が行う研修を修了した者を2名配置すると決められた(従うべき基準=義務)。この省令をもとに各自治体で条例を制定し、指導員の配置を行っているのが現状だ。
ところが、指導員の確保ができないとの意見が自治体から出されたことから、この資格要件をなくす、もしくは従わなくても良い(参酌すべき基準=参考)へと緩和する動きとなってきた。もし、従うべき基準ではなくなると、1名のみの配置となることや、資格がない人が指導員となることが可能となってしまう。
■質低下の懸念
学童クラブは生活の場、第二の家庭として子どもたちの安全を守るだけでなく、育ちの場となるのだが、そのためには専門的な知識や技能、経験が必要としてきた今までの流れを大きく後退させることになり、質の低下へとつながる可能性が高くなっている。
このため、学童クラブを利用する保護者会や指導員の全国組織である全国学童保育連絡協議会は、参酌化に反対の意思を示してきたが、動きは止まる様子がない。近く国会へ請願署名を届けると聞くが、国会の判断で止まればまだ良いとしても、このまま参酌化となれば、多くの自治体で学童クラブの質低下となる可能性は高くなる。
■武蔵野市の現状の考え
そこで、武蔵野市の場合はどのように考えているか。先の議会でこの件を質問してみた。
武蔵野市の場合は、国が従うべき基準を示す前から、指導員には教師や保育士の資格を求めており。40人に対して2名の配置基準としたため、国が後退しようとも同じ質の基準を守ればいいのだが、国が質を下げたら武蔵野市も下げてしまわないか懸念があったためだ。
松下市長は答弁で「従うべき基準は条例の内容を直接的に拘束するもの。従うべき基準に該当する部分の改正があれば、必要な条例改正も対応すべきと考えますが、運用も含めて、保育の質、学童クラブの質はしっかりと守っていきたい、そういう考えは持っております」としていた。
■決めるのは議会
もし、国が質低下となる基準を示したとしても、学童クラブ事業は自治体が行う自治事務であり、その質を含めた保育内容は自治体が条例で定めるため、必ずしも後退した国の基準に従わなくてもいい。国が示した基準より低下させると補助金などが得られなくなるが、質を上げる分には自治体が自ら行えばいいからだ。補助金との関係がどうなるか、現状では分からないが、自治体、そして、自治体議会の判断が今後は注目されそうだ。
繰り返すが、学童クラブ事業は自治事務であり、自治体が内容を決める。その内容は条例で定めるため、自治体議会の判断で決まるのだ。
※ 内閣府のサイトから 平成29年12月26日 地方分権改革推進本部決定 「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」より
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