熊猫さん(子欲居)の備忘録

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zoom RSS ダライ・ラマ後継問題とチベット暴動

<<   作成日時 : 2008/03/27 19:45   >>

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 日本のマスコミは、チベット亡命「政府」の「発表」などを「根拠」に、中国政府が暴動に対して過剰な弾圧を行っているのではないかという「疑問」(本来、あくまで「疑問」であり、なんらの根拠のあるものでもない)を呈している。しかし、少なくとも、もし上の亡命「政府」の主張するような「死者×××人」などというような過剰な鎮圧を中国政府が行ったのだとすれば、かえってチベット族の怒りを買い、騒乱は益々激化して行く一方であろう。
 が、報道を見ていても、既に西側各国政府の中国政府への対応が主で、どう見ても、事態沈静化の方向は間違いないものと思われる。

 ただ、「たとえ扇動する勢力が存在するとしても、そもそも不満がさほどなければ、扇動の効果はあまりないだろう」というような指摘についても、考えさせれる面があり、筆者としても、つらつらこの問題を考えてみた。

 ここで中国側の論評を引用させてもらうが、この論評はダライ集団が僧侶を煽動できたのは、ダライ・ラマ本人に信仰を置く歴史的伝統のためだ。これはダライ・ラマ14世が特定の対象というわけではなく、ダライ・ラマへの信仰の伝統によってもたらされたものだ。僧侶が自己の師に抱く感情は素朴なものだが、往々にしてこの信仰を利用して彼らを煽動し、挑発や騒動を引き起こす者がいる。と指摘している。

 はっきり言って、大多数のチベット人が本気で独立など考えているようには思えないが、確かに、チベット族のダライ・ラマへの信仰は、日本人などの想像以上のものがあることは事実だろう。思うに、亡命によって、否応なしに外の世界を体験せざるを得なかった亡命チベット人より、国内にいて、中国政府により基本的にその民族文化を保護されてきたチベット族の方が、皮肉なことにダライ・ラマや伝統的なチベット仏教に対する宗教的尊崇の念は篤いのではないだろうか。
 実際、現ダライ・ラマ14世自身が、自らの後継問題に関して、チベット仏教伝統の「転生霊童」制度を否定し、「指名もしくは選挙によってゲルク派のしかるべき高位の僧に次期指導者の地位を委ねる旨を示唆している」という。(ウィキペディア『ダライ・ラマ14世』引用青字)
 ダライ・ラマ14世が敢えて活仏(化身ラマ)の転生制度を放棄することを検討している背景としては、次のダライ・ラマの転生者を認定するにあたって国外での亡命生活を余儀なくされているダライ・ラマ14世とガンデンポタン(チベット亡命政府)が影響力を行使しにくいことが考えられる。からだという。
 しかし、そのようなチベット仏教の伝統によらない「新ダライ・ラマ」が中国国内のチベット族に支持されるとも思えない。亡命チベット人の間には、上のようなダライ・ラマの発言を容認する素地があるのかもしれないが、筆者にはこちらでも支持を得ることは難しいように思われる。前にも引用したとおり、現ダライ・ラマの死亡は亡命チベット人社会をも崩壊させるだろう。ダライ・ラマ始めチベット亡命「政府」関係者の危機感や推して知るべしである。

※驚いたことは、日本での亡命チベット人の代表的存在とされるペマ・ギャルボ氏が、なんと2005年11月に日本に帰化していたことであり、しかも彼は去年の参議院選挙に国民新党公認で比例区より立候補したという(但し、同党10位で落選)。
 このようなペマ・ギャルボ氏の行動自体、筆者には「亡命チベット人社会の危機感のあらわれ」としか考えられないのである。

参考
ダライ・ラマが中国に帰る日
ダライ・ラマ関連記事の訂正

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内 容 ニックネーム/日時
夕方テレビ各局は一斉に外国のメデイアによるチベットの若い僧侶らが抗議する映像を放映した。若い僧侶が泣きながらかなり流暢な中国語で彼らに出した外出禁止令を非難した。
自分は無神論で不勉強だから、どうも理解できないことがある。
どうしてあんなに若いのに僧侶になろうとするのか?
職業僧侶なのか?
将来また凡世に戻るのか?それともただ袈裟を隠れ蓑してる凡人なのか?
僧侶なのにそんなに寺院の外へ行きたがるのか?
この混乱期に寺院に籠って本業の読経写経をせず、外に行って何をしようとするのか?
画面に映ってた彼らの暴れる映像は確かであり、外出禁止ぐらい妥当ではないか?
仮に中国の武力鎮圧が先にあったとしても、仏教には目には目を、歯には歯をという教えがあるのか?
泣きながらと言ったが、誰も涙を流していないじゃないか?
菩薩の心を持つ僧侶が殺気ぷんぷんの目をしては不味くないのか?
世論やマスコミは誰ひとり指摘しないのはなぜだろうか?
この世に高僧なる方がいらっしゃればどうか凡人の私に教えてください。
春日明
2008/03/27 22:07
 確かに、7時のNHKニュースの映像を見ている限り、「泣いている」ようには見えませんでしたね。インターネットで配信された各種新聞社の記事から受けたイメージと、実際の映像に私も大きな落差を感じました。
 私の父は、暴動の映像を見て、僧侶の多さに驚いていましたが、王柯『多民族国家 中国』によると、「現在、チベット仏教には僧侶と尼僧が約一二万人、活仏が一七〇〇人おり、寺院が三〇〇〇ヶ所いじょうあ」り、「これらの数は、いずれもダライ・ラマ十四世がインドに亡命する前の一九五八年当時を上回っている。」と言います。なお、「中国では、チベット仏教を信仰する人口が約一一六〇万人いる。」そうです。
子欲居
2008/03/27 22:26

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