森田剛って舞台俳優として無双状態じゃないか( ﾟДﾟ) そう思わされた『鉈切丸』
いのうえひでのり演出、森田剛主演、シェイクスピアの『リチャード三世』を鎌倉時代に置き換えて、手段をえらばず天下を獲ろうとする源範頼の非情かつ切ない生き様を描いた『鉈切丸』
もちろん源範頼を演じたのは、生まれ持った天賦の才とストイックに芝居に取り組む姿勢により、天才俳優の名を欲しいままにする森田剛さん。
共演者も生瀬勝久さんが源頼朝を、須賀健太さんが源義経を、さらに渡辺いっけいさん、若村麻由美さん、成海璃子さん、木村了さんなどが出演し、シリアスなだけではないユーモラスな部分も織り交ぜられ、緊張感の中に笑いを含んだまさにエンターテインメントな演劇作品となっています。
心に闇を持ったキャラクターを、儚さを残しながらどす黒いまでの漆黒の闇でキャラクターを作り上げた森田剛のすごさ
顔にはあざを持ち背中には大きなコブ、片足の自由も聞かない森田剛演じる源範頼。劣等感を身にまとい愛にも興味のないこの男は、自らの頭の良さと口先のうまさをふんだんに使い、周りの人間を陥れながら一歩ずつ確実に上へ上へと這い上がっていく。
野心の塊のようなこの男をどうしてこんなに魅力的に演じられるのか・・・森田剛という役者としてのポテンシャルが、観ていて本当に恐ろしくなります。役者目線で観ていて1番すさまじいと思う部分は、森田剛さんが舞台上はおろか多分客席を含んだ劇場全体の空気を操っているかのように見えること。見えるというか実際に操っているとしか思えない。ご本人は意図している部分ではないのかもしれないけど、存在感・まとっているオーラや空気感がそうさせています。
生瀬勝久さんや渡辺いっけいさん、若村麻由美さんをはじめ芸達者の役者が多数出演しているこの作品。コミカルに演じるシーンでは大いに観ている者を笑わせてくれます。しかしその直後に森田剛さん演じる源範頼が登場すると、突然空気が一変するのです。息をのむ緊張感が一瞬で張り詰めます。そこに新感線の真骨頂であるド派手な演出が加わるわけですから、このコラボレーションは本当にたまりません。森田剛さんが最初に舞台上に登場し、センターでライトを浴びながら野心満々に仁王立ちするシーンで観客は一発で持ってかれます。またこのシーンもそうですが、DVDで映像を観ていると、森田剛さんの目の芝居にため息しか出ません。上手すぎるんです。どれだけ繊細に演じているんだろうと。この人は本当に全神経を集中して舞台上に立っているんだと思います。
森田剛本人がまとっている空気を最大限に活かしたキャスティング
この作品で演じている源範頼というキャラクターと森田剛さんは、ヴィジュアルや境遇などもちろん共通している部分は決して多くないのですが、森田剛さんがずっと身にまとっている疎外感、その場にどこか馴染めていない孤独感などがこの作品ではふんだんに役と融合しているように感じます。一歩間違うと失礼ないい方かもしれませんが、森田剛さんに対してそういった雰囲気を感じたことがある人絶対いらっしゃると思うんですよね。僕はどちらかと言うと森田剛さんのそういった個性に惹かれてこんなに好きになったと思っています。あの蜷川幸雄さんも森田剛さんのことを「テレビ観ててなんでドブネズミみたいな恰好してるのかなぁって思った。でもそこが良いんだよね」と仰っていました。すごくわかるんですよね、仰ってること。そこが良いし惹かれてしまうんです。
さらにすごいのは森田剛さんって10代のころからそうなんですよね。あんなにニコニコしない、笑う時も照れてしまうジャニーズアイドル唯一無二です。でも僕はそんなところにもものすごく惹かれてしまうのです(/ω＼)
作品を通して自分がどう思われるかなんて気にもしていない森田剛の潔さと役者としての野心
アイドルとしての人気やイメージを守ろうという概念さらにがこの人には全くない。そこがまたすごいんです。V6デビュー時代から、もしかしたらジャニーズジュニア時代から自分と言うものに正直に、芯を持って活動してきたからなのか、事務所も森田剛さんの役者としての活動に関して本人の意思をものすごく尊重しているように感じます。
『金閣寺』では自ら丸坊主にしたいと望み、吃音に悩む周りと溶け込めない屈折した青年を演じ、『鉈切丸』では源範頼、他にもあげればたくさんありますが、映画『ヒメアノ～ル』もいい例です。アイドルとしての人気を意識する人であればまず演じない役ばかりです。そんなことを問題にしない、しかもそういう役を演じることに魅力を感じるところも、森田剛さんの大きな魅力なんですよね。役者一本でやってる人より役者なんです、森田剛さんは。
『鉈切丸』是非観て頂きたい作品です(*^-^*)
