6SWITCHインタビュー 達人達(たち) アンコール「柄本佑×山本直樹」[字] 2018.04.14
家に帰る事よりも別な目的行動を提案する。
お気に入りの草履で足元を決め都内某所を行く若者。
柄本が一躍注目を集めたのは去年の「朝のテレビ小説」だ。
屈折した性格冷たい目つきから白蛇さんと呼ばれる若者を怪演した。
笑うて頂けませんか?ちょっとは大人になったかと思うたけど中身はあかんたれのままやなぁ。
更にこんな国民的俳優も。
「男はつらいよ」の寅さん渥美清だ。
私生まれも育ちも飾・柴又でございます。
これまでに60本もの映画に出演してきた。
その独特の存在感が評価され出演依頼が後を絶たない。
舞台にも積極的に参加。
自身で公演の企画を立てる事もある。
まさにマルチな活躍ぶりだ。
っしゃ〜!そんな柄本が今回会いたいと願ったのは…。
デビューして33年。
繊細な画風で描かれるキュートな女の子はこれまで多くの男子を魅了してきた。
青年マンガを描く一方成人向けの雑誌でも活躍。
大胆な性描写でエロスのカリスマとも呼ばれる。
しかし描かれるのはエロスだけではない。
暴力やいじめ新興宗教にはまる人々家庭崩壊。
エロスの中に人間の弱さや狂気社会的なテーマが浮かび上がる。
そんな山本が現在連載しているのが「レッド」。
題材としたのは1972年のあさま山荘事件。
事件を引き起こした若者たちの姿を丹念に描き高い評価を得ている。
どこかクールに人間を見つめる山本の作品に男女問わずファンが多い。
高校時代に山本作品を読んで以来ファンだという柄本。
表紙の…この子かわいくないですか?こういう女の子とあんまり出会わなかった僕としては…ドラマの作っていき方のやっぱりきっと…ちょっとありますね。
あとね単純に…柄本が向かったのは山本の自宅兼仕事場。
しかし何か…
(玄関のチャイム)あ〜どうも。
初めまして柄本です。
よろしくお願いします。
失礼します。
すごい…。
すげえまじまじと見てしまう。
わあ!でもすてきですね。
あっすごい落ち着きそう。
落ち着きそう。
あっやっぱ畳。
この辺きれいにして。
(笑い声)おうち訪問…本当に。
山本が「少々狭い」と言う仕事場。
柄本にカメラを渡し気になるものを撮影してもらう。
回ってる?ああはい!あ…。
仕事場の手前にあるのは山本の書庫。
いやすごいですねCDの…CDの数が。
国内外の文芸作品から科学の分野まで多岐にわたる本が並ぶ。
アングラ演劇で名をはせた唐十郎の全集。
なるほど!俳優とマンガ家表現のジャンルは違ってもきっと似た者同士。
そんな2人のトークはどこに向かうのか。
通常の終わり方…。
通常の話じゃない方が好きだなっていう。
袖にいるんですか?袖にいるんです。
袖にいて何となく頭の中に台本は浮かんでて。
その時は即興しちゃう?ああ「ウアッ!」。
「ウアッ!」みたいな。
うわ〜すげえ!お邪魔します。
僅か3畳ほどの仕事場。
山本はアシスタントを使わない。
20年ほど前から業界内でもいち早くコンピューターを使いたった一人でマンガを描いてきた。
アシスタントを雇うのがもうちょっときつくなっちゃって別に悪い人たちじゃないんですけど。
別に人間関係とかではなく。
修羅場になるとなればなるほど誰かいるだけでもうイライラッてなっちゃうんで。
あと…大事な事ですねそれは。
どんなにうまい背景でも…ちょっとあったんだよね。
あっそれは拳銃が?拳銃これ描くために。
本物じゃないですけど当然。
それ作業される時は手袋されるんですか?そうですね。
滑りをよくするためだけにこうやって台の上で。
あ〜なるほどなるほど。
でもデジタルにしてやっぱりすごいよかったって感じですか?もう…でもよかったっつうかこれでもう22年ぐらいやってるからほかの描き方無理だな。
ペン…紙にペンは俺無理だな。
ただの素人からすると何か紙にペンの方があれな気がするけどでも全然…。
そうなんですか!?そうそう…。
こう強弱が出ない設定にしてて。
一見少女マンガのようなポップさ。
山本の描く女の子はそのかわいらしさに定評がある。
細く硬い線は透明感を生み生々しさを感じさせない。
その繊細な画風が山本作品の大きな魅力だ。
一瞬…一瞬だけ。
おんなじ教室ないしは上級生ぐらいのかわいらしい子。
何か遠くないかわいい子で…。
そうですね。
あんまりマリリン・モンローみたいのは出てきませんからね。
何か…そこもすげえ興奮しました。
ちょっと…僕の興奮ポイント。
日常っぽい方が興奮しますよね。
いや興奮しますね。
例えばだから放課後教室に何か物取りに戻ったら男の人と女の人同級生の…が「おおっ」とか言って「何か今話してたんだ」みたいな事言うじゃないですか。
「こいつら…」みたいな。
俺が見てない所で行われてる事がこの中で…。
俺が邪魔しちゃったかみたいな。
そうなんですそうなんです。
何かそこら辺の事が描かれてる感じがして何かそういう何か…ずっと感じてたのは山本さんの作品の中に…こないだ撮影でひとつきぐらい函館に行ってまして。
あっ本当。
そうなんです。
そしたら函館出身…。
函館近辺の田舎出身で高校は函館ですね。
で何かそれで改めて読み返したら…ああ…でも染みついたものみたいのあるかもしんないですね。
やっぱどのマンガ読んでもすげえ…山本さんの中に感じる青春性って何かそのラストの切なさなりそういったのは結構短編のラストに…。
そうですよねうん。
少女マンガは学生の時からお好きだったんですか?そうです。
80年前後の少女マンガってすごく面白いマンガがいっぱいあったんですよ。
まあ今もあるんだろうけど少女マンガすごく面白いぞっていうマニアがねマンガ好きの人がみんな少女マンガ読んでた時代なんで。
今さっきあちらで聞いたタッチをなくすっていうのはどういう…?もともと学生時代にマンガマニアが高じてマンガ描きになったんだけどそのころ読んでたのが少女マンガとかそういうのばっかりで熱血少年マンガは全くその時点で読んでなかったんでだから細くて硬い線がいいなって。
そしてペンって難しい…難しいんですよ。
難しい道具なんですよ。
でも描き始めたのが19だからやっぱりね中学校の頃とかからやってる人だったらいいんだけど僕は最後まで…10年やってああやっぱり苦手だと思って。
あっじゃあ…1960年山本は北海道函館近郊で両親ともに教師という家庭に生まれた。
本やマンガの面白さに気付いたのは高校時代。
猛烈に読書を始めた。
少女マンガの名作「ポーの一族」を読んで「すげえ」と思ったのもこのころだ。
大学入学を機に上京。
19歳の時友人の勧めで自らもマンガを描き始めた。
マンガの専門学校にも通い1984年青年誌でデビュー。
それと同時に「森山塔」のペンネームで成人マンガを発表。
劇画調が主流の時代少女マンガ的な作風が注目を集めた。
エッチなマンガを描こうと思ったのはどういった事がきっかけになったんですか?だから…そういう普通の青年誌とかに持ち込みしてたんだけどその…同時にマニアでもあるからコミケ…今で言うコミケ。
昔はコミケットって言ってたんだけどそれに同人誌というものがあるらしいと世の中には。
で見に行ってみたらすごいのがあったんですね。
何だこれは?っていうんで…。
僕も持ち込みマンガでは描かないけどひそかに描いて机の中にいっぱい絵を描いてしまってたんだけどあっこれ俺もエロいの描こうかなと思って描いてみたらすごくスラスラ描けるしみんな褒めてくれるしそれでエッチな出版社持ってったら来月からじゃあ頼むねってお金くれるしこれは俺の適性に合ってるなと。
でもほら抵抗がある訳じゃないそれまでの。
自分で描いてて…。
ノリノリで描いてるから。
裸を描くのはやっぱりお好きだし楽しいんですね。
いくらでも集中できる。
描き始めたらノリノリだったんですもんね。
楽しくて楽しくて。
「ヘンタイじゃない!」だったのか「どうせヘンタイなんだし…」だったのかは忘れたけど…。
でも「俺はヘンタイじゃない」と「でもどうせヘンタイだし」って何か…結構おんなじぐらいですよね。
それで描いてるうちに何か…商品としてオチがなくてもエロが入ってれば…。
まあそのかつての日活ロマンポルノじゃないけれどお話なくてもエロが入ってれば商品になるから好き勝手描いてるうちに何か変なやっぱり…そのお化けっていうのは…。
そんなの描くつもりじゃないんだけど…そうそう。
こんな展開にするつもりじゃなかったけどああ何かどんどん進むわ進むわみたいな。
このままいっちゃえみたいなものを…。
そういう意味でも快感だったんですよね。
山本の言うお化けとは執筆中に時折降ってくるひらめき。
作品を突き動かす不思議な力の事らしい。
他ジャンルよりも自由に描けるというエロマンガの世界。
山本は自身のお化けに従いテーマもストーリーも存分に広げてきた。
例えば山本の代表作の一つ「ビリーバーズ」。
新興宗教に生きる3人の男女が孤島で共同生活を送るというシュールな設定。
閉じた環境の中で次第に狂気が高まりその世界が崩壊していく様を描いた。
舞台となるのはどこか現実離れした奇妙な世界。
強烈なエロスと共に人間の弱さや狂気社会的なテーマを描き出す。
それが山本作品の特徴となった。
中でも柄本が好きだというのが初期作品の「YOUNG&FINE」。
地方都市に暮らす男子高校生の青春の日々をコミカルに描いたいわゆる恋愛物だ。
しかしその結末はなぜか母親の自立。
母が1人旅立ち主人公が取り残されるという予想外のシ−ンで終わっている。
「YOUNG&FINE」のラストとかってこれ…すげえ好きなんですね。
「YOUNG&FINE」。
ああお母さんが唐突にいなくなるっていう…。
お母さんが飛び立ってって息子が停滞するっていう…。
分かりやすい言い方で言うと…通常の終わり方…。
通常の話じゃない方が好きだなっていう…。
すごい心の中で突っ込んでたんだよね。
だから…と言いつつやっぱり続きもん長く続いたもんをいきなりバッドエンドとかも難しい。
でも読み切りでやった時にいくらでも…そういう事は考えてましたねそのころから。
気持ちよさ…。
そういう事は考えてたね。
だって音楽だとねもうひどい歌あるじゃないですか。
女に振られて悲しいってただそれだけの歌とかさ。
マンガもただ女に振られてがっかりで終わるマンガあったっていいじゃんみたいのは割と昔から考えてひねくれた事やってたのかな。
そういうの何て言うんですかね。
作劇っていうのかな?作劇はだから割と直観…直観というのもどうか分かんないですけど物語はこうあるべき次描く物語のテーマはこうで…テーマってね口で言えたら何かそこで終わっちゃうから。
言えないから描くし。
言えないから描くし…。
言葉にできるんだったらって事ですよね。
そう文章で書けないから演じる訳じゃないですか。
例えば何か本…ああいうのを見てもあれですけど本はやっぱ小説とかあれは学生時代に読まれてるのが多かったりするんですか?多いですね。
高校の途中からきっかけは…それこそSF小説。
だから筒井康隆から派生して…ほらディックとかああいうやつですよ。
シュールだったり…そういうのばっかり読んでたから…直観なんだけどそれは…自分でTシャツ持ってきたんです。
この背中に…なかなか下描きなしでそれはね難しいですね。
かわいい女の子を描いてほしいという柄本の願いを山本が快諾。
目から描かれるんですか?そうですね。
鼻がかわいいんだよな。
うわ〜すげえ!ありがとうございます。
うわっかわいい!すげえ!すげえ!あんまりない?それですね。
どうなんだろうね。
ああそうですよね。
そりゃそうだ。
これまでとは一転実際に起きた事件を題材にして読者を驚かせた。
連合赤軍の若者たちが人質を取って10日間立てこもった。
「レッド」では若者たちが事件を引き起こすまでを描く。
社会の変革を目指し皆理想に燃え学生運動に参加していたはずだった。
しかし活動が激化する中仲間同士の激しいリンチによる殺人事件が起こっていた事が事件後明らかになる。
何が彼らを狂気に追いやったのか山本は事実を基にフィクションとして描きだした。
連合赤軍は前から描こうとしてたんですか?あの人たちが書いてる本を読むのが好きだったんですよ。
連合赤軍の人たちの書いた本とかすごい…これ絶対マンガにしたら面白いと思ってでも俺はやりたくないと。
誰か絶対描けば絶対面白いよっていろんな編集さんに言ってたんですけど俺はやんないけどねこんな面倒くさい作業って。
何かお酒が進んだ時に「じゃあ俺やろうかな」みたいになっちゃって。
これ描き始めるまでの取材というのはどのぐらいやられてるんですか?そんなに想像されるようなすごい取材はやってないんです。
だから当事者たち何人かに話を聞いてエッセーマンガみたいの描きませんかって話がちょうど舞い込んだのでちょうどよくそれで何人かに話聞いてあとは本とりあえず全部読んでという。
楽しいんですよね。
年表作りが楽しい…。
中学生の頃の勉強を今やると楽しいかもって思う感じで楽しかったですね。
人がいっぱい出てくるから訳分かんなくなっちゃうから…。
なるほど。
そういうあれだったんだ。
特定の登場人物たちに振られた1から15の番号。
実はこれ彼らが死んでいく順番を示している。
その人物がいつ死ぬかというカウントダウンも頻繁に示される。
例えば2番の彼女は処刑されるまであと50日。
読者は常に死を意識する仕組みになっている。
いいかなと思って。
番号つけるアイデアっていうのはね元ネタは大人計画の芝居で「カウントダウン」って芝居で死ぬ順番にそっちはカウントダウンだから54321っていう札をつけてやってるっていうのを見て「あっ頂きます」。
それはご本人にも言って?後で言いました。
後で言って?「これ松尾さんの芝居から頂きました」。
「どうぞどうぞ」?いや何かニヤニヤしてた…。
もう何か…何て言うんですかね。
だから僕も最初は楽しい…だからとにかくもう…実際にあった面白いエピソードを。
それでこんだけ細か〜い…こんだけ細かい赤軍の話ってあんまり…。
銀行強盗とかなるべく楽しそうに描こうと思って「あっ包丁忘れちゃった」とか。
あっそういうあれだったんですね。
すごいまずいもの食ってんだけどおいしそうに描こうと思って。
豚のアブラ身の雑炊とかね。
ああ何か描いてありましたね。
山で寒いからやっぱりカロリーをいっぱい摂取しないとなんないから安い豚のアブラ身をドンと入れて雑炊作って食ってるとこね。
そういう食べ物とか結構…。
あと山の中でドーナツを揚げたりするんですよね。
あと何か鹿撃って食ったりとか…。
ああ鹿じゃないですねカモシカですね。
天然記念物ですね。
あれは本当に撃ったって言ってました。
あれも実際の…。
実際あった話。
フィクションエピソードは全く入ってないって感じですか?あのね1割ぐらい。
あ〜でも本当に…。
滑ったっていうのは要するに筆が乗るみたいな事ですか?キャラクターが勝手に動き始める瞬間はそのままにしておく。
「レッド」で山本は若者たちの日常を丹念に描いた。
例えば厳しい状況の中で芽生える恋愛感情。
久しぶりのタバコを喜びつつも気持ち悪くなってしまうリアリティー。
深夜みんなで楽しげに酒盛りをする様子。
それはどこにでもいる普通の若者たちの姿。
山本がそこに込めた思いとは…。
だからその辺にいる普通の学生。
割と真面目なタイプの学生が…すごいなと思ってね。
集団がこう集まっておかしくなっていくというのも何かそれは結構…洗脳っていうんですかね?だから要するに僕は…言葉と人っていうふうに考えるんだけど…。
言葉ってやっぱり現実から遊離するとやっぱりオウムにもなるし戦前の日本軍にもなるし連合赤軍にもなるし…。
イデオロギーに関係なくね。
教室のいじめにもなるしって。
いろいろ「レッド」とか描きながら…。
描く時間って長いからそういう事をあれこれ考えるんですけど。
言葉の方がありがたくなっちゃう性質があるんだよ人間っていうのは。
集団になればなるほど…。
人間の歴史のほらおかしくなっちゃう場面がいっぱいある訳じゃないですか集団で。
もちろん時代の動きとか流れとかという事もあるんでしょうけどそれ以上に何かとにかくどんどんどんどん何か狂ってっちゃってっていうその感じは結構怖く読んでますね。
だから逃げる…。
嫌だから逃げるんじゃなくてね…。
柄本さんで言うとだから1か月間小屋かかってる途中でいなくなっちゃうみたいな事ですから。
大変でしょ?大変っていうかやっちゃ駄目。
だからこの人たちにとって逃げるっていう事はそういう事なんですよね。
それがもう自我を自分を…でも逃げちゃう人ってすごいなって思って。
でも言葉に引っ張られて総括と自己批判と「頑張れ」と単純な言葉なんだけどそれにもうがんじがらめにされて…。
逃げた人にも直接会って話聞いた事あるんですけど…。
だから仲間が周りで死んでいくのを見ても…境地なんだろうね。
連載が始まって10年。
物語は終盤にさしかかってきている。
「レッド」が終わったあと山本には描きたいものが決まっているという。
これから描くのは本当に…「レッド」が終わったあとですか?二百数十ページ分もうネームが出来てる。
お〜すげえ。
何かねみるみる出来ちゃうんだよ。
後半は舞台をスイッチ。
個性派として注目される柄本佑。
去年は8本のドラマに出演。
一生得意なお琴も持たしたられへんいうのに…。
芥川賞受賞作品が原作のドラマでは主演を務めた。
じいちゃんじいちゃん!死んじゃ駄目だよじいちゃん!
(せきこみ)じいちゃん!一方映画でも活躍。
2018年には3本の主演映画の公開が控えている。
そんな柄本が自身の原点だというのが東京・下北沢。
小さな劇場がいくつも立ち並び演劇の町として知られる場所だ。
下北沢は柄本が生まれ育った町。
今もよく通っているという。
今回山本をなじみの店へと連れていった。
この店柄本の俳優業において重要な場所だという。
セリフを覚えたりとかはしたりするんですけどまあまず来て台本をここに開いてそこにいつも演劇の雑誌があるんですよ。
それをまずいって持ってきてまずそれを読み始める。
暗記するんじゃないんですか?台本のページは開いてあるんですけどそこでこうやってダラダラそれを読んで携帯いじってそんでかばんの中ゴソゴソやって何かちょっとやれないかなとか思いながら。
たまにチラッと見たりして。
「さてやり始めるか」まですごく時間がかかるんですよ。
本当に素人意見だけど2時間も何時間もあるのを全部覚えなきゃなんないでしょ?そうですね。
地獄のよう。
いやこれ結構役者さんの方で多いですけど…もう次出なきゃいけないのと頭の中に何となく台本は浮かんでるんですよ。
袖にいるんですか?袖にいるんです。
袖にいて何となく頭の中に台本は浮かんでてうっすらとこんな事を言うんだなっていうのは分かるんですよ。
でも何を言うのかが分からないっていう。
でもここで出なきゃいけないのも分かるみたいな。
その時は即興しちゃう?いやいやもう出てって…。
ああ「ウアッ!」。
「ウアッ!」みたいな。
マンガ家で言うとあれですよね。
原稿が真っ白な夢を見る。
そうです。
そういう夢とかは別にないですか?週刊連載時代は。
机にうっぷしてそういう悪夢を見てハッて目覚めると目の前に白い紙がある。
それは現実の方なんですか?真っ白なのは。
そうです。
それが現実なんですね。
夢でも真っ白で起きたら真っ白っていう…。
実は柄本まさに舞台の稽古の真っ最中。
山本がこの日稽古の現場を訪れた。
9月から公演が始まる舞台は芥川龍之介の「羅生門」や「藪の中」などをベースにしている。
歌や踊りを交えた作品で柄本は主演を務める。
何をしてると聞いてる。
言え!イスラエル人の演出家との仕事は今回が初めて。
通訳を介して細かな指導を受ける。
こっちに来て顔出して…。
物語の冒頭羅生門の前にダンサーたちが演じる死体と老婆がやって来る。
老婆役を演じるのはベテラン女優銀粉蝶だ。
死人には何をしてもいいと?ああそうだよ。
悪くないよ。
悪くないよ!悪くないんだよ!じっとするんだ!ああ〜!山本はこの稽古をどんなふうに見たのだろうか?何か結構楽しんで頂けた感じだったんですか?いや全然楽しめました。
あっ本当ですか。
普通に舞台で見るのと同じくらい面白かった。
知ってる場面でもあるしね。
中学高校の教科書で読んだあのイントロでしょみたいな感じで。
うんうんうんうん。
まず銀粉蝶さんが何か出してそれに死体も佑さんもリアクションするみたいな…。
漫才で言ったらボケみたいな感じだから。
だからリハーサルだからねいっぱい…何かあの人の中に選択肢があってすごい高速度で選んでやってるんだなというのがすごく楽しそうでしたね。
それに反応する佑さんとかね。
俺にも動かせろって気持ちがすごく出てました。
本当ですか。
ああいうの見るとやっぱりちょっとやってみたくなりますね。
僕も動きたかったですね。
そうですね。
もうちょっと寸前になってくると2週間前ぐらいになってると22時とか。
13時〜22時ぐらいで。
8〜9時間10時間。
大変だ。
だからそれこそ具体的にここのセリフに行くまでこの位置に行くまで今まで5歩で行ってたところをじゃあ今日はそこ3歩で行ってみようとか。
そうすると何か…それでまた変わっちゃう。
何か結構そのぐらい具体的な…。
何て言うんですか…動きはあれだけどここに行くまでの距離何歩で歩いてみようとか今日出る時には何歩で止まってとかって…。
何かそういうふうに本当に…そうこうしてるとたま〜に…それこそ…それこそあの…。
お化けが出るみたいな。
身体を使うっていう事なんだろうなそれはな。
あ〜。
でもうその…。
狙いに行っちゃうと出てこないしね。
自分がやってて…全部を後手後手後手後手みたいな。
全部間違ってっちゃうみたいな。
何か先に行ってるんですよ。
どんどんどんどん。
あれ怖いんですよ。
「ああ違う。
あ昨日あんなに楽しかったのに」みたいな。
昨日を追いかけちゃうんだね。
やっぱりちょっと弱いですね何か。
そんな事考えなきゃいいんだけどどうもこうまだまだ考えてしまうっていうか…。
ただそうした時にはやっぱり…でも俺昔うちの母親と2人芝居をやった事があって。
あ〜すごい。
数値では表せないんですけど確実にあるその演劇体力っていうか…。
俺なんかすぐバテちゃうのに…何て言うんですかねその稽古…稽古の時に本番始まってしまえばもうすぐ終わってしまうので稽古の時に自分を試していく体力っていうのかな。
何か…何かそれ見た時にはああ演劇の体力ってあるんだなと思ったと同時にあっ母ちゃんって意外にすげえんだなと…。
かなり特殊な母ちゃん…。
特殊な母ちゃんは特殊な母ちゃんですね。
両親ともに俳優という家庭に育った柄本。
自然と俳優の道を選んだ。
14歳の時映画「美しい夏キリシマ」でデビュー。
分かりません。
何!?柄本が演じたのは主人公の少年康夫。
空襲で友人が死に自分だけが生き残った事を悔やんでいる。
あ〜!やめ…もう。
おいはね何かしら起こるち思うと。
おいが死んでおいがこの世からいない事になったら何かしら奇跡が起こるち思うと。
少年のやりきれなさその等身大の演技が注目を集めた。
殺せ!もともと映画監督志望だったんですよ。
だったっていうか…。
作りたい。
映画監督をしたいっていうあれで…。
まあ何かその…オーディションみたいな話がその時にうちの母ちゃんに「どうせ落ちてもともとだけど生の監督見れるよ」って言われてああ…。
監督志望として…。
監督志望としては監督は生で見たいな。
それで行ってそしたらたまたま監督のイメージと合ったのかやらせてもらう事になって。
主役ですよね?そうです。
2か月えびので…。
えびのという場所で九州の方の宮崎…宮崎かな?宮崎県。
丸まんま2か月まあ隔離されそこで2か月撮影をしてホームシックになり。
14歳だもんね。
14歳で…現場に行った時に先に終わって何か助監督の方がホテルまで送ってくれたりする訳ですよ。
旅館だったんですけどその時。
その時2人っきりでその…ほとんどまだ知らないその助監督の人が夜山道をこうやって車で送ってくれる訳ですよ。
2人っきりで。
俺絶対に殺されるって…。
このままどこかに連れてかれる。
そんな映画見た事ある。
俺本当怖かったの覚えてますあれ。
それは多分何にしてもそうなんでしょうけど僕の体験は映画でそれでそれがもうとにかく楽しくて日常生活に戻ったら一気にそれがつまんなくなっちゃって周りの同級生とかがすごい…自分だけ大人になったみたいな何か…。
でもそういう体験積んじゃったからね。
体験っていうか浴びちゃったからね。
そうなんですよね。
そう浴びてしまったのが…。
まあだからそこのところでそうやって思ってしまったのがよかったのか悪かったのか分かんないですけどでもそんな事もあって…そうやってやり始めるようになって…。
デビュー以来さまざまな映画やドラマに出演してきた。
2005年映画「真夜中の弥次さん喜多さん」では時代劇コメディーに初挑戦。
てぇへんでやんす。
どうしたの!「ヒゲのおいらん」のベスト盤が出ました〜!本当に!?周囲のはじけた演技に戸惑いもあったという。
もっと映画や演技について知りたいと頻繁に映画館に通い映像の専門学校でも学んだ。
日本外国限らず?とにかく…まず渋谷に行って時間の合うやつから片っ端から見ていくみたいな。
フォーメーション組んで。
フォーメーション組んで…。
あんまりその何て言うんですか…きっちり予定立てるのもあまり好きじゃないんでとにかく明日この一本だけは見ると。
その前後で見に行けそうなものは行くっていう。
土曜日だったら絶対に文芸坐のオールナイトにそのまま流れてみたいな。
何かそういう感じでしたね。
一応イリーガルな入り方はしない。
リーガルになってから…。
一応何となくそこは律儀に守って。
変なおっちゃんとかいなかった?いました。
手を握られてからなかなか行きづらくなってしまいまして…。
手を握られるまでは随分行ってたんですけどそっからは友達を連れていくようにして。
カップルになって。
カップルになって一緒に行くっていう。
幅広い役柄に取り組む中で去年は国民的俳優渥美清を演じた。
寅さん役でブレークする以前若き日の素顔を描いたドキュメンタリードラマだ。
キャッ。
やだ〜。
やめてよ。
パンツの色までおそろいか。
実在の人物を演じるのに苦労もあったという。
私生まれも育ちも飾・柴又でございます。
帝釈天で産湯をつかい姓は車名は寅次郎。
人呼んでフーテンの寅と発します。
渥美清はすごく好きです。
あっありがとうございます。
あれは…アハハやっぱりちょっと実在の…しかも渥美清であの渥美清か…って別にプレッシャー感じたからどうこうじゃないですけどあの…啖呵張りのところはもう本当に緊張しましたね。
あれもう…めちゃくちゃ緊張したし自分で見てはあ〜ってなりました。
あそう。
なります。
すごくよかった。
過去に「男はつらいよ」の番宣で渥美さんが「徹子の部屋」出ててその映像を見させてもらってめちゃめちゃかっこいいんですよ何かそれで…。
フリートークってあんまり記憶に残ってないですけどね。
そうですよね多分ご自身…多分渥美さん自体もそこまでそういったのはやってなかったように思いますね。
だからすごいそういうふうにしゃべってる渥美さんを見るのがすげえ初めてだったから。
だからそのそういうの…でもかっこいいっす。
とりあえず…とりあえずは形態模写から入っていこうみたいな感じ…。
そうですね形態模写っていうか口元どんな口…意外に口薄いんだなとか…。
とりあえずコピーからとりあえず入ってみるみたいな。
う〜ん。
絶対そのまんまにならないもんね。
絶対に無理ですし…。
だから何か…無理でもともと…。
渥美清じゃない訳だから。
渥美清じゃないんだしっていう。
とにかくセリフだけはガチガチに入れてそれでちょっと練習してみましたけど…いや〜自分の見るのってすごく恥ずかしくて全然慣れないんですよね。
デビュー以来柄本はまっすぐ俳優の道を歩んできた。
しかしそれだけに不安を感じた事もあったという。
役者さんっていう仕事はこういうのなんだなって実感したのは…。
しんみりしちゃったんですか?しんみりしちゃった訳じゃなくて学生じゃなくなった時です。
高校生やって僕専門学校にも行ったんですけど映像の。
その時って何かどっか学生だったんですけどその学生も卒業して俳優…。
職業俳優。
職業俳優ってなった時にあれ?はい僕…何か…何かそういう何か…そうか店開いてても買いに来る人いなきゃ…みたいな。
それはあれですか楽しくて泳いでたら遊泳禁止の向こう側まで行っちゃった…。
あれ?って。
(笑い声)そっかまだ泳ぐんだ俺はみたいな。
何かこう決まった時間にどこに行けとかもないしそんで何もやる事がなければフラフラ下北に来てコーヒー飲んでヘラヘラして…。
仕事ない日はね。
同級生とかに会うと同級生スーツなんか着ちゃって「出勤」とか言ってて「お〜そっか」って言って俺何かアロハに短パンに草履みたいな…。
「お〜行ってらっしゃい」とか言って。
あれ?そっかこういうのなんだなって何かちょっと一瞬思った時ありましたね。
だってあなたは…就職活動の事しか考えてなかったねだから。
俳優とか映画とか…全部就職に…そういう俳優という職につく事しか考えてない訳だから…やってたんですね。
映画館行って…。
全部結び付くっていうか…一生懸命就活やってたんですよ。
そうかそれを就活と呼べばいいのか。
あ〜何かすごくよか…。
何もやる事…。
僕もだからマンガ家になるって事しか…考えてなくて…。
で何か電車乗ってる時もエアデッサンをポケットの中でやったりとか。
ちゃんと大学とは別にマンガの学校ダブルスクールをやってました。
俺…結構就職の事しか考えてなかったなと…。
そうですねもう…。
マンガ家という職に…。
一直線ですね。
職につく事しか考えてなかったから就職できたもん。
そうかそういう事か。
すげえふに落ちた今…そうか。
いい理屈でしょ。
いいですいい理屈です。
知らず知らずのうちに俳優修業を積んでいた柄本佑。
エロスを通して人間を描くマンガ界の鬼才山本直樹。
この出会いを通し2人は1つの共通点を見つけた。
一つ思うのがその…まあ別にお父さんお母さんも役者でありお父さん演出家でありっていうのとは別…そういうのはなしとしてもさ…そういうものを…これ面白かったこれ面白くなかったとかいい役者を見るとか何かそれは…過去なんかの誰かよその人のとかがどうとかどうでもいい俺は俺の思いついた面白いって思ったものを作るんだ〜ってそういうさ…。
そんでどうだこれ新しいだろうつって。
新しいだろうってさ。
あるよそんなの。
知らないだけだよっていうのありますね。
だから全部浴びた末にそんなの出てくる訳だしねっていう…思った。
そうですね何かやっぱり…。
マンガの新人賞の審査員ちっちゃいとこでやってるんですけど毎回言ってるのは…それしか言ってないんですけどね。
いや本当それが究極だと。
系譜って事は結構何か…堅い言葉ではあるけれどあんまりクリエーティブな言葉には聞こえないけど大事なような気がするんですよね。
はいそうですね。
作る方には回らない?いややっぱり監督したいという夢はありますけどう〜んありますね。
映画はちゃんと映画とつきあった人が撮るべきだ…。
山本が自宅から持ってきたのは…。
主演ではないけどほぼ僕の中では主演っていうので…。
大のお気に入りだという柄本作品のDVD。
ありがとうございます。
やった〜。
「柄本佑」。
ハハハ。
2018/04/14(土) 22:00〜23:00
NHKEテレ1大阪
SWITCHインタビュー 達人達(たち) アンコール「柄本佑×山本直樹」[字]
際立つ存在感で映画や舞台などに活躍する俳優・柄本佑と、過激な描写の中に社会や人間を描き続けるマンガ家・山本直樹が、新たな表現を生み出すために必要なものを探る。
詳細情報
番組内容
14歳で映画デビュー以来、主演・助演を問わずさまざまな役柄に取り組んできた柄本。高校時代から愛読してきたのが『ビリーバーズ』などの作品で知られ「エロスのカリスマ」とも呼ばれる山本の作品だ。番組前半では柄本が山本の自宅を訪ね、デジタルで描く山本のマンガ術や、現在連載中の連合赤軍の若者たちをモデルにした作品について話を聞く。後半は柄本が自身の原点だという下北沢を山本が訪れ、柄本の俳優術に迫る。
出演者
【出演】俳優…柄本佑,マンガ家…山本直樹,【語り】吉田羊,六角精児
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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