そこで、当時のドイツ政府は、トルコ人の子ども手当の金額を減らすため、国に置いてきている子どもに対しては、現地の物価にシフトした額を支給することを決めた。すると、その途端、多くのトルコ人労働者は、国の子どもたちをドイツに連れてきてしまった。
ちなみに、現在、ドイツには、トルコ人と、すでにドイツに帰化した元トルコ人が、350万人も住んでいる。EU全体でトルコ系は700万人いるので、その半分がドイツで暮らしている計算だ。最近、そろそろ4世が生まれ始めているが、未だにうまくドイツに溶け込んでいない人たちも多く、これまでもしばしば「トルコ移民の統合」が問題になっていた。
ところが2015年、100万人近いシリア人やアフガニスタン人や、その他の難民を装った人々が入ってきて以来、トルコ人の問題など、どこかにすっ飛んでしまった。
ドイツの外国人問題は、以来、大混乱したまま、収束の気配もない。しかも、平等にしようと努力すればするほど、ドイツ人の中に不公平感が生まれ、あっちでもこっちでも揉めている。治安も悪くなってしまった。
日本も近年、外国人労働者が増えていて、対応しなければならない問題は多い。来る側にとっても、受け入れる側にとっても、なるべくウィンウィンの関係が築けるよう、日本も移民政策を慎重に考えていく必要に迫られている。
私が一番大切だと思うのは、対立に発展しそうなことは、新芽のうちに摘んでしまうことだ。そのために、ドイツの過去、そして現在進行中の事情は、大いに参考になるのではないか。