キチガイに刃物は要らない、「分裂病は言葉で人を殺す」。そんな文章をずっと昔に読んだような気がするし(『ユリイ○』だったかな)、読んだと思っていただけで自分の創作かもしれない。でも「統失は言葉で人を殺す」というのは、(全患者に当てはまるとは言えないけど)、これまで個人的に知っている患者さんをつらつら思いだしても事実であると言えるし、なぜ「言葉で人を殺す」のか?そもそも「どんなことをどんな風にしゃべったら言葉で他人が死んでしまうのか?」と突っ込まれると、それは映画『レボリューショナリー・ロード』を観ておいてね~と答える他ないのだが。
映画『レボリューショナリー・ロード』、あの『アメリカン・ビューティー』と同じ監督が製作したとてもおもしろい作品である。アメリカは今の日本の10倍は病んでいるよね。物語全体に漂う病んだ空気が、若い夫婦の離婚劇をどこか薄気味の悪いドラマにしている。でも、あの統失の脇役はいいですね。全く社会に適応できていない、社会的ひきこもりの若い男性なんですが、殺傷的に真実ばかり口にするので、その場の空気をいちいち凍りつかせてしまうのだ。主人公の二人よりも、脇訳の方が面白かったのだが、そういう不幸な病気であるという設定は映画の中でも説明されていたと思うので、数シーンしか登場しない。
ところでちょっと話は変わって、「ひきこもりの相談者の8割に精神疾患 厚労省まとめ」というニュースが19日に出ていた。地味な記事だが、かなり示唆に富む。
ひきこもりに関する厚生労働省研究班は、自治体の相談窓口を訪れた人の約8割が、統合失調症や広汎性発達障害などの精神疾患があると診断されたとの調査結果をまとめた。この結果を受けて厚労省は19日、「確定診断前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべき」とし、長期的な関与と精神疾患の有無の判断が必要としている。
調査は精神保健福祉センターなどを訪れた16~37歳の184人を対象に実施。専門職員が複数で診断し、このうち149人(80.9%)に精神疾患が確認された。診断結果は、人格障害や適応障害など51人(34.2%)、統合失調症や気分障害など薬物療法が必要な人49人(32.9%)、広汎性発達障害や知的障害など48人(32.2%)など。過去の調査から、研究班は全国のひきこもりを26万人と推計する。
ひきこもりが全国で26万人ってその程度のもの?!意外に少ない・・って国の調査だからか。週に1日でも労働している人とか、働いていないけど派遣会社に登録済で、職業欄に「派遣社員」って○しちゃった人などは、サンプルに最初っから含まれていないのだろうなあ。
でも「社会的ひきこもり」も症状がめちゃくちゃひどい状態の人は、「自治体の相談センターにメールで連絡して、予約入れて行ってみようか」とは思わないから、相談に出かけていくのは「自分をなんとかしたい」という切羽詰まっていて思考力が残っている、ひきこもり限定だろう。
映画じゃないけど、統失とか発達障害の人って、一般社会からひきこもらざるをえない理由がいくつもいくつもあって、デイケア・作業所といった隔離施設に通えているほうはかなり頑張っているほう。患者の家族会などに参加すると、親御さんが「ウチの息子は、デイケアに通うだけの体力も気力もなくて、何も食べないで1日中布団をかぶって寝ています。薬ばっかり飲んでいますが、この先、どうなるんでしょうか?」と不安をこぼす。それを「お薬に関しては、主治医の先生とよーーく相談なさってくださいね」と、家族会の場で、投薬に関して親同士が不安をぶちまげるのをスタッフが制止する光景も毎回同じである。
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