クローズアップ現代+「“海賊版”漫画サイト!脅威の手口▽無料読み放題の裏側で」[字] 2018.04.18
選手たちが、勝手の違いに戸惑いながらも、茶道の作法や精神性を学びました。
被害額は3200億円!?ある海賊版漫画サイトが前代未聞の事態を引き起こしています。
5万点を超す漫画が無料で読み放題という海賊版サイト「漫画村」です。
先月のアクセス数は延べ1億7000万。
これまでとケタ違いの著作権の被害を生んでいます。
自分の新作が発売直後に勝手に掲載される漫画家たちはショックを隠せません。
政府は悪質な海賊版サイトを閲覧できなくする緊急対策を発表。
しかし反対も多く議論が紛糾しています。
一体、漫画村の実態はどうなっているのか。
運営者が巧妙に身元を隠す中取材班は、インターネットに残された手がかりをもとにサイトの運営に関わっている可能性のある人物に迫りました。
さらにネット広告の仕組みを悪用して収益を上げる裏広告という手口をスクープ。
脅威の海賊版サイトの実態を徹底追跡します。
著作権を侵害された作品が多数掲載された漫画村。
先週以降、閲覧できなくなったり一瞬閲覧できたりと混乱が続いています。
このサイトの実態に迫るため取材班は、漫画村のサーバーの在りかを探ることから始めました。
まず調べたのはインターネット上の住所IPアドレスです。
漫画村のIPアドレスからサーバーの管理会社が分かりました。
クラウドフレアという会社です。
そのサーバーはアメリカ・アリゾナ州にあると表示されました。
早速、取材班はアリゾナ州フェニックスへ向かいました。
たどりついたのはある巨大なデータセンターです。
この中にクラウドフレア社のサーバーが置かれています。
漫画村のデータはここにあるのか。
尋ねると、個別の顧客情報は明かせないとして確かめることはできませんでした。
クラウドフレア社はサーバー管理の世界有数の企業です。
顧客に代わって大量の画像や動画のデータを配信するサービスを行っています。
しかし、悪意を持った人物が利用すると元のサーバーの位置が外部から隠れるため身元が探られにくくなります。
この仕組みが漫画村の運営者を探るうえでの壁となっていました。
しかし、取材に応じた会社の弁護士のことばにこの壁を突破するヒントがありました。
そこで取材班は削除要請を検討している出版社を訪ねました。
この出版社が扱っている漫画も漫画村に無断で掲載されています。
出版社はクラウドフレア社に漫画村に掲載されたコンテンツの削除要請を送りました。
翌日早くも返事が返ってきました。
クラウドフレア社によれば漫画村のサーバーはアメリカではなくさらに別の国にあるといいます。
取材班はウクライナの会社を直接訪ねることにしました。
その会社の住所は首都キエフの中心部に近いアパートになっています。
経営者を訪ねると…。
驚くべき答えが返ってきました。
父親と名乗る男性はこの場所は自宅で会社の存在について知らないと主張しました。
その後会社は買収されたことが判明。
取材班は買収した会社のオーナーに会うことができました。
旧ソ連時代の倉庫と見られるこの建物で250台のサーバーを管理しているといいます。
漫画村のサーバーに関する情報を伝えると…。
まさに、この倉庫の中に漫画村のデータがあることになります。
では、オーナーは漫画村の運営者の情報を知っているのか。
その後、さらに取材を進めますと、ウクライナのサーバーは、スウェーデンのプロバイダーを介して、漫画村の運営者側と契約を結んでいることが今回、初めて明らかになりました。
そのスウェーデンのプロバイダーは、防弾ホスティングと呼ばれるサービスを提供しているんです。
こちら、この防弾ホスティングというのは、契約者の情報を徹底的に秘匿することを売りにしていまして、削除要請や問い合わせには、一切応じません。
これ、使い方によっては犯罪の温床になるともいわれているんです。
著作権がご専門で、出版社や漫画家の顧問弁護士も務める福井さん、日本の漫画の海賊版サイトが、アメリカ、ウクライナ、スウェーデンと、世界を股にかけた仕組みで運営されている。
これちょっと驚いたんですけれども、どういうふうにご覧になりました?
やっぱり身元を隠すためだと思うんですね。
要因は2つあります。
1つは、海外の責任追及の難しいサーバーがある。
それから2つ目は、身元を隠して、それをコントロールできる技術が発達しているという、多発する、身元を隠した犯罪と同じ、まさに要因ですね。
仮に、大本のサーバーにたどりついたとしても、サーバーの所在については、いろんな情報あるんですけれども、仮にたどりついたとしても、問い合わせにも答えないし、また削除要請にも応じない。
国によっては、削除を求めるための法制度が未整備で、その責任追及には、費用も時間もかかって、その間にさんざん稼いで逃げられてしまうというような構図があります。
こういったサイトを運営する、そもそものねらいは、なんだと見てらっしゃいますか?
純然たる営利目的であるのか、あるいはその他の目的があるのか、ちょっと外見的には読めないですね。
そして漫画家の赤松健さん、ご自身の作品も被害に遭われているということですけれども、運営者に対しては、どんなことをおっしゃりたいですか?
われわれ漫画家が下書きからペン入れ、仕上げまで、すごい長い時間かけて、一生懸命やっているものをですね、全く無関係な海賊版業者が金もうけに使っちゃうというのは、非常に憤りは感じますね。
特に被害が大きいのは、若い新人さんとか。
われわれベテランは紙で買っていただいているんですけれども、若い作家はかなり直撃されていますね。
これ、相当売り上げにも影響が出ているんですか?
電子はもっと伸びるはずなんですけど、相当鈍化しています。
そういった現状があるわけですね。
その運営者、一体何者なんでしょうか。
さらに追跡しました。
取材班は、漫画村を問題視しその存在を独自に追っているホワイトハッカーを取材。
サイト運営者の追跡を続けました。
ホワイトハッカーはインターネットの中にサイトの運営者を示す痕跡が残されていないか徹底的に探しました。
見つけたのはおよそ1年前のサイトの登録情報。
当時の情報に、ある会社A社の名前が記されていました。
ホワイトハッカーがA社の事業について詳しく探っていくと…ある人物、B氏の名前が出てきました。
その名前が、漫画村に関連していると見られるメールアドレスの一部と一致したのです。
調べると、B氏は2年前まで都内で飲食店を経営していたことが判明。
訪ねてみるとその店はもうありませんでした。
しかし、ビルのオーナーはB氏のことをよく覚えていました。
そんな中春の嵐が吹き荒れた先週11日。
漫画村に大きな変化がありました。
サイトがつながらず画面にはメンテナンス中の表示。
漫画村は閉鎖したのではという臆測が飛び交いました。
そこで取材班は事実を確認すべく取材の過程で入手したB氏の携帯電話に連絡取材を試みました。
B氏が電話に出ました。
しかし…
そして、おととい月曜B氏に改めて電話しました。
まず、かつて漫画村のサイトの登録情報にあったA社について聞くと…
そこで確信となる質問をぶつけました。
そして…
私たち取材班は合計3度にわたって、およそ1時間の電話取材を行いました。
その中でB氏は、自分は漫画村の運営者ではないと否定しました。
ただ漫画村のサイト情報を登録したA社を立ち上げたと話していました。
このA社については、プログラムの開発などを行う会社だと説明し、漫画村となんらかの関わりがあることを示しました。
赤松さんは、こうしたやり取りをお聞きになって、漫画村に携わっている人物像、どうご覧になりました?
私、電子書籍会社を運営しているんですけれども、やっぱり一人では、このクラスのサイト運営は無理です。
まず資金を管理して、方針を決めるリーダーと、あと24時間サーバーを管理するエンジニア、あとちょっとしたデザインとかの、フォントとか決めるデザイナーの3人、できれば5人、うちは13人でやってます。
そういう感じなので、1人というふうにはならないと思います。
少年漫画、少女漫画と、ジャンル分けも正確なので、恐らく日本人。
日本の漫画に詳しい?
相当好きな人だと思いますね。
日本国内の個人、あるいはグループではないかというふうに見てらっしゃるんですね。
その漫画村サイトの最新状況なんですけれども、きのうの午後から、アクセスできないと表示されているんですけれども、ただ、サイト自体が閉鎖したかどうかは不明なんですよね。
先週、この漫画村が閲覧できない状態になって以降、今度は別の海賊版のサイトが、SNS上で話題になったりして、これ、いたちごっこ、続いているんですよ。
福井さん、ほかにもこういった海賊版サイトがあるんですか?
大体200ぐらいあるんじゃないかといわれているんです。
200?
昨年、史上最悪といわれたフリーブックスといわれる海賊版サイトが、これが最盛期に1000万単位の月間アクセスを集めたんですね。
昨年、突如閉鎖されたんですけれども、この漫画村は、あっという間に、そのアクセス数を超えてしまって、もはや1桁完全に上回る規模になっていることになります。
仮に閉鎖されたとしても、後継サイトが現れて、また数千万のアクセスを集めてしまう。
まさにいたちごっこといえるような状況ですね。
わたくしはこういったサイトがあるってことは実は知らなかったんですけれども、どうやって広まっていくんですか?
SNSなどを利用した口コミでの広まりがやっぱり多いですね。
広告が出たりしてるわけじゃないわけですもんね。
SNS上で口コミで広がっていると。
こうして次から次へと出てくる海賊版サイトですが、その背景にはアクセスを集めるだけで収入を生み出す広告の仕組みがあります。
今回、漫画村の資金源について、新たな仕組みを突き止めました。
漫画村のサイトに表示されていた広告です。
アダルト系や香水、洋服などさまざま。
こうした広告が収入源になっていたと見られます。
取材班が広告主に対して漫画村に広告を出していることについて尋ねると。
ある1社は、「漫画村というサイト自体知らなかった。
広告をどこへ出すかは代理店に任せている」と回答。
このほかにも取材に応じた広告主はすべて、漫画村に自社の広告が出ていることを知らなかったと話しました。
そこで、広告代理店に取材を試みると、ある広告主と漫画村の運営者の間には少なくとも3社の代理店が介在していることが判明。
このうちの1社が取材に応じました。
そうした中、驚きの情報が飛び込んできました。
裏広告の存在です。
サイトの解析を依頼していたネットセキュリティーの専門家によると、これまで知られていない広告の仕組みが隠されていたというのです。
漫画村のページをスクロールさせていくとこの部分で終わりになっています。
ところが、この下に隠しスペースがあるといいます。
専門家がページのプログラムを書き換え表示するようにすると…隠しスペースに全く別のサイトが現れました。
ネット上の記事や話題を紹介する「まとめサイト」です。
なんとそこには誰もが知る大手企業の広告が数多く掲載されていました。
つまり、漫画村にアクセスすると実際には見ていない別サイトの広告も閲覧したとカウントされる仕組み。
いわば裏広告です。
漫画村の運営者は、別サイトのアクセス数を増やす見返りにそのサイトの広告収入の一部も報酬として得ていた可能性があるといいます。
これはひどい。
なぜ大手企業の広告が出ていたのか。
背景には多くの場合、広告主が掲載先を選ぶのではなく、いくつもの広告代理店を経て、掲載先が決まるという、ネット広告の仕組みがあります。
専門家が裏広告を二重の詐欺だというのは、広告主の大手企業から見ると、悪質な海賊版サイトとは知らずに、広告が掲載されたということに加えて、広告は実際には見られていないにもかかわらず、広告料を支払わされたということを指しています。
取材の結果、漫画村とつながっていたまとめサイト、これは50以上確認できました。
50?
多くの大企業が、知らないうちに、結果的に、漫画村の運営を資金面で支えていた可能性があるということです。
福井さん、こういう構造になっていたんですね。
これを防ぐ手だてって何か考えられますか?
裏広告は本当にここまでやるかと思って、ちょっと驚きましたけれども、やっぱり収入源である広告を断つべく個別の広告出稿をしないでくれという要請はこれまでも行われてきたんですよ。
ただ、広告配信の仕組みは、ご覧になったとおり複雑だし、確信犯的な事業者も多いので、これまでは実効性というのは限定的だったんですね。
ただ、このところ非常にいわばネット界全体でも、こういう広告手法、抑えていくべきじゃないかという動きが高まってきている。
ただ、これから先、そういう動きが出てくると、今度は海外の広告代理店に流れちゃう可能性が出てくると思いますね。
まさにこれもいたちごっこになる可能性があるんですね。
可能性はあります。
この状況に対して、政府は先週、緊急対策を取りまとめまして、漫画村を含む3つの海賊版サイトを対象に、一般の人がサイトを閲覧できないようにするサイトブロッキングを容認する意向を示しました。
このサイトブロッキングというのは、国内では児童ポルノに対してのみ実施した例があります。
出版各社はこれを前向きに受け止めています。
集英社は大きな前進。
KADOKAWAは海賊版被害の食い止めに大きく寄与すると述べています。
一方で、さまざまな団体や専門家からは、反対の声が上がっています。
憲法学者の東京大学大学院の宍戸教授です。
利用者のアクセスの常時監視につながり、通信の秘密の侵害に当たる。
検閲につながるおそれがあるなどと指摘しているんです。
運営側を規制するのではなくて、それを閲覧するほうを遮断するというサイトブロッキングですが、賛否両論があるんですね。
この海賊版の遮断措置というのは、EUなど、42か国で導入されていて、効果も報告はされているんです。
また日本でも、児童ポルノを対象に、立法じゃなくて、これは緊急避難という形で行われてはいるんですね。
出版界の要望は切実なものがある。
ただ、検閲的であるとして、特に立法抜きの、緊急的な遮断には、反対意見も強いんですね。
サイトそのものが自主閉鎖も考えられる現在の状況で、こうした緊急的な導入に、理解が広がるかは、全く不明です。
やはりあくまでも、裁判所の判断に基づいて、関係者が納得できる法制度の議論を進めるべきだと思うんですね。
特に、新たな技術っていうのはどんどんと生まれているし、一つの対策で、絶対的なものにはなりえない。
だから、異なる立場の人々が加わって、対策やあるべき制度を議論するフォーラムのような場が必要だという気がします。
赤松さん、コンテンツがただで当たり前という風潮が広がる中で、どうやってこれ、対抗していきますか?
音楽とか動画の世界では、定額見放題、定額聴き放題みたいなのが、外資系企業によって確立されていると、同じように漫画も定額読み放題はあるでしょうね。
なおかつ、全出版社横断で、ここに行けば必ず読めると、なおかつ、海賊版サイトよりも使い手が使いやすい、これがあれば、海賊版にいく必要がなくなりますから、勝てるということになりますね。
福井さん、最後に、こういったサイトを利用してしまう人たちに対して、ひと言お願いします。
この漫画というのは、クリエーターたちにとっては生存の糧なんですね。
もしクリエーターという職業が成立しなくなれば、漫画は生まれないことになる。
海賊版の最大の被害者は読者自身なんですね。
ですから、先ほどの法的な対策、それから赤松さんおっしゃったような、ビジネス面の努力、そして何より社会の理解によって海賊版と社会全体が向き合っていくことが必要だと思います。
最後に赤松さんもひと言お願いします。
(鐘の音)イギリスロンドン。
2018/04/18(水) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「“海賊版”漫画サイト!脅威の手口▽無料読み放題の裏側で」[字]
漫画家を窮地に追い込む「漫画村」の闇▽スマホでサクサク読める巧妙な手口とは?▽被害額は3200億円!?▽政府が検閲!?サイトブロッキング大論争▽広告業界に大激震
詳細情報
番組内容
【ゲスト】弁護士…福井健策,漫画家、漫画家協会理事…赤松健,ネットワーク報道部記者…田辺幹夫,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】弁護士…福井健策,漫画家、漫画家協会理事…赤松健,ネットワーク報道部記者…田辺幹夫,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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