フリーゲージ絶望「長崎新幹線」膨らむコスト

新大阪乗り入れへ「地下新ホーム」案も登場

九州新幹線長崎ルートへの導入に向けて2014年に登場したフリーゲージトレイン(FGT)の第3次試験車。FGTの長崎ルート導入は事実上困難な情勢となってきた(記者撮影)

線路幅の異なる新幹線と在来線を直通できる「フリーゲージトレイン(FGT)」の導入を前提に整備が進められていたものの、トラブルによる車両の開発遅れにより迷走が続いてきた九州新幹線長崎ルート。FGT以外の方式を含めた整備手法についての議論が進む中、ついにFGTではなく「全線フル規格化」の流れが優勢となってきた。

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国土交通省は3月30日、FGTのほか、山形・秋田新幹線で使用されている「ミニ新幹線」と一般の新幹線規格である「全線フル規格」の3方式を比較し、フル規格での整備が最も投資効果が高いとの試算結果を与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会に報告。4月18日には、長崎ルートの運営を担うことになるJR九州の青柳俊彦社長が与党検討委に「早期に全線フル規格で開業することを望んでいる」と表明し、フル規格での整備検討を求めた。

新大阪乗り入れに新たな案も

試算では、フル規格が費用は高額なものの、投資効果や収支改善効果も最高となったのに対し、FGTは導入・運営コストが高く、収支は赤字との結果に。また、FGTは最高速度の面で山陽新幹線への乗り入れは難しいとの判断も示した。

3月30日に開かれた与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会(記者撮影)

与党検討委の山本幸三委員長は3月30日、国交省から報告を受けた会合の後で「収支改善効果が見込めないとすると、それでは意味がないじゃないかという感じが(出席した議員の)皆さん方から見受けられた」と述べ、多くの議員からFGTは難しいのではないかとの意見が相次いだことを明らかにした。

事実上困難となってきたFGT導入。だが、もしフル規格で整備する場合は今回の試算で約6000億円という莫大な追加費用がかかる。さらに国交省は、長崎ルートからの山陽新幹線乗り入れ実現に向けた策として、増発のネックとなる新大阪駅のホームを地下に増設するといった「新たな取り組み」の案も打ち出した。約500億円をかけて開発してきたFGT導入の見込みが薄れる一方で、新たな整備手法の検討、そして新大阪乗り入れの取り組みと、長崎ルート関連の構想や費用は当初より大きく膨らみつつある。

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  • NO NAMEee7467fa66ec
    技術的にも心配なフリーゲージトレインの見送りは大賛成です。そしてもし折り返す場所が新大阪に求めることが出来ないなら、博多止まりの山陽新幹線列車の延長で解決できないのかな。
    あるいは東京発着の一部列車を分割可能な編成で運行するのはどうだろう? 新幹線は精々福岡までで、九州島内と東京では、飛行機と競争にならないかな。九州出身の関東在住の年よりは、車窓の景色を楽しみながらの列車旅も嫌いでないですが、今の人は忙しいからやはり飛行機かな。
    up5
    down0
    2018/4/20 06:38
  • とらきち140abf88244f
    新大阪乗り入れについては、博多ないし新鳥栖から鹿児島からのさくらと、連結して運転すればいいだけのこと。
    なにも新たにホームを作る必要性はない。
    財源は人口減が進んでいるなか新幹線不用論もあるのに、それでも作りたいというのなら、地元にはそれ相応の負担をしなければ、他の地方の人々に納得しては貰えまい。
    佐賀県は費用対効果の面からいって、これ以上の負担には難色を示すだろうから、長崎県がどれだけ負担できるかにかかってくる。
    長崎ルートは行き止まりであり、その先へ延びることはない。
    北陸新幹線よりも着工が遅くなるだろう。
    その時日本がどうなっているかは、誰にもわからない。
    up2
    down0
    2018/4/20 06:51
  • NO NAMEebdca91b5c20
    そもそもの話が
    「フル規格は高額過ぎでNG、FGTが安上がり」
    だったはずです。それが
    「FGTでも高過ぎる」
    になったのですから、
    「フル規格もFGTもNG」
    ということです。

    ですから選択肢は
    ・追加投資ゼロで現状維持(永久にリレー方式)
    ・工事中のフル規格区間も全て放棄し、白紙に戻す
    このいずれかが筋ですね。
    up1
    down0
    2018/4/20 07:09
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