憲法改正は日米関係に一体どれだけ響くのか

「何のためなのか」を私たちで議論していこう

何のための憲法改正なのかわからないまま国民投票となるのは避けたい。写真左から、堀潤氏、三浦瑠麗氏、西田亮介氏、倉持麟太郎氏(撮影:梅谷秀司)
憲法改正ははたして必要か否か。「憲法改正に目を背ける人に伝えたい超基本」(4月18日配信)に続いて、東京大学政策ビジョン研究センターの三浦瑠麗氏、弁護士の倉持麟太郎氏、東京工業大学准教授の西田亮介氏という3人の論客を招いて徹底的に議論しました。

武力行使の新三要件

堀 潤(以下、堀):世論に耳を傾けると、「自衛権の範囲が不明瞭である」と不安に思っている人が非常に多いと感じます。つまり、同盟国であるアメリカは、シリアに巡航ミサイル「トマホーク」を撃ち込んでみたりだとか自衛権をかなり乱発してくると。それらに巻き込まれやしないかという心配ですね。

三浦瑠麗(以下、三浦):自衛権の範囲についての日本政府の立場はちゃんと確立しているんですよ。9条1項は国際法と同じく、侵略戦争を禁止しています。だから日本はもともと「武力行使の旧三要件」というものを備えていたのです。これが集団的自衛権行使の部分的容認を経て「武力行使の新三要件」となりました。

(※編集部註)
【憲法第9条のもとで許容される自衛の措置としての「武力の行使」の旧三要件】
・わが国に対する急迫不正の侵害があること
・この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

【憲法第9条の下で許容される「武力の行使」の新三要件】
・武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
・これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
・必要最小限の実力行使にとどまるべきこと

三浦:この中で、実質的に緩和したのは1つ目だけですね。そればかり着目されていましたが、実は2つ目と3つ目はすごく大事です。国際法上、自衛戦争が正当化されるのは「攻撃」(アグレッション)を受けた場合とされています。1つ目は、それに呼応しているわけです。実際、各国は自衛権発動を正当化するために、受けた「攻撃」についてさまざまに主張を行います。

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  • NO NAME9666a0afd90b
    徹底的に議論された上での『本当に国民の安全と権利保守が徹底された憲法改正』には賛成ですが、【アベ友優遇】と【自己保身】としか考えていない国民蔑視の安倍政権下での改憲には反対です。

    安倍自民の憲法草案を読むと、遠回しの表現ではあるが、明らかに戦前の軍国主義への回帰を志向するものとなっていて、【極右的な改憲】を主張する日本最大の極右団体【日本会議】の思想が強く影響している。

    【日本会議】には安倍晋三をはじめ、麻生太郎、菅義偉、稲田朋美、丸川珠代、高市早苗なども日本会議議員連合に所属している。

    日本会議は、海外でも危険視されていて、海外メディアでは「ナショナリスト組織(米ニューヨーク・タイムズ)」や「ナショナリスト・シンクタンク(英エコノミスト)」などと報じられています。
    up182
    down18
    2018/4/19 11:05
  • NO NAME94688d49c8dc
    2018/4/19 11:57のaaf85a362c4aさんのコメントに賛成ですが、記述ミスがあるようなので、私なりにアレンジしたコピーを貼ります。ご了承下さい。

    安倍自民の憲法草案は極右組織である■日本会議■の戦前回帰の改憲案そのもので、
    その中には、■緊急事態条項■というのがあって、この条項には様々な危険要素が含まれている。
    緊急事態条項というよりも、■内閣独裁権条項■と呼ぶほうが正しい。

    ■緊急事態条項■
    国会の事前同意が必要なくなる。
    法律と同じ効果を持つ政令の制定が可能になる。
    総理大臣が予算措置を行うことができる。
    「緊急事態」の期間に期限がない。
    内閣が衆議院の任期を延長することができる。
    地方自治がなくなる。
    司法も行政に従わざるを得ない状態になる。
    集会・結社・言論・報道の自由が制限される。
    戒厳令で国民の人権を強制的に停止することができる。
    徴兵制も可能になる。
    up161
    down16
    2018/4/19 12:12
  • NO NAME5132590c1694
    三浦瑠璃の
    【沖縄などがすっかり忘れ去られていたことは、いわゆる「天皇メッセージ」と併せて覚えておく必要があります。】
    という発言は天皇と同じように沖縄を擁護する要素が現憲法には含まれていないということなのか?そうであれば心配ご無用。沖縄はアジアのへそと呼ばれていてアメリカにとってもアジア戦略の最重要拠点。安倍が改憲しなくてもアメリカは沖縄を手放さないし、死守する。

    三浦瑠璃の
    【9条の2項を削除していけばいくほど、アメリカへの日本の発言権は高まります。なぜなら、自主性が高まるからです。】
    は違うと思う。2条を削除せずに3条を新たに追加というアメリカのポチ化を加速させるだけの中途半端な安倍改憲よりはずっといい。
    だが、日本の発言権は高まらない。東京は横田・横須賀・厚木という基地に囲まれている。これは事実上、日本が自分勝手に動けないようにする監視体制。反抗すれば1時間もかからず鎮圧される。
    up151
    down14
    2018/4/19 10:29
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