「女性問題」という仕事の能力とあんま関係ないトラップで轟沈する人について

 新潟県知事の米山隆一さんが女性スキャンダルで知事退任に追い込まれ、また、財務省の事務次官・福田淳一さんは女性記者へのセクハラ発言とされる音声を暴露されて大変なことになっています。


あの曲芸みたいなワークライフバランスと、この問題


 私個人の考えとしましては、男の出世と女性の問題というのは抜きがたい複雑な関係があるものだと感じていまして、結婚して子供ができてみると「この家庭をきちんと守りたい」という気持ちの延長線上に「仕事と家庭ってなかなか両立せんよな」と思ったりもします。ワークライフバランスっていうじゃないですか、あの曲芸みたいなやつ。幸せな暮らしを追求しようとすると仕事が疎かになり、仕事で立身出世を目指すとどうしても家庭が犠牲にならざるを得ない、両方を追い求めようとすると睡眠時間がおおいに削れて体調を悪くするし、趣味の時間を減らすと人間として味気なくつまらない存在となり、生きている価値が無くなってしまう。



辞任を発表する福田淳一・財務事務次官 ©時事通信社


 夫として、父親として、社会人として、男の子の大きくなっただけの存在として、いろんな立場をどっか削らないと駄目です。ましてや、知事になろう、事務次官まで上り詰めようとすれば、家庭ほっぽって徹夜残業上等の人生を歩まなければ達成できない「男の仕事」というとジェンダー的には批判されるのでしょうか。でも、男性も女性も働く人であればキャリアの形成を本当に頑張ろうとすると家庭に割く時間なんてきっと減るでしょうからね。学童や保育園に我が子を預けっぱなしで頑張って働く人々も、キャリアを捨てて子育てに奔走する専業ママも、各々の人生の選択である限りは尊重されなければなりません。



女性問題で轟沈。あのさあ。それって


 そういう高いポジションに来た人たちが起こす女性問題というのは、高いポジションに来られなかった人たちからすると絶好の娯楽になってしまうのでしょうか。女性にお金を払った、社会人たる女性にわいせつな言葉を投げかけた、いずれも「あんたがた、いい歳してその地位にいながら何してんの」って事例です。最初、米山さんが女性問題を起こしたというので「まあ未婚なんだからいいんじゃないの」と思ってたらいろいろ出てきて口があんぐりであります。米山さん、医師資格も弁護士資格も持っている優秀な人で、ウィットにも富んでいるし、お飾りでは終わらなさそうな知事に化けるかもしれないと思って期待して見ていたんですけどね。



 でも女性問題で轟沈。あのさあ。それって「年齢や地位に見合った遊び方を弁えましょう」とか学校で習ったじゃないですか。習ってないですかそうですか。でも本来の人間の能力とはほとんど関係の無いところで起こしている問題ですから、それはそれ、これはこれ、という風にはならないものなんですかね。もちろんセクハラは悪いよ、テープに取られたのはしょぼいし、しょうもないと思ってる。でも、女性からの匿名の告発で財務省の事務次官のクビが飛ばせるという話になったら、いくらでもハメられる方法は思いつくわけですし、鳥越俊太郎さんなんて都知事になり放題じゃないですか。


スキャンダルと去就問題との「間合い」


 もちろん、女性への淫行や暴言は許されないものとしつつも、その人の立場や能力も考慮したうえでの、スキャンダルと去就問題との「間合い」みたいなものは、そろそろ真面目に考えるべきだと思うんですよ。品行方正な能無しが支配する社会って停滞するんじゃないかと思う一方、家庭も満足に築けない、妻や子供も幸せにできない人に国家万民のために働く力なんかないんじゃないかとも感じる。たぶん、そういう「揺れる思い」を感じながらスキャンダルに直面し、あーだこーだ家庭や職場やネットで議論しながら社会が話題として猛スピードで消化していく。聖人君子など世の中にはいない、人間どこか必ず欠陥があり、問題を抱えながらも生きているという、当たり前の現実さえも忘れて、政治家や経営者や役人など漠然とした公職にある人たちを叩くことを娯楽にしてしまう面はどうしてもあると思うのです。



俗にいう「人間としての魅力」と、いまの民主主義


 もちろんスキャンダルとは無縁な人がトップに来てくれれば、それは安定するでしょう。でもまあ、俗にいう「人間としての魅力」って、ある種のヤバい部分も持ち合わせる清濁併せ呑む系の人たち特有の匂いもあるし、暴言吐いてみたり、剛腕であったり、何か人を強烈に惹きつける何かを持ちつつ、凄く敵が多いとか、スケールの大きさや懐の広さなんてのをもっていたりもする。でも、そういう人がネット全盛のいまの民主主義では、ちょっとした問題を見つけては叩かれ、沈んでいくのでありまして。



 政治家も経営者も官僚も、いわゆる大物がいなくなった、という批判もまた、出るわけですよ。何十億と利権を堂々と漁って金権政治を切り盛りした政治家もいなければ、日の丸を背負って世界を相手に戦う名物経営者も数えるほどしかいなくなって久しい。国力の低下だ日本社会の劣化だと騒ぐ割には、小さい問題で誰かを叩くことを繰り返して、どんどん均質化していってるんじゃないか? とすら思うんですよ。相互監視して、問題が起きないように首をすぼめて生きてきた結果、無難な小粒が揃った社会になってしまったのでありましょうか。


 こういう閉塞感が強く希望が乏しい状況が続くと、とんでもない独裁者でも出てきたりするのかと思うわけですが、せいぜい安倍ちゃんがトランプさんとゴルフしてるのを馬鹿にするぐらいがいまはちょうどいいのか、と思う次第です。



(山本 一郎)

文春オンライン

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