2018年(平成30年) 4月19日

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「ほとんど価値ない」 辺野古アセスを疑問視 米国防総省の専門家チーム

9秒でまるわかり!

  • 米国防総省の専門家チームが日本のジュゴン調査の不適切さを指摘
  • 調査者の経験・能力や、生息密度など科学的調査がない点を疑問視
  • 原告団は、同省がジュゴンへの影響を否定した根拠などを追及する

 名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が2009年にまとめた環境影響評価(アセスメント)準備書のジュゴンに関する内容を巡り、米国防総省の専門家チームが10年の報告書で調査の不適切さを指摘し、「ほとんど価値を持たない」との見解を示していたことが分かった。係争中の「沖縄ジュゴン訴訟」で同省が米連邦地裁に行政記録として提出していた。専門家の一人が米海兵隊司令部に「(アセスは)非常に不十分で科学的検証に耐えられない」と指摘したメールも開示されており、県や環境団体が長年訴えてきたアセスの不備が裏付けられた格好だ

名護市嘉陽沖で確認されたジュゴン=2012年2月

名護市嘉陽沖で確認されたジュゴン=2012年2月

名護市嘉陽沖で確認されたジュゴン=2012年2月

 一方、同省は14年の「推奨報告書」で、専門家チームの報告書やアセスを踏まえ「ジュゴンへの悪影響はない」と結論付けたが、その判断の妥当性にも疑義が生じかねない。訴訟原告団は、近く本格審理に入る「差し戻し審」で、同省にジュゴンへの影響を否定した根拠や経緯を追及する見通し。

 278ページある報告書は「沖縄のジュゴンの人類学的調査」。同省の委託した考古学や文化人類学者、海洋哺乳類の専門家5人が、日米の文献資料410点の分析や、沖縄での聞き取りを基に作成した。

 報告書は、アセス準備書の問題点として(1)調査者(観察者)の経験や能力に疑問がある(2)生息密度など量的数値を把握する調査がない(3)季節の違いが考慮されていない(4)文献の引用が適切に示されていない-などを挙げた。

 新基地建設がジュゴンに影響を及ぼす可能性を示唆した上で「生物学的保全の条件が整えば、ジュゴンに全般的な悪影響を与えず建設できる」とも言及。だが、その前提となる防衛局のアセスで「ジュゴンの個体群の現状、生殖能力、辺野古海域を使う頭数の情報を知る最先端の科学的調査が欠けている」とし、「ジュゴンへの悪影響を正確に決定するのは不可能」と指摘した。

 防衛局が準備書で示した保全策は「私たちが持つ知識の文脈で議論されておらず、最小限にしか有益でない」とし「より厳しいレベルの科学的厳密さを伴う再評価が必要だ」と提言。防衛局アセスが価値をほとんど持たないとし、海兵隊に自発的な再調査を促した。

 【沖縄ジュゴン訴訟】新基地建設が米国家歴史保存法(NHPA)に違反するとして2003年に、日米の環境保護団体などが米国防総省を米連邦地裁に提訴。同法を順守するまで、建設工事の停止を求めた。05年の中間判決でジュゴン保護に同法が適用されると認められた。

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