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アクサ生命保険がIT部門の改革を加速させている。2018年1月に組織体制やメンバーの役割、開発プロセスなどを一新。目的は意思決定や情報システムの構築スピードを速め、新サービス・商品の開発期間を短縮することだ。一連の改革によって2018年4月には新商品の開発期間を33~40%短縮するなど、早くも効果が表れている。
「従来のスピードでは遅い」。アクサ生命のIT部門を統括する玉置肇執行役員ITデリバリー本部長は、抜本改革に踏み切った理由をこう話す。システム開発のスピードを速め、魅力的な企画を素早く商品化することが競争力に直結するからだ。玉置氏はファーストリテイリング元CIO(最高情報責任者)。2017年1月からアクサ生命のIT部門をけん引している。
玉置執行役員が危惧するのは他業界のディスラプター(破壊者)。ネット企業が買収などを通じて保険業を手掛けるケースも多く、今後の競争も激化する一方だ。「ビジネス部門とIT部門が密に連携し、開発生産性とシステムの品質を高める必要がある」と玉置執行役員は打ち明ける。
基幹系にアジャイルを適用
そこでアクサ生命が選んだのがアジャイル開発だ。スマホアプリや小規模システムだけではなく、保険業務の基幹系システムまで適用した。これほど大規模に採用した金融機関は国内では珍しい。
アジャイル開発はユーザーにとって価値の高いソフトを素早く継続的に提供する開発手法。アジャイル開発を導入した金融機関はいくつもあるが、そのほとんどは営業支援システムや顧客対応のWebサイトなどの開発に適用したものだ。
アジャイル開発を成功させた最大の要因は、大掛かりな組織変更があったからである。組織変更は従来のIT関連部門を解体してビジネス部門の組織と対応付ける形で再編した。具体的には、同社にはこれまで、システム企画を手掛ける「インフォメーションテクノロジー」、プロジェクトマネジメントや業務分析を手掛ける「ストラテジックプログラムオフィス」、システム開発を手掛ける「アクサテクノロジーサービス(AXAテック)」、予算管理や発注業務を手掛ける「COOオフィス」、セキュリティ関連業務を手掛ける「インフォメーションセキュリティ」という5つの組織があった。組織変更後はこれを再編し、各ビジネス部門と紐付ける組織として名称も一新したのである。