ZTEが北朝鮮とイランに通信機器を不法に輸出し、米国政府に虚偽申告を繰り返したことから、米商務省はZTEへの米国企業の部品の販売を7年間禁止にしました。
モバイル向けチップセットの主流であるQualcomm Snapdragonや、立体音響のDolby Atmosを始めとして、米国製部品を多く採用するZTEのスマートフォンは致命的な打撃を受けることが予想されます。ロイター通信曰く、ZTEのスマートフォンの部品は3割程度が米国製で作られているとのこと。Dolby Atmosなどの採用中止や、MediaTek HelioやSamsung Exynosへの切り替えが迫られる可能性が高そうです。
これに加えて、米国政府は米国企業によるZTEへのソフトウェア販売も7年間禁止します。ロイター通信によれば、ZTEはGoogleのAndroid OSを使用できなくなる可能性があるとのこと。
しかしAndroid OSは無料のオープンソースであり、Android自体は販売禁止には抵触しないので、おそらくやや語弊のある伝え方です。
Android OSには、米国企業であるGoogleの開発するアプリパッケージが多く含まれます。GmailやGoogleマップ、Google Drive、Google Wallet、Google+、Google Fit、Google Cast、Googleアカウント、Playストア、Google Play開発者サービスなど。特にPlayストアはAndroidにおいてはほぼ必須です。電話帳同期など各種クラウドサービスはGoogleアカウントが必要です。最近の様々なアプリがGoogle Play開発者サービスを介してGoogleのサービスとの連携を必要としており、ゲームアプリなどもその例です。
こうしたAndroidのエコシステムの基幹部分を占めるGoogleのアプリ・サービスは、使用にはGoogleのライセンス認証が必要となります。おそらくロイターなどが報じているのは、正確にはこの部分を指すのでしょう。
ZTEがAndroid OS自体の採用を続けられたとしても、確かにGoogleのアプリ群を使用できなくなるのであれば、そんな機種は商品としての価値は著しく低くならざるを得ません。
もし米国商務部の決定にGoogleが従い、ZTE端末へのGoogle謹製アプリの提供が停止された場合、日本を始めとする世界市場におけるZTEのスマートフォン事業の存続が危ぶまれます。
なお、中国国内においては、そもそもGoogleのサービス自体が締め出されており、Googleに依存せずにAndroidを利用できるよう、独自のアプリ・独自のサービス・Google Play以外のアプリストアが数多く揃っています。
ZTEが中国国外市場でのモバイル事業存続を目指す場合、SoCなどの中核部品だけでなく、Android OSの使用を断念し、代替を探す必要まで出てきます。海外メディアBloombergも、ZTE幹部がOSの選択肢を再検討していると報じました。
現在、モバイルOSのシェアの大半をAndroidとiOSが占めています。Windows 10 Mobileは死に絶え、FireFox OSもスマートフォン向けは終了しています。そうなるとフィンランドのITベンチャーJollaが開発しているSailfish OSか、もはやSamsungの家電製品の中でひっそり生きているだけのTizen OSぐらいしか選択肢は無さそうに見えます。
こうなってくると、日本国内市場に投入されているAxon、BladeといったSIMフリースマホのシリーズや、NTT docomo向けに開発中の3画面スマホも危うい状況となってきます。今後の続報を注視したいところです。